要約
- 国際登録と基礎商標の権利者が別になっても、国際登録日から五年間の従属性は続く。期間内に始まった手続の結末は、五年を過ぎてから影響する場合もある。
- WIPOによると、2025年に基礎商標の失効を理由に全部または一部が取り消された国際登録は5,776件。一部取消が55.7%を占め、所定の条件を満たす転換申請には取消記録から三カ月の期限がある。
買収後、売り手の経理部が削ろうとしている小さな費用が、買い手の海外ブランドを支えている。そんな構図が、商標取引では成立する。売り手の怠慢を決めつける必要はない。両社の事業が別れれば、同じ商標を守るために支払いたい金額も別れる。
Madrid制度では、国際登録と、その基礎となる商標を別々に移転できる。ただし国際登録から五年間、国際登録は基礎商標に従属する。名義を変えても、このつながりは切れない。海外の権利を取得した企業が、基礎商標の維持を決める席には座っていないことがある。
WIPOのMadrid制度ガイドの第830〜832項は、この点を明記している。基礎商標の不更新、基礎出願の取下げや拒絶は、基礎商標の権利者が国際登録の名義人と異なっていても、国際登録の取消につながり得る。取引が移したのは権利であり、その存続条件をすべて移したとは限らない。
国別に切り分けたつもりでも、根は一本
ある地域の事業を売却し、国内事業は残すという取引構造を考えてみよう。実在の案件の再現ではない。買い手が複数の海外市場に関する国際登録上の権利を受け取り、売り手は基礎商標を保有し続ける。買い手は販売網や包装、広告に投資する。売り手は自分に残った事業の採算を見て、維持や争いへの対応に予算を配る。
海外展開が伸びるほど、基礎商標を失った場合の買い手の痛手は大きくなり得る。ところが、その商標を守る側の利益が同じように増えるとは限らない。契約書に並ぶ国名の数より、この利害のずれの方が取引後の資産価値を左右することがある。
Madridの集中管理には利点がある。各地で必要な手続をまとめて扱えることは、海外展開をする企業にとって便利だ。同時に、指定先の官庁はそれぞれの法律で保護を判断する。WIPOの公式FAQが説明するように、ある指定先の拒絶は他の指定先の保護を左右しない。一方、基礎商標の失効は共通の土台に作用する。市場を分散しても、この依存まで分散したことにはならない。
五周年の通知だけでは足りない
五年は国際登録日から数える。事後指定を行っても、従属期間がそこから新たに五年間始まるわけではない。譲渡によって残りの従属性が消えることもない。
さらに、五年の期間内に始まった手続がその後に決着し、取消に結びつく場合がある。管理表の日付が過ぎたからといって、未決の手続まで終わった扱いにすることはできない。誕生日は確定している。係争の終了日はそうはいかない。
取消の範囲も見る必要がある。基礎商標の効力が失われた商品やサービスに応じて、一部だけが影響を受けることもある。2026年版のWIPO年次報告では、2025年に基礎商標の失効によって全部または一部が取り消された国際登録は5,776件で、その55.7%が一部取消だった。5,776のブランドが丸ごと消えたという数字ではない。買収案件だけを数えた統計でもない。
第三者が基礎商標を攻撃する場面ばかりを想像すると、維持しないという行動を見落とす。大がかりな敵対戦略がなくても、担当者の予算から外れた権利は弱点になる。
日付を守るため、各地へ走る
基礎商標の失効に基づき、本国官庁の請求で国際登録が取り消された場合、条件を満たせば国内・広域出願への転換を利用できる。申請先は各地の官庁だ。期限は国際登録簿に取消が記録された日から三カ月であり、社内で通知が回覧されてからではない。
転換によって、国際登録日または該当する事後指定日、そして適用される優先権を引き継げる。だが、各地の要件や手数料、処理は残る。以前の日付を確保する道と、すべての国で自動的に保護が復活する仕組みは別物だ。国際登録を任意に取り消した場合には、この救済は使えない。
WIPOは2025年の転換申請件数を把握していない。申請が各地で直接行われるためで、取消後にどれだけ保護が回復したかを測る数字が欠けている。
2026年11月1日からの通知43/2026による改正は、代理人やメールアドレスの変更などの手続を更新する。五年の従属期間は短くなっていない。使いやすい管理画面があっても、基礎商標を維持する決定権までは付いてこない。
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