要約
- BSCPLCの年次報告書には、陸揚げ局の沿革と、設計容量・設備が稼働可能な容量・到達可能な容量の区別がある。公開資料が何も示していないという旧稿の前提は誤りだった。
- 同社が持つ西向きの余剰容量は、シンガポールへ向かう国内需要と同じものではない。異なる時点の発表や新ケーブルの計画を足し合わせても、いま購入できる回線は分からない。
国全体で帯域が余っていても、自社が必要な回線を買えるとは限らない。シンガポールにつなぎたい企業にとって、フランス方面の区間に余力があるという説明だけでは、注文を決められない。知りたいのは、目的地までつながる回線を、いつ、どの条件で使えるかだ。
バングラデシュの海底ケーブル事業者BSCPLCの資料には、この問いを考える手がかりがある。需要の中心は東のシンガポール。一方、西側には十分に使われていない容量があった。「余っている」という一言の中に、方向の違う話が入っている。
公表値を比べる際には、もう一つ落とし穴がある。7,200 Gbpsのうち4,200 Gbpsを使用し、3,000 Gbpsが残ると伝えた記事と、供給中4,000 Gbps、残り3,200 Gbpsとした記事。以前の本稿は丸め方の違いとして扱ったが、発行日は約11か月も離れていた。
The Daily Starの記事は2025年10月18日、Dhaka Tribuneの記事は2026年9月4日である。まず必要なのは計算のやり直しではなく、数字に日付を戻すことだった。
それでも、この二点だけから利用率が下がったとは言えない。何を「使用」「供給」「利用可能」と数えたかがそろっていないからだ。まず同社の年次報告書で、帯域がどちらへ向かうのかを確かめたい。
需要は東へ、余力の一部は西へ
BSCPLCの2024–2025年度年次報告書によれば、SEA-ME-WE-5を通る同社の国内向け事業のトラフィックは、95%超がシンガポール方面に向かっていた。一方、同社はスリランカからフランス、イタリアへ向かう西側区間にも容量を保有し、十分に使われていない部分の一部を、過去に海外の通信事業者へ貸し出していたという。報告書の印刷ページ9–10にある経営者の説明だ。
ある区間に余力があっても、別の目的地を必要とする顧客が、そのまま使えるとは限らない。ケーブルの共同事業で保有する容量を、特定の顧客に届く回線にするには、経路も設備も引き渡し条件も合わなければならない。
報告書の数値は当時の会社側の説明であり、現在のトラフィックを独立に測った結果ではない。それでも、「余っているのだから足りる」という結論を急がない理由は十分に示している。
2,570と2,200は、何が違うのか
同じ報告書は、同社のSEA-ME-WE-5の設計容量を2,570 Gbps、設備を稼働させて利用できる状態にした容量を2,200 Gbpsと記している。後者の内訳はシンガポール方面が2,100 Gbps、フランス方面が100 Gbpsだ。これは実際に流れていた通信量を示す数字ではない。
SEA-ME-WE-4については、増強後の最終的に到達可能な容量を約4,650 Gbpsとしている。報告書の合計約7,220 Gbpsは、これにSEA-ME-WE-5の設計容量を加えたものだ。設備が稼働可能な容量を代わりに足せば、合計は小さくなる。どちらも、そのまま顧客の利用実績にはならない。
二紙の報道の間には、2026年5月12日付の政府部局の声明もある。翌13日に掲載され、総量約7,200 Gbpsに対し約4,100 Gbpsを供給、さらに約3,100 Gbpsの供給余力があるとする。別途、SEA-ME-WE-5については、設備が稼働可能な2,200 Gbpsのうち1,488 Gbpsが使用中としていた。
発表ごとの項目や内訳は完全には対応していない。時点も定義もそろわない数字を並べて、一本の利用率の推移にすることはできない。違いをすべて丸めのせいにするのも、違いだけを根拠に不正を疑うのも早計だ。
二つの陸揚げ局は、一国の全回線ではない
BSCPLCの海底ケーブル事業には、コックスバザールとクアカタの陸揚げ局がある。年次報告書は、その沿革も記す。2008年のSEA-ME-WE-4への参加地位の承継、2014年のSEA-ME-WE-5への参加、そして2017年9月10日の二つ目の海底接続の商用開始式典である。施設の存在を間接的な紹介だけで判断する必要はない。
こうした設備と国際ケーブルへの参加が、同社を重要な供給者にしている。ただし、バングラデシュの国際接続がすべて一社を通るわけではない。報告書の経営者声明は、国際陸上ケーブル事業者との競争、料金改定の必要性、報告対象期における約50%の市場シェアを述べている。シェアは会社側の説明であって、現在値の独立した認定ではないが、全供給を独占するという旧稿の描写とは両立しない。
同じ会社から二本の回線を買えば、商取引の相手は共通する。しかし、それだけで物理的な経路が同じだとは言えない。逆に、陸揚げ局が二つあっても、顧客が使うその先の区間まで別々とは限らない。障害時にどう復旧するかは、実際の経路と取り決めを確認して初めて判断できる。本稿は回線切り替え試験や個別の顧客契約の調査を実施していない。
SEA-ME-WE-6を、まだ使える回線として数えない
2024–2025年度の報告書は、SEA-ME-WE-6について、紅海情勢を受けてバーレーンとサウジアラビアを通る陸上区間を組み込む計画に変更し、費用増と遅延が生じたと説明する。当時のサービス開始見通しは2026年第4四半期だった。
2026年5月の声明では2027年初めの開始と約30,000 Gbpsの追加能力を見込み、9月の報道では2027年の開始と34,000 Gbpsの追加が伝えられた。いずれも、その時点の見通しである。予測が変わった理由を断定したり、最新の数字をすでに稼働する容量として扱ったりする根拠にはならない。
次に確かめたいのは、系統の受け入れが完了したか、どの経路で設備が稼働し、いつ顧客へ引き渡せるかだ。大きな計画値は、その確認の代わりにはならない。
帯域を買う側が最後に欲しいのは、大きな数字をもう一つ並べた説明ではない。必要な行き先まで届く、引き渡し日と条件の明らかな提案だ。年次報告書にある東向きの需要と西側の余力を読み分けると、交渉で尋ねるべきことが具体的になる。「どれだけ余っているか」の次に、「どこまで使えるか」を聞くのである。
訂正・更新:2026年10月22日。 二紙の記事の発行日を訂正した。また、陸揚げ局の沿革や容量の区別を公開資料で確認できないとした記述を改めた。BSCPLCの年次報告書は、これらを説明している。全ての国際接続を一社が独占するとの見方、陸上回線の方が必ず高いとの比較、競争者を排除する意図を推測した結論も撤回した。将来の容量は引き続き見通しとして扱い、稼働済みの供給とは区別する。
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