要約
- 10月1日付の草案は、オープンインターネット規則の義務はインターネット接続事業者に適用され、AIの回答画面による情報選別はアプリ層で起きると整理する。
- 意見提出期限は11月11日。これはまだ草案であり、法律を変えるものではない。BERECは既存ルールの執行と当局間の連携を重視する。
同じネットワークにつながっていても、情報にたどり着く経路は変わりうる。検索エンジンは複数のリンクを並べるが、AIサービスは限られた情報源を選んで要約し、利用者を自らの画面内にとどめることがある。接続は途切れていなくても、情報との出会い方は変わる。
BERECが10月7日に公開協議へ付した報告書案 BoR (26) 141 は、この適用範囲の境界を扱う。規制当局理事会は10月1、2日の会合で草案を協議対象として採択した。文書は生成AIとエージェント型AIを、インターネット上の新たな仲介層と捉える。回答エンジンは情報源を選び提示し、エージェントは利用者に代わって操作を実行することもある。
ガバナンス上、最も明確なのはEUのオープンインターネット規則が届く範囲だ。草案によれば、この規則の義務はインターネットアクセスサービスの提供者、つまり接続を担う事業者に課される。AIが仲介機能を果たすコンテンツやアプリの提供には及ばない。BERECは、2026年1月のデジタルネットワーク法案も、このネットワーク層を中心とする構造をおおむね維持すると説明する。そのため、同規則だけでは草案が取り上げるAIの情報選別に対処できない。
これは権限の境界であり、AIの回答が違法だとか、インターネットがすでに閉鎖的になったという認定ではない。ネットワーク規則はアクセス事業者による通信の運び方を対象にする。AIの画面は、どの情報源を表示するか、どう要約するか、利用者が元のサイトを訪れるかに影響しうる。双方を「オープン性」と呼んでも、同じ規則の対象にはならない。
草案は、検討した証拠から、生成AIの回答が元サイトへの流入を減らし、注意を一部の情報源に集中させる可能性がうかがえるとしている。また、AIが出版社、研究者、公益団体のコンテンツに依存する一方で、要約やクローリングが制作意欲を弱めるおそれがあるという矛盾も指摘する。これは引用文献をまとめた評価であり、BERECがEU全域の因果効果を実験で測った結果ではない。
技術プロトコルだけでは責任の所在は決まらない。草案では、MCPやWebMCPが相互運用やサービス切替を容易にする一方、利用者向けインターフェースを握る事業者の影響力を高める可能性も論じている。robots.txtはコンテンツ提供者がAIクローラーへの希望を示す主な手段だが、透明性と実効性に限界があるという。共通接続方式やクローラー向けの信号は技術を説明できても、担当当局や利用者が実際に見た内容までは明らかにしない。
草案はデジタル市場法、デジタルサービス法、AI法、データ法など、複数の制度を検討する。BERECは、重大な制度上の空白があるかを判断する前に、既存法を実施・執行し、その効果を見ながら当局間で連携することを優先する。今回の意見募集では、具体例ごとに選別を行った事業者、該当する層、アクセスが変わったことを示す証拠、適用を担う当局を照らし合わせることができる。
意見は11月11日の業務終了までに英語で提出し、該当する章や段落を示す必要がある。BERECは受領確認が届かない場合は提出が成功していないため、再送するよう案内している。機密情報の扱いに配慮したうえで、提出意見と最終判断への反映を説明する要約を公表する予定だ。草案も意見募集も、現行法を変更しない。
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