要約
- RFC 1746は学校向けネットワーク実験CoVisの利用規則を収録した。参加する授業の生徒は条件に同意すると個人アカウントを受け取り、大人の仲介をほとんど経ずにサービスを使い、外部の利用者からも直接連絡を受け得た。
- 規則は実名を求め、仮名と匿名を認めなかった。アカウントに結び付く行為を本人の責任とし、メールなどの私的通信に権利と調査の例外を定め、違反には利用資格の喪失を予定した。適用先はCoVisの地域コミュニティーである。
教師の仲介が消えた場所
学校がネットにつながっても、生徒が直接使えるとは限らなかった。教師や管理者がアカウントを持ち、外部へのメッセージを取り次ぐ形があった。CoVis、正式にはLearning Through Collaborative Visualizationという科学教育プロジェクトは、その持ち主を変えた。米国科学財団の支援を受け、シカゴ周辺の二つの高校で進められた。著者らの記述では初期段階に十二クラス、およそ三百人の生徒が参加していた。
参加する生徒は一人ずつアカウントを持ち、科学者や同級生と直接やり取りできた。教員が毎通の門番になる必要は小さくなった。同時に、別のインターネットアカウントを持つ人は生徒へ直接連絡できた。共同学習の魅力と、学校が予想していない相手からの接触は、同じ通信機能から生じた。
Bill ManningとDon Perkinsは1994年12月、利用者の期待と利用契約を論じるInformational RFC 1746を公表した。Barry FishmanとRoy PeaによるCoVisの説明を載せ、末尾にネットワーク利用規則の全文を収録している。全米の学校への命令ではない。一つの学校ネットワークが自ら書いた約束を、インターネットの資料として読めるようにした文書だ。
「誰でも連絡できる」と「誰でも会員」は違う
付録はCoVisの会員を定義する。授業を受ける生徒は規則に同意するとアカウントを受け取る。教師、共同研究の科学者、プロジェクトの研究者も使える。特別なアカウントは必要性と資源に応じて審査する。会員は自分の技術環境で利用可能なサービスへアクセスできた。外のインターネット利用者はこの会員規則を知らなくても、生徒へメールを送れた。地域の会員境界と世界の連絡範囲は一致しない。
規則はメール、映像通話、画面共有、非公開と指定したノートのプライバシーを認め、公開のニュースグループやメーリングリストと区別した。一方で、違反の疑いがある場合には教員や管理者が私信やファイルを見る必要が生じ得ると書いた。可能なら本人への通知を試みる。研究者による閲覧申請も、秘密保持を前提に認める余地があった。「私的」の一語で読み手に推測させず、開けられる条件を列挙したのである。
その横に置かれたのが本人確認だった。違反が個人のアカウント名に結び付けば、所有者が責任を負う。パスワードは貸せない。なりすましを禁じ、実名を使わせ、仮名と匿名を認めない。生徒は教師の共有窓口を離れて自分の言葉で発信できた。学校はその発信を特定の生徒に結び付ける手段を持った。個人アカウントは自立と管理を同時に作った。
投稿前の検閲より、苦情の後の処分
規則を考える際、著者らは図書館、職業倫理、校則、校外学習を参照した。開いたネットワークで生徒が出会う資料を学校がすべて事前に選ぶのは難しい。CoVisは少数派の意見を含む表現の自由を認めながら、個人攻撃や嫌がらせを禁止した。学校に既にある行動規則もネットで有効とした。
公開投稿を毎回確認してから出す方式は採らなかった。著者らが説明する介入のきっかけは、別の利用者の苦情だった。不適切な投稿を自動で消さず、生徒の利用資格を失わせる可能性を残し、理解が進めば撤回や謝罪を促した。苦情が届く窓口、本人に結び付くアカウント、利用を止める権限が一つの手順になっている。学校は言葉が出る前にすべてを握る代わりに、出た後の処置を自分の権限として確保した。
映像と音声を使う遠隔の「校外学習」も、同じ境界を試した。生徒は校舎を出ずに遠方の人や施設と話せる。通常の校外学習にある行動規範や保護者への連絡を、画面越しの訪問へどう持ち込むかを著者らは検討した。身体は教室にあり、社会的な相手は校外にいる。学校の責任範囲を考え直す必要があった。
規則の原文が残り、運用記録は別に要る
付録から、アカウントの条件、私信の扱い、実名、言動の責任、利用停止の可能性を直接確認できる。何件の苦情が届き、何通のメールが調べられ、何人の利用が止められたかは記されていない。実施状況を語るには当時の学校やプロジェクトの記録が必要だ。RFCが示すのは、CoVisがどの権利を認め、どの権限を手元に残すと宣言したかである。
学校は生徒をインターネットの正式な話し手として扱い、その話し手を実名の個人として管理した。配線よりも重要だったのは、教師を経由せずに話せることと、話した後に学校がアカウントを閉じられることを、一枚の規則に同居させた点だった。
出典
- RFC 1746、Ways to Define User Expectations(1994年12月) — CoVisの説明とネットワーク利用規則全文を掲載した原資料。
- RFC EditorのRFC 1746記録 — 著者、発行日、Informationalの位置づけ。
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