要約

  • Andy LintonとTerry Mandersonは2009年、既存のIPv4割り振り・割り当て記録を、最初のIPv6を受け取るための資格に使うAPNICのprop-073を共同提案した。会員は既存のオンライン窓口から申請する。
  • IPv4のallocationを持つ会員はIPv6の/32、assignmentを持つ会員は/48の対象となる。事前のプレフィックス確保はAPNIC事務局の裁量だった。
  • APNICは2010年2月10日に実施した。2018年のAPNICの回顧によれば、APNICと各国インターネットレジストリを合わせ、約7000の会員が恩恵を受け、住所空間の総量は/32換算で104件分だった。

その証明書は、もう引き出しにある

窓口の職員が「証明書を出してください」と言う。証明書は、その職員の背後の棚にある。2009年8月のAPNIC 28政策会合で、Andy Lintonが指摘したのはそんな場面だった。IPv4のallocationまたはassignmentを受けた会員の情報は、APNICのデータベースにある。最初のIPv6を求める際、その記録を資格判断に使えばよい。Lintonは「データベースにすでにあるものが根拠だ。もう証明は済んでいる」と会場で述べた。聞き手に必要だったのは新しい紙ではなく、振り返る動作だった。

Terry Mandersonと共同でまとめたprop-073の最終案は、窓口を二つの経路に整理した。IPv4のallocation保有者にはIPv6の/32、assignment保有者には/48。allocationは下流へ再配分するための資源、assignmentは保有者自身の用途という既存の区分に沿う。会合でLintonが新たな「endsite」という分類に慎重だった理由もここにある。申請を楽にする政策のために、まず台帳に新しい欄を増やすのは本末転倒だ。

会場ではRandy Bushが「チョコレートソースをかけて食べてもいい」と言うほど、用途説明を簡単にする冗談を飛ばした。Lintonはそこで話を戻す。申請者にはIPv6をネットワークで使い、経路を出す意思が要る。台帳にある事実は台帳から読み、運用の意思は申請時に示す。それで窓口の仕事は十分進む。

会員はAPNICのオンラインシステムで簡単に申請できる。事務局には、対象者の一部または全員のために適切なプレフィックスを事前に確保する裁量も与えた。確保する範囲と時期は事務局が決める。資源を使う意思を示すのは会員自身だ。先回りして棚を整える仕事と、顧客の代わりに注文を出す仕事は違う。

提案は費用にも目を配った。当時のAPNIC料金表では、既存会員にIPv6を追加しても年間の住所資源料金は上がらないと著者らは説明した。文書には、IPv6 allocationを持たない会員が約1300いたとの当時の推計もある。全員が/32を希望しても合計はIPv6空間の/22から/21程度で、一部はより小さい/48になる。2009年の試算は、この簡素化が資源の奪い合いになるかを検討する材料だった。

会議のひと言が運用になるまで

APNICの政策履歴では、2009年8月27日にPolicy SIG、翌28日に会員総会でコンセンサスに達した。執行理事会は11月に承認し、2010年の会議記録は2月10日の実施を確認する。Lintonの「もう証明した」という発言は、会議録の気の利いた一節で終わらなかった。

APNICが2018年に公表した回顧によると、APNICと各国インターネットレジストリの会員約7000がこの政策の恩恵を受け、配られた空間は/32換算で104件分だった。これは住所資源を受け取る入口についての数字だ。実際のIPv6の運用状況を見るには、経路広告やトラフィックを追う必要がある。鍵を受け取った後にドアを開けるのは運用者だ。

適用範囲には線も引かれた。歴史的な資源の保有者はこの近道の対象から外れ、各国インターネットレジストリは自らの会員に採用するかを選ぶ。Lintonの着眼点は、レジストリの仕事を小さく、確かにした。正確な台帳を保つなら、その台帳は会員の手間を減らすためにも働くべきだ。

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