要約

  • APNIC執行評議会は2027年の活動計画と予算を全会一致で採択した。レジストリサービスの計画には、口座保有者向けの新KYC/KYBシステムを同年第3四半期に完成させる目標が載る。
  • APNICは現在も資源申請の際に本人、法人、代理権を確認している。新計画は完成時期を示す一方、資料が矛盾した場合の判断と訂正の手順を公開していない。

会社の登記が更新されても、レジストリの口座に載る担当者がその日のうちに変わるとは限らない。担当者が退職し、代理人が手続きを引き継ぎ、古い書類だけが先に審査画面に現れる。そこで必要なのは、書類をより速く弾く技術だけではない。正しい権限の連鎖をたどり直せる手続きだ。

APNICの2026年9月6、7日の執行評議会議事録には、2027年活動計画と予算を全会一致で承認・採択した決議が記録されている。レジストリ分野の重点としてKYCと口座保有者の受け入れ手続きの改善を挙げ、添付計画のR1表では新システムの実装完了を第3四半期の成果としている。これは2027年の目標であり、現時点の稼働状況を示す記述ではない。

確認そのものには理由がある。APNICのプライバシー声明は、本人確認や口座、会員資格、番号資源の申請審査に個人情報を使うと説明する。会社登記機関や確認業者が申請情報の検証を助ける場合もある。2021年の申請案内には、連絡担当者の身分証、法人登記、雇用または権限の証明、銀行明細や公共料金請求書が挙がる。この案内は従来の申請実務を示す資料で、新システムの仕様書ではない。

身分証は「誰か」を示し、登記は「どの法人か」を示す。資源を扱う権限は、両者を結ぶ最新の委任関係に宿る。書類の更新時点がずれるだけで、正規の担当者の申請が不審なものに見えることがある。APNICがどの証拠を優先し、誰が再審査し、訂正までの間に既存のサービスをどう扱うかは、利用者にとって切実な運用規則になる。

現行のプライバシー声明には、個人情報の閲覧や訂正を求める手段と、拒否された際の理由・苦情申立てが記されている。しかし個人情報の訂正と、新たな確認制度による口座・資源サービス上の判断の再検討は別の作業だ。採択済み計画には後者の基準、担当者、期限が書かれていない。新システムの公開仕様が出れば、この点は判定できる。

同じR1表は、レジストリデータ更新の四半期報告と、資源委譲・移転で平均90%以上の満足度を掲げる。そこに不一致案件の件数、訂正に要した期間、判断を変更した件数を集計して載せれば、個人の証明書を公開せずに制度の実績を確かめられる。完了日だけでは、間違った記録から抜け出せるかどうかは分からない。

台帳の番人にはなりすましを防ぐ責務がある。同時に、台帳の不一致を修理する義務もある。APNICが次に示すべきなのは、扉を設置する日付だけでなく、鍵が間違っていたときの窓口だ。