要約

  • Shared Services Canada が技術調達を担い、各省庁はコールセンターを運営して業務要件を定める。Employment and Social Development Canada 向けの更新入札では、サービス目標が削られ、セキュリティ要件が契約締結後に先送りされた。運営省庁への相談も一貫していなかった。
  • Hosted Contact Centre Service は2028年12月以降に使用できなくなる。2026年7月時点で新システムへ移ったのは3センター、旧システムに残ったのは10センター。移行の遅れと稼働後の不具合が期限を現実のサービス課題にしている。

なくなったのは「動いている」の測り方

コールセンターの調達でサービス目標は飾りの数値ではない。待ち時間、応答率、稼働率など、契約したシステムが何を満たせば「サービスを提供した」と言えるのかを決める。カナダの監査総監が2026年10月29日に公表した監査報告によると、Shared Services Canada (SSC) は Employment and Social Development Canada (ESDC) の更新入札からサービスレベル目標を外した。システム機能を減らし、セキュリティ要件を契約後に確定する形にもした。電話窓口を運営するESDCへの相談は一貫していなかった。

調達を決める組織と、その仕組みで国民の問い合わせに応じる組織が分かれていた。SSCは技術・調達の権限を持つ。各省庁は担当者、サービス基準、利用者とのやり取りを管理する。日程が厳しくなると、仕様書を書く側は要求を削れる。運営側は、電話を受ける段階になってから不足に直面する。

見積もりの漏れは機能の削除になった

旧 Hosted Contact Centre Service (HCCS) の調達は、表計算の誤りが製品の範囲を変える例だ。最初の入札では、応札企業と内部助言者が、必要な見積もり情報にデータ保存の全費用が含まれていないとSSCに指摘した。SSCは入札評価と2015年10月の契約締結前に修正しなかった。契約相手はIBM Canadaで、最低発注保証額は5,000万ドルだった。

2017年4月、データ保存料金の計算方法が変更され、機能の一部が外れ、保存期間が短くなった。電話の受信・振り分けなど基本機能の1エージェント当たり価格は、1ドル未満から100ドル超へ上がった。音声認証は削除され、必須だった5年間の保存要件もなくなった。この変更で契約総額は増えなかったが、当初設計された機能は減った。監査総監が2025年に調べた際、Canada Revenue Agency の通話録音は一般に2カ月しかアクセスできなかった。

2013年の構想は43の連邦組織にある220センターの近代化だった。2020年6月までにHCCSへ移行したのは3組織の8センター。導入費は5,200万ドルで、当初見積もり1,600万ドルの3倍だった。2年のオプションと14カ月の延長を含む契約総額は2028年までに2億5,100万ドルに達する。2026年3月時点の実支出は約1億8,000万ドル。総契約価値と支出済み額は別の数字だ。

支払いは利用記録まで届かなかった

監査が抽出した従量料金の請求書について、SSCはCanada Revenue AgencyやESDCに実際の利用量を確認していなかった。担当者は過去の利用実績と通話量予測を比べて請求の妥当性を確認したと説明したが、監査ではその作業の証拠が見つからなかった。専門業務の一部の作業時間表にも、確認・承認の記録がなかった。

従量課金を検証するには、請求額をシステム利用記録に結びつけ、運営する省庁が確認した記録を残す必要がある。監査資料はその照合が閉じていないことを示す。記録のない確認を根拠に、政府が月額料金の対価を説明することはできない。

2028年は契約延長で買い足せない

置き換え作業の遅れは新しい話ではない。2021年に始めたクラウド試行は、資格審査を通った事業者が1社だけだったため中止。2023年の再試行も開始されなかった。SSCがESDCの更新調達を始めたのは2024年末で、内部資料は日程が厳しいと繰り返し記していた。三つの組織向けの契約は2025年5月から7月にかけて締結された。

監査時の2026年7月、Contact Centre as a Service へ移行済みのセンターは3カ所、HCCSに残るのは10カ所だった。ESDCは2025年11月以降に移行計画を3回改訂し、過半数のセンターの移行を延期していた。2026年7月時点の見込みでは2027年6月までに稼働する計画だが、先行稼働後に試験で見つからなかった機能不具合が発生した。

HCCSは2028年12月以降に使えない。14カ月・3,600万ドルの延長はESDCだけが対象だ。監査が示す残りのリスクには、2027年にオプションなしで満了する契約の18センター、2026年末または2027年に満了し最大5回の1年延長が可能な契約の101センター、SSC内製の旧システムを使う88センターがある。これは連邦全体の別システムを含む数字で、207センターすべてがHCCSという意味ではない。

監査総監は、選定されたシステムの調達・契約管理は適用方針を守らず、経済性・効率性・有効性への配慮も不十分だったと結論づけた。一方、新しい調達の記録不備は供給者の選定や結果を変えていない。問題は契約の範囲、手続きの厳密さ、サービス継続にある。SSCは5年間の全政府計画を受け入れ、製品ロードマップとアーキテクチャを2027年3月31日までに作るとしている。報告書は関連業務がDigital Transformation Canadaへ移管される予定だと記す。

2028年までに、要件、セキュリティ、サービス指標、移行試験、各センターの切替確認に責任者が要る。契約はプラットフォームを買える。しかし、入札から削除した目標を運用開始後に自動で復活させることはできない。

出典