要約

  • AOLは1998年6月、ICQを含むMirabilisの資産を現金2億8700万ドルで取得した。Mirabilisに売上はなかった。買収時の試用登録者は1200万人で、活動していたのは約半数だった。
  • 同月末、AOLはソフトのダウンロード1390万回と活動ユーザー680万人を報告した。常にデスクトップにいる総合ポータルを構想したが、収益につながる開発はまだ終わっていなかった。

チャットは動いた。商売はこれからだった

AOLの1998年度年次報告書は、買収を二つの数字で鮮明にする。支払った現金は2億8700万ドル。Mirabilisがそれまでに生んだ売上はゼロ。ICQには確かに利用者がいた。友人を探し、短い言葉を交わす行為はすでに日常になっていた。買い手が手に入れたのは、その行為が続く場所だった。

登録者をそのまま顧客数にしてはいけない。買収時にMirabilisが報告した試用登録者1200万人のうち、活動していたのは約半数。6月末時点のAOLの数字は、ダウンロード1390万回と活動ユーザー680万人だった。同じ人が何度もダウンロードできるし、登録だけして使わない人もいる。三つの数字はサービスの勢いを示すが、売上のある契約者数ではない。

AOLの狙いは、チャットを入り口にすることだった。年次報告書はICQを、デスクトップに常駐する総合的なウェブポータルへ育てたいと記す。会話の窓なら、友人が来るたびにユーザーが戻ってくる。その位置に新しいサービスを置ける。しかし、常駐する画面と、そこから収益を得る仕組みは別物だ。報告書が示したのは構想であり、買収時点の完成品ではなかった。

買収価格の内訳が未完成の部分を示した

AOLは価格を既存技術、試用者の基盤、ICQの名前とブランド、戦略的価値、進行中の研究開発に割り振った。開発中の部分には約6100万ドルを費用計上した。技術的な実現可能性がまだ確立されていなかったためだ。チャットの利用実績と、商業サービスへ広げる技術的な仕事を、同社自身が分けていた。

今後2年間に主に人件費として1500万ドル超を追加投入する見込みも記した。残る仕事は安全性、構成の安定性、電子商取引の機能。これらの開発を終えて初めて、その進行中の計画が収益を生むという説明だった。業績次第で最大1億2000万ドルを追加で支払う条項もあったが、それは条件付きの上限で、6月に払った現金ではない。

買収書類の主役は、華やかな未来予想図だけではない。すでに人がいるチャット窓と、まだ売上のない会社が同じページに載っている。AOLは人が戻ってくる理由を買った。その理由を事業にする作業は、買収後に始まる。

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