要約
- Cipher Digitalは8月にBlack Pearlの最初の区画で賃貸を開始し、2026年7~9月期にHPC賃料収入585万2000ドルを計上した。SEC提出の10-Qでは、新設のHPC賃貸部門は202万8000ドルの営業損失だった。
- 全社営業損失は7191万5000ドル。それでも純利益が3159万6000ドルになったのは、別のFluidstack案件を支えるGoogleワラント負債の評価益1億2718万ドルが大きく寄与したためだ。
- 基本的1株利益はプラス0.08ドル、希薄化後はマイナス0.22ドル。希薄化後の計算では評価益を利益から除き、ワラントに関する約2469万7000株を分母に加えている。
稼働した区画と利益を動かした契約は別物
まず、実際に始まった商売を確認したい。Black Pearlの最初の賃貸区画は2026年8月に開始し、Cipherは7~9月期にHPC賃料585万2000ドルを認識した。うち主として520万ドルは固定賃料を契約期間にわたり定額で認識した分だ。同じ四半期のビットコイン採掘収入は2084万9000ドル。会社がデータセンター賃貸へ軸足を移す途中にあることが、収入構成からも分かる。
四半期の黒字を生んだ主役は、別の場所にいる。10-Qの損益表にはGoogleに付与したワラントに係る負債の公正価値変動益が1億2718万ドルと記される。GoogleはBarber Lakeの賃貸契約に関連するFluidstackの一定の義務を裏付け、Cipherは対価として株式取得権を渡した。Black Pearlの初賃料とBarber Lakeに結びつくワラントは、案件も収入の性質も異なる。片方の評価益をもう片方のサーバーが稼いだ売上のように扱うと、経営上の進捗が見えなくなる。
新たに開示された部門別損益を見ると、HPC Leasingは202万8000ドル、Bitcoin Miningは698万2000ドルの営業赤字。合計は901万ドルの赤字だ。さらに部門外のその他営業項目6290万5000ドルを含めると、全社の営業損失は7191万5000ドルになる。部門外費用をすべてBlack Pearlに負わせる根拠はない。一方で、HPC部門自身もまだ営業黒字ではない。
営業損益の下には受取利息3268万4000ドルと、資産計上分を除いた支払利息5899万4000ドルがある。その上でワラント評価益が加わり、最終的な純利益は3159万6000ドルとなった。評価益は純利益の約4倍だ。これが今四半期の黒字と、事業が現金を生み始めたという印象との間にある隔たりである。
1株利益が反転する理由
普通株主に帰属する基本利益は3160万5000ドルで、基本的1株利益はプラス0.08ドル。希薄化後の計算ではGoogleワラントの評価益1億2718万ドルを分子から取り除く。分子は9557万5000ドルの損失に変わり、分母にはワラント分24,697,252株が加わる。結果は1株当たりマイナス0.22ドル。四半期中に現金が二度出て行ったわけではない。将来株式を受け取れる権利を、基本と希薄化後でどう扱うかという会計上の違いだ。
賃料にも別の時差がある。9月末の繰延収益は4618万5000ドル、未収の発生賃料は140万ドル。Cipherは、請求・入金と定額法による収益計上が異なる時期に起きると説明する。HPC賃料585万2000ドルを、そのまま四半期中の入金額と読むことはできない。
すでに開始した契約部分から受け取る将来の最低基本賃料は、10-Q上で4億8516万4000ドル。変動収入や未開始部分は含まない。Barber Lakeで公表された約91億ドルの契約収入は、別の施設と長い納入期間を含む数字だ。比べるべきは総額の大きさより、各区画がいつ稼働し、いつ請求が始まるかである。
資金の先行は明白だ。有形固定資産などの純額は2025年末の6億3341万7000ドルから2026年9月末に38億9988万ドルへ増えた。長期借入金純額も27億1164万8000ドルから54億4717万4000ドルへ増加した。1~9月の営業キャッシュフローは2億8319万4000ドルの流出、投資は23億5291万ドルの流出、財務は28億2406万7000ドルの流入だった。これらは9か月の数字であり、上記の賃料と評価益は7~9月だけの数字である。
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