要約
- Australian Energy Regulator(AER)は、2026年Rate of Return Instrumentの株式ベータと市場リスクプレミアム(MRP)について追加意見を求め、期限を10月23日の業務終了時とした。
- 独立パネルはベータ0.55やMRP6.1%が不適切とは認定していない。求めたのは、数値を選んだ理由と証拠の重み付けの説明だ。
- 最終文書の公表目標は12月のまま。協議文書もパネル報告も、それ自体で電気料金を変える決定ではない。
AERは10月9日、2026年Rate of Return Instrument(RORI)の草案後ディスカッション・ペーパーを公表し、ベータとMRPに対象を絞った追加協議を始めた。書面意見は10月23日(金)の業務終了までに提出する。AERは期間を「厳格な10営業日」と位置付け、最終RORIは12月の公表を目指している。
RORIが定めるのは即時適用の料金表ではなく、規制対象の電力・ガス網に対する資本の許容収益をAERが算定する方法だ。公表後4年間に開始する関連規制期間において、AERとネットワーク事業者の双方を拘束する。AERによると資本リターンは通常、ネットワーク収入のおよそ半分を占める。したがって将来の収入決定や長期投資の誘因に関わるが、ここから個別世帯の請求額を計算できるわけではない。
5月の草案は株式ベータを0.55とし、2022年の0.6から引き下げた。提案レンジは0.4〜0.7である。ベータは規制網事業者が市場全体の動きにどれほどさらされるかを推定する指標だ。MRPは6.1%で、2022年の6.2%をわずかに下回る。MRPは直接観測できず、AERが複数の材料から推定して文書に固定する。
7月の独立パネル報告は全員一致だったが、結論は数値への否定ではない。0.55のベータも6.1%のMRPも不適切とはしていない。問題にしたのは説明の厚みで、ベータのレンジと代表値を支える理由が十分に展開されておらず、古い国内比較対象を国際的な証拠より重く扱う根拠も示されていないと指摘した。MRPでは、更新後の証拠が引き下げを説得的に裏付けていない一方、6.1%自体はより詳細な理由付けがあれば妥当になり得るとした。
今回のAER分析は、モデルを一つの見出し数値として扱う危うさを示す。配当成長モデル(DGM)は株価と予測配当から含意された株主資本コストを推定し、そこから無リスク金利を差し引いてMRPを出す。2022年の参照期間から草案2026年の期間にかけ、平均無リスク金利は3.20%から4.42%へ1.22ポイント上昇した。この上昇だけで二段階DGMのMRP低下の約3分の2、三段階モデルの低下分を上回る全量を説明する。差し引き前の株主資本コストは二つのモデルで逆方向に動き、二段階では0.62ポイント低下、三段階では0.27ポイント上昇した。3年目以降の配当成長前提が異なるためだ。これはAERのモデル分解であり、投資家が実際に求めるリターンの観測値ではない。
追加協議は、分解後のDGMにどの程度の重みを置くかを尋ねる。ベータについては、国内企業を同じように扱うべきか、海外比較や直近5年の推計をどう使うか、欧州の比較対象5社を加えるか、エネルギー収入の大半が販売・取引由来のHera Groupを除くか、という論点も挙げた。提出意見は証拠の材料であって、数値を決める投票ではない。
提出意見は既受領資料と合わせて検討される。最終判断を担うのはAERであり、最終説明書でパネル勧告に応答するとしている。12月文書の焦点は、サンプルとモデルから拘束力を持つ回帰率の判断に至る道筋を、事業者、投資家、消費者が追跡できる形で示すことだ。
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