要約
- 欧州議会の報告案は、前年のピーク時間帯にEU向け下り通信の2%以上を発生または配信した企業を「重要トラフィック提供者」と定義し、相互接続交渉の義務を広げる。
- Innocenzo Gennaは、ネットワーク費用の配分規則を定めないまま、義務的な相互接続を求める申立てが増える可能性を指摘する。
分析
2%の線が、ネットワーク交渉の相手を決める。欧州議会のDigital Networks Act報告案は、EU向け下り通信の基準を超える企業に相互接続交渉の義務を課す案だ。合意できなければ、どちらの当事者も規制当局に拘束力のある決定を求められる。争点は流量の集計方法だけではない。交渉の主導権と、決裂後の決着場所も変わる。
10月28日、RIPE 93で電気通信規制を専門とする弁護士Innocenzo Gennaは、「fair share」をめぐる過去の見出しではなく条文を読むよう参加者に促した。欧州委員会の提案は、商業交渉と任意の協力をおおむね維持する。そこから踏み出す案が、欧州議会の報告担当者Michał Koboskoが提出した草案にある。
欧州議会の報告案PE791.994は、「重要トラフィック提供者」を定義する。企業単独、または同じ企業グループとの合計で、前暦年のピーク時間帯に、EUのエンドユーザーへ届けられた下りトラフィック全体の2%以上を発生または配信した企業が対象だ。設立地や、現在電気通信ネットワーク・サービス事業者に分類されているかどうかは問わない。第三者のCDNやトランジットを通るトラフィックも、発生元の企業に帰属させ、一度だけ数える。
この定義は大手の名札を作るだけではない。基準を超えた事業者にも相互接続を交渉する義務を広げる。合意できなければ、当事者は国家規制当局に申し立て、拘束力のある決定を求められる。通常の案件で草案が示す処理期限は最長4カ月だ。
報告担当者は、大きなトラフィックシェアがサービス間の相互運用性や、受信側ネットワークの交渉条件に影響すると説明する。グループ単位で集計し、中継されたトラフィックを元の企業に帰属させるのは、流量を子会社や仲介事業者に分散して基準を回避するのを防ぐためだ。欧州議会の手続記録によると、PE791.994は10月20日に委員会報告案として登録された。11月1日時点で審査は委員会決定待ちであり、成立した法律ではない。
Gennaが問題にするのは、新しい申立て経路が生む誘因だ。相互接続の多くは現在、商業契約で処理される。交渉義務と規制当局による裁定が加われば、ネットワーク事業者は請求を持ち込む場所をもう一つ得る。Gennaは、費用再配分の方式が書かれていなくても、ネットワーク投資の回収を求めて義務的な接続を申請する企業が出るとみる。草案は争いの入口を開く一方、廊下の先で誰が支払うかまでは決めていない。
草案は対象事業者へのネットワーク料金や支払いを規定していない。新たな法的区分、交渉義務、規制当局の拘束力ある決定に至る手続を提案している。今後の争点は、2%の算定、トラフィックの帰属、接続要求の内容、規制当局が命じる救済措置になりうる。Gennaが予想するのは、比較的静かだった市場に法的な争いが増えることだ。
欧州委員会の提案が交渉の基礎にあり、Kobosko報告案は議会に示された一つの立場にすぎない。2%基準が残るか、測定方法と救済権限がどう書かれるかで、紙の上の数字が規制当局の案件に変わるかが決まる。
出典
RIPE 93の講演ページと概要;RIPE 93 Cooperationの文字起こし;欧州議会報告案PE791.994;手続2026/0013(COD);欧州委員会提案COM(2026) 16。
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