要約
- Bharti Hexacomは2026年8月、Indus Towersとの年間取引枠を200億ルピーで更新した。前年の220億ルピーから減ったが、賃料の値下げを意味するわけではない。
- 実際の取引額、賃料の比較、別件の鉄塔売却については公表資料がある。問うべきは「資料がないのはなぜか」ではなく、その数字で何が確かめられるかだ。
鉄塔を替えれば済む、とはいかない
携帯電話のアンテナを別の鉄塔に移すには、家賃の安い物件を見つけるだけでは足りない。電源、光回線、電波の届く範囲まで考え直す必要がある。Bharti Hexacomは2025年の株主総会招集通知で、既存拠点からの移転には通信への支障、早期解約の費用、回線の変更が伴うと説明している。
同社がIndus Towersの設備を使い続ける理由は理解できる。では、いくら払うのが妥当なのか。ここで株主総会の大きな数字だけを見ると、話を取り違える。
2025年8月20日の総会で承認されたのは、年度あたり最大220億ルピーの関連当事者取引だった。有効期間は翌年の総会まで、最長15カ月。二つの会計年度にまたがるからといって、2027年3月末まで丸二年度分の承認があったわけではない。
2026年8月11日には、その更新も済んでいる。今回の通知にある上限は年間200億ルピー。2027年の総会まで、やはり最長15カ月だ。枠が小さくなったことだけでは、賃料が下がったとも、使う鉄塔が減ったとも言えない。サービス購入、立替費用の精算、設備取引などを含む上限であって、一基あたりの料金ではないからだ。
まず請求の中身を読む
同じ通知には、2025–26年度の実績も載っている。HexacomのIndusとの取引は合計140億8,200万ルピー。サービスが87億8,700万ルピー、費用精算が51億4,500万ルピー、資産・設備関連が1億5,000万ルピーで、適用されるGSTを含む。逆方向に提供したサービスの金額は、表の表示単位ではゼロに丸められている。
電力の立替費用を返すことと、鉄塔を買うことでは、同じ一ルピーでも意味が違う。また、この合計は財務諸表の関連当事者取引額とは一致しない。通知はその理由として、Ind AS 116に基づく使用権資産やリース負債の会計処理を説明している。差額だけを見て使途不明金を疑うのは早い。
肝心の賃料にも、比較の材料はある。B S R & Co. LLPの2026–27年度向け検討資料は、HexacomがIndusに支払う料金と、資本関係のない設備業者との契約料金を比べ、同程度で独立企業間の条件に沿うと判断した。電力費は上乗せせず、実費で精算すべきだとしている。
ただし、判断の土台は経営陣から提供された情報と、比較条件がそろっているとの確認だ。B S Rは、その情報を監査・検証したものではないと明記している。公表されたIndus部分には、拠点ごとの料金を数字で照合できる一覧もない。逆方向に提供する帯域・通信サービスについては比較データを得られず、競争的な市場価格を用いるよう勧めている。賃料の結論を、すべての取引の適正価格証明に広げることはできない。
99.9998%が賛成しても、料金表にはならない
2026年の投票結果は賛成66,146,683票、反対152票。賛成率99.9998%という、ほぼ全会一致の数字が並ぶ。支配株主グループの投票はゼロで、関連当事者は投票を控えたと記載されている。
HexacomもIndusもAirtelの子会社だが、Airtelが支配株主として票を投じ、自らの取引を押し通したという話ではない。それでも、両社の少数株主の利害が一致するとは限らない。一方の賃料支出は、もう一方の収入になる。
前年の公式結果では、賛成88.2892%、反対11.7108%。この反対分は、棄権か無効票か不明な残りではない。ただし、集計表から反対した株主の名前までは分からない。ここでも支配株主グループの投票はゼロだった。
採決で決まったのは取引の枠だ。料金、値上げ条件、拠点ごとの追加料金、稼働水準などは契約で定める。賛成票が増えても、それだけで値付けの検証が済むわけではない。
113億ルピー余りの売却は別件だ
もう一つ混同しやすい数字がある。約3,400基の鉄塔と関連設備をIndusに売る計画で、対価の上限は113億4,100万ルピー、完了時の調整を伴う。2025年2月の郵便投票通知が扱うこの案件は、年間の通常取引枠とは別だ。
2024–25年度の年次報告書によると、売却は2025年3月16日に承認された後、Telecommunications Consultants India Limited(TCIL)が公的部門の要件に沿う新たな手続きを求め、保留となった。同年8月のETTelecom掲載PTI記事も、8月の決議にはこの売却を含まないという会社側の説明を伝えている。記事のURLに売却額が入っていても、本文の説明は変わらない。
会社はGrant Thornton Bharat LLPの評価資料と関連証明書も公開している。外部評価が存在しないという見方は成り立たない。一方、評価書の存在はTCILの同意や、その後の売却完了を証明するものでもない。ここで確認した資料だけでは、保留後の完了は確定できない。
したがって、売却額を年間取引枠から差し引き、「半分ほど使った」と計算するのは筋違いだ。別々の決議には、別々の確認が要る。
公開数字から、どこまで分かるか
Indusの2026年6月期四半期資料には、連結売上高843億1,000万ルピー、EBITDAマージン53.6%が載る。運営指標ではマクロ鉄塔267,611基、共同設置432,250件、平均共用率1.62。鉄塔数や共用率が公表されていないわけではない。ただし、この全社規模の数字からHexacomだけの賃料や回収状況は取り出せない。
所有関係も、2019年の合併報道や2022年の4.7%取得発表の段階にとどまっていない。最新の四半期報告書は、合併が2020年11月に完了し、Indusが2024年11月にAirtelの子会社となり、Vodafone側が同年12月に残りの持分を売却した経緯を記す。
読むべき資料が増えるほど、問いは具体的になる。同じ条件の設備に、いくら払い、どれだけのサービスを受けたのか。200億ルピーという承認額は、その答えではなく、取引を認める範囲を示している。
従来の参照先であるBusinessworldとMSNは、今回本文を独立に確認できなかった。Indusの旧決算ページはエラーとなり、Airtelの年次報告書窓口も個別報告書の内容を確認した根拠にはしていない。上記の提出資料を事実確認に用いた。企業情報はIndus Towersのディレクトリ ストラテジックサークル限定も参照。
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