要約

  • 重要な越境取引所や一部の取引後機関の直接監督を各国当局からESMAへ移し、最終判断もESMAが担う案だ。
  • 新しい執行委員会が個別事業者を担当し、監督委員会は規制方針、戦略、予算、監督の収れんを引き続き担う。

10月7日、ESMAは第三国の中央証券保管機関(CSD)について、EUが移行制度の延長法を整える間、2027年1月17日以降も一定のサービス利用を妨げるべきではないとの見解を示した。その2日後、EU理事会は金融市場インフラの一部を誰が監督するかを変える、より広い法案の主要部分で政治合意に至った。

10月9日の合意は交渉方針の要点であり、正式採択済みの権限でも施行中の法律でもない。理事会は正式採択前に文案を仕上げる必要があると説明した。欧州議会の手続き2025/0383(COD)は10月10日時点で委員会決定待ち。議会が自身の立場を採択した後に、両機関の交渉が始まる。

市場統合・監督パッケージ(MISP)は、最重要の越境取引所と、中央証券保管機関や中央清算機関(CCP)など主要な取引後機関の監督を、各国当局からESMAへ移す案だ。対象は重要性基準で限られる。理事会は基準を見直したとするが、数値のしきい値も対象企業数も発表していない。取引所の基準は、2年後に欧州委員会が適切性を評価する仕組みだ。

ESMA内には新たな常勤の執行委員会を設け、議長と独立委員5人が運営と直接監督する事業者ごとの判断を担う。一方、別の監督委員会は規制上の決定、戦略、予算、監督の収れんで主要機関として残る。個別案件とシステム全体の判断を分ける構成であり、新組織が既存委員会を置き換えるわけではない。

監督業務の移行は2年間。ESMA主導のEU・各国専門家チームが一緒に業務を引き継ぎ、その後も恒常的な協力で各国の知識と関与を保つ。ただし最終評価と決定はESMAが担う。この移行期間は、取引所基準を2年後に見直す制度とは別の時計である。

対象を調整する仕組みもある。通常の重要性基準に届かない取引所でも、任意のpan-European market operator制度を選べば、複数国で単一ライセンスを使いESMAの直接監督を受けられる。暗号資産サービス事業者は、重要な越境事業者だけが直ちに対象になる。これは欧州委員会の当初案より限定的だ。

焦点は、最終文書が情報収集者、個別案件の決定者、各国の知見を最終判断へ届ける経路を明確にするかどうかにある。合意は最終責任をESMAへ寄せる方向を示すが、手続きは続いている。CSDに関する10月7日の説明は、法整備と業務継続の時間差を示す例であり、MISPの発効を意味しない。

出典

  1. EU理事会の10月9日MISP合意
  2. 欧州議会の手続き2025/0383(COD)
  3. 欧州委員会のMISP法案一式
  4. 貯蓄・投資同盟に関する欧州委員会通信COM(2025) 940
  5. 欧州委員会提案COM(2025) 943
  6. 第三国CSDに関するESMAの10月7日声明
  7. EU理事会の貯蓄・投資同盟の背景
  8. アイルランド議長国による10月9日の会合結果
  9. 2026年10月9日のECOFIN会合ページ