Summary

  • William Herrin は、ISP向けIPv6初期割り当ての算式で、拠点数や顧客数をそのまま使う箇所に底を2とする対数を入れ、用語も統一する案を示した。ARIN職員は本文と算式の食い違いを認めた。
  • 2026年4月21日のARIN 57では、現行案への支持が11、反対が42。諮問委員会は、算式を丸ごと除く方を望む声を理由に5月に草案を廃案とした。

計算の誤りを見つけた人が、正解を書き込む場所を失った。William Herrin の発表を追うと、そんな構図が見えてくる。ARINの政策文書6.5.2.1cは、ISPのIPv6初期割り当て規模を文章で説明し、続けてその計算を要約する式を載せていた。ところが式は、プレフィックス長を求めるためのビット数と、拠点・顧客の生の件数を取り違えていた。Herrin の修正案は件数を対数に改め、似た二つの割り当て単位名も揃えるものだった。

ARINの職員評価も、式と文章が一致していない点を認めた。ただし実際の割り当ては文章と申請手順に従っており、式を消しても運用に影響はないと説明した。Herrin は大きな改訂を待つ間に誤植ならぬ「誤算」を直したい。職員と参加者の多くは、使わない算式を残す理由から問い直した。

ARIN 57の議事録では、John Curran が文章と数式のどちらを規則として読ませるのかを問い、Kevin Blumberg が申請者に対数計算を求める複雑さを批判した。Herrin は今回の案なら実務を変えずに矛盾をなくせると訴えた。会場が求めていたのは、古い部品の精密な交換より、不要な部品の取り外しだった。

問われたのは草案の現在の文面への賛否だ。結果は賛成11、反対42。会議参加者は計151人だったが、この二つの数字は全員分の投票数ではない。諮問委員会の5月の発表は、支持不足と式全体の削除を望む意見を挙げ、草案を廃案とした。

Herrin は机上だけでルーティングを語る人でもない。ARINの略歴には、自宅のガレージをAS11875でIPv4とIPv6のマルチホーム接続にしているとある。発表翌日の委員会議事録には、彼自身が政策文書の第6章を読みにくいと評し、政策文の書き方を学ぶ機会を求めたことも残る。数式を持ち込んだ人が、結局は文章の問題を突きつけた。