要約
- NROは2026年9月1日付の「RIRの承認・運営・承認取り消しに関するガバナンス文書」Version 3を最終草案として公開した。PDF版(内部的には「Version 3.4 (ASO AC Final Draft)」)が相違時の権威版とされ、差異が生じた場合の優先順位が明示されているNRO公開ページ。
- 第3条は、候補RIRが第3.1条の6基準を満たすことを提案書で実証し、各RIRの独立審査、ICANN審査、そしてICANNの承認・却下決定を経るプロセスを定めるNRO公開ページ。
- 第3.7条は、ICANNが2分の1ではなく「3分の2以上のRIR」から支持された提案を受けなければ候補RIRを承認できないと制限する。サービス地域や収入に重大な影響を受けるRIRの否定的評価は、書面通知・理由説明・重大性認定・応答機会を条件に除外できるが、情報提供としては依然考慮されるNRO公開ページ。
文書の位置づけと来歴
この草案は、2023年11月にNRO執行委員会(EC)がASO Address Council(Number Council)に要請したICP-2見直しから始まった。原則策定、2回のコミュニティ協議(2025年4月14日〜5月27日、2025年8月28日〜11月7日)、モンテビデオ、ICANN 85(2026年3月ムンバイ)、ICANN 86(2026年6月セビリア)でのドラフトワークショップを経て、ASO ACは2026年7月28日に推奨草案をNRO ECへ提出した。承認・採択は2026年第4四半期に予定されているNROプロセス文書。ただし、これは「推奨草案」であり、採択されるまではいかなる承認手続きも現行法ではない。
第3.1条:6つの承認基準
候補RIRは、既存RIRとICANNを満足させる形で次の6基準を実証しなければ承認されないNRO公開ページ。
- 地域要件(第2.2条参照):地理的に連続した、実質的な規模を持つサービス地域であり、多数の独立した法域を含み、既存RIRと重複しないこと。
- リソース保持者支援:資金的支援と、ガバナンスへの積極的参加を含むこと。
- コミュニティ支援:PDPへの積極的参加を含むこと。
- 運営能力:第4.1条の運営要件を満たす能力があること。
- 無害性:インターネット番号レジストリ体系や既存RIRのコンプライアンスに悪影響を与えないこと。
- 改善性:インターネット番号レジストリ体系の機能に実質的な改善をもたらすこと。
第2.3条は、RIRの数は技術的・運営的ニーズに整合する形で「小規模に保たれることが期待される」と定め、新しいRIRの追加が例外的な出来事であるという設計思想を明文化しているNRO公開ページ。
提案から決定までのパイプライン
第3.2条(提案):候補RIRは書面によるRecognition ProposalをRIRとICANNに提出し、第3.1条の各基準を提案書内で実証する。ICANNと各RIRは、提案の受領を公示しなければならないNRO公開ページ。
第3.3条(RIR審査):各RIRは独立して提案を検討し、照会やデューデリジェンスを行うことができる。各RIRは第3.1条の基準、候補RIRおよびその理事会メンバーの「誠実性・廉潔性」(不誠実、詐欺、虚偽表示を伴う犯罪で有罪判決を受けたことがない等)、そして法的協調可能性を評価する。推薦と理由、質疑応答、利益相反開示(サービス地域・収入への影響、メンバー投票構成、PDP参加)を含むRecognition Assessmentを提出する権威版PDF。
第3.4条(ICANN審査):ICANNは提案と各Recognition Assessmentを公開する(RIRと協議の上、一部を編集可能)。各評価を審査し、理由を示してRIRに再考を求めることができる。RIRは修正または再確認し、理由を示す。ICANNはこれを公開するNRO公開ページ。
第3.5条(修正):ICANNまたは任意のRIRは修正を提案でき、候補RIRは受諾または拒否できる。提案が実質的に修正された場合、RIR・候補RIR・ICANNが別段の合意をしない限り、第3条のプロセスは最初からやり直しになるNRO公開ページ。
第3.6条(決定):ICANNは承認または却下を決定する。承認時は理由を示すNotice of DecisionとTransition Plan付きのNotice of Pending Recognitionを、却下時は理由を説明するNotice of Decisionを公開する権威版PDF。
第3.8条(効果):承認後、新RIRは指定されたサービス地域へのRIRサービス提供の責任を負い(移行計画の期日・条件に従う)、NROのメンバーとなり、このガバナンス文書の対象となるNRO公開ページ。
第3.7条:権限を分ける3分の2の門番
本草案の構造上もっとも重要な条文は第3.7条である。ICANNは「Recognition Assessmentを提出したRIRの3分の2以上が支持する提案」を受け取っていない限り、候補RIRを承認できない。同時に、サービス地域や収入に重大な影響を受けるRIRの否定的評価を除外することもできるが、そのためには書面通知、理由の説明、重大性の認定、応答の機会が必要であり、除外された評価は情報提供として依然考慮されるNRO公開ページ。
この設計は、ICANNの単独行為を封じる一方、事実上の承認拒否権を現職RIRに与える。ICANNは最終決定者であり続けるが、3分の2の支持がない限り承認に進めない。承認の入口における実効的なゲートキーピングは、既存5つのRIRの合意構造に置かれている。これはICANNの権限を上限で縛る条項であり、ICANNが行政的に承認を押し通すルートを塞ぐ。
Version 2からの変更と条文の文言
NROの差異要約によれば、Version 3は承認プロセスの再構築(詳細な提案・審査要件、3分の2のRIR支持閾値、利益相反開示、ICANNの責任明確化、評価と理由の公開による透明性向上)に加え、サービス地域、Coordination Limitation、コミュニティ協議条項の明確化、監査・コンプライアンス体制の改訂、緊急継続条項の更新、より詳細な承認取り消しプロセス、新しい改正 safegurads を含むNRO差異要約。
文言面では、Version 2とのレッドラインにおいて第3.1条のHTMLが「cannot be Recognized unless it demonstrates the following」と読めるのに対し、レッドラインPDFおよびLACNICミラー版は「...unless it demonstrates the following in its Proposal for Recognition」と、基準の実証場所を提案書に限定する文言になっているレッドラインPDF。この差異は小さいが、基準を外部で実証できるか提案書内で実証しなければならないかという実務上の意味を持つ。
検証可能性と未確定点
本稿の条文読解はNRO公開ページ、NRO公式プロセス文書、権威版PDF(NRO版とLACNICミラー版で第3.1〜3.4条および3.8条を相互確認)、NRO差異要約、レッドラインPDFに基づくNRO公開ページ、権威版PDF、LACNICミラー、NRO FAQ。ただし未確定の点がある。
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