要約

  • APNIC細則91条の改正要件は、会合で実際に投じられた票の3分の2。25条は、理事会の決定を見直すか変更する場合、または理事を解任する場合、会合の48時間前に会費を納めている全会員の議決権総数の3分の2を求める。議決権数は会員区分ごとに異なる。
  • APNIC Pty Ltdの発行済み株式は1株だけで、APNIC EC Limitedが選出された理事会のために信託保有する。受託会社の会員になれるのはAPNIC理事会の構成員に限られる。

理事会に反対する会員が、同じ会合で二つの提案を考えたとする。ひとつは細則の文言を変えること。もうひとつは理事会が下した具体的な決定を覆すこと。どちらにも「3分の2」が出てくるが、欠席票の扱いは正反対だ。前者では投票しない人の票は計算に入らない。後者では、その議決権も必要票数を押し上げたまま残る。

APNICの91条は細則改正を「投じられた票」の3分の2で決める。25条は理事の解任、理事会決定の見直し・変更に「会合の48時間前に会費納入済みの全会員の票」の3分の2を要求する。5.6条の会員による理事会決定の再検討権も、全会員の票を基準にしている。出席者の大多数が賛成したという報告だけでは、25条を満たしたことにならない。

ここで票は人数と同義ではない。24条は会員区分に応じて異なる票数を割り当てる。APNICの透明性ページには、56のエコノミーに1万人超の会員がいるとある。しかし、その人数から必要な賛成票を算出することはできない。ある会合で権利を持つ会員の区分別議決権と、48時間前時点の会費納入状況が必要になる。派手な「1万人の3分の2」という数字は、この細則に即していない。

会合を成立させる条件はさらに別だ。8条では、審議する決議に投票できる票の30%と、本人または代理人を通じて出席する20会員のうち、少ない方で定足数を満たす。通常議題は投票された票の過半数、理事選挙は得票上位で決まる。全会員の票の4分の1があれば特別会合を請求できる。定足数は会合を開く鍵であって、理事会を覆す票の代用品ではない。APNICは、理事会が別段の決定をしない限り、検証可能な電子投票も定め、方法と期間は会合通知に示す。

次に会社の構造を見る。APNICは、オーストラリアの非営利会社APNIC Pty Ltdに発行済み株式が1株あり、APNIC EC Limitedが選出された理事会のためにその株を信託保有すると公開している。理事会の構成員は運営会社の取締役も務める。APNIC EC Limitedの定款は、APNICの信託の受託者となり、APNIC Pty Ltdの全株式を保有することを主目的に置く。受託会社の会員資格はAPNIC理事会の構成員に限られる。オーストラリア在住の事務局職員が取締役に加わる余地はあるが、APNIC理事会に属さない取締役には、受託会社の取締役会決定に投票する権利がない。

この仕組みは秘密の抜け道ではない。APNIC自身が公開している。ただし、会員の意思が事業会社に届く道筋を示す。会員が理事会を選び、理事会が総会の間を運営し、その構成員が唯一の株式を保持する会社にも入る。具体的な理事会決定を問い直すとき、会員は最も広い分母に向き合う。

細則の変更と過去の決定の取消しは別の行為だ。改正が過去を自動的に消すわけではなく、細則はAPNIC Pty LtdのArticlesと会社の権限にも従う。公開資料には、現在の加重議決権名簿も、両手続きのどちらかを試した最近の票決も載っていない。正確な動員力を語るには、会合通知、48時間前の有資格票、議案と開票結果が要る。それでも規則に書かれた差は動かない。理事会の決定には、欠席者の票まで壁の一部になる。

APNICの一次資料