要約

  • ILOは2026年7月3日時点で、1986年の憲章改正を131か国が批准または受諾したと報告した。187加盟国の3分の2に当たる一般基準125か国を上回る。
  • 憲章第36条は、工業上最も重要な10加盟国のうち5か国の受諾も要求する。該当国ではインドとイタリアの2か国が批准済みで、さらに3か国が必要だった。改正はこの国々の非選挙議席を廃止するが、未批准の理由までは条文から分からない。

二つ目の数字を見落としてはいけない

通常の批准数だけを見れば、187か国中131か国という数字で計算は終わったように見える。だが、ILO憲章は改正の発効に二つの条件を置く。加盟国の3分の2の受諾に加え、理事会で「工業上最も重要な加盟国」として代表される10か国中、少なくとも5か国の受諾が必要だ。確認できた最新の公式集計は2026年7月3日付で、131か国が受諾し、その中の該当国はインドとイタリアだった。全体の基準は達成済みだが、残る該当国から3か国の受諾が必要だった。

この差が重要なのは、1986年の改正がまさに第二の条件に関係する現在の仕組みを変えるからだ。現行憲章では、工業上最も重要な加盟国に政府側の非選挙議席を10席割り当てている。改正が発効すればこの特別議席はなくなり、政府代表は地域別に配分される。理事会の正規メンバーも56人から112人に増える。内訳は政府56、使用者28、労働者28だ。単に現行の席数を増やすのではなく、構成と配分方法を組み替える設計である。

これは技術的な文言修正ではなく、憲法上の移行だ。改正は憲章40条のうち11条を変更する。理事会構成のほか、理事会が任命する事務局長を国際労働会議の承認に付し、将来の憲章改正手続も改める。どの変更も権限の所在、代表の選び方、次の制度変更に必要な多数を動かす。

制度上の効果と各国の動機は別だ

5か国という追加要件は、該当グループにこの改正を発効させるうえで欠かせない役割を与える。それが規則の効果である。議席を守るために政府が批准を保留していることや、条件が不当であることの証明ではない。公開記録が示すのは要件と集計であり、各国の国内手続の理由ではない。

「民主化」として論じられる改革だからこそ、この区別は重要だ。代表性を広げる改正が、廃止対象となる非選挙議席を持つグループの最低限の支持に依存している、という構造は確認できる。移行そのものに制度上の依存が組み込まれているのだ。ただし「拒否権」と呼ぶのは証拠を越える。要件は10か国からなるカテゴリーに対する集団的条件であり、憲章の改正手続の一部である。確認できる結論はより限定的だ。全加盟国の合計だけでは、発効までに誰の承認が必要かが見えない。

二つの基準が守るものも異なる。3分の2という条件は全加盟国に高いハードルを課す。5か国という追加条件は、憲章が工業上の重要性を認める加盟国から一定の受諾を得る。現在の均衡が適切かどうかは議論できる。しかし、一方の条件を満たしたからといって、もう一方を消すことはできない。

1995年の手続変更は同じ改革ではない

批准が進む間、ILOは制度を止めていたわけではない。1995年、国際労働会議は手続規則を改正し、1986年案の一部を先取りした。補欠メンバーを増やし、正規・補欠メンバーを合わせた地域配分を調整した。参加の幅を広げ、政府グループの構成を地域別モデルに近づけた。

それでも正規メンバーと補欠メンバーの区別は残った。ILOの説明によれば、1995年の調整は、投票できる正規メンバー数を増やさず、非選挙議席も廃止せず、事務局長任命や憲章改正手続も変えなかった。補欠メンバーは審議に加わり、コンセンサス形成で役割を担うこともある。それは正規議席に伴う憲章上の投票権とは異なる。

したがって「改革は実施された」とまとめると、決定的な差が抜け落ちる。手続の変更で参加を増やし、地域配分に近づけることはできる。しかし、正式な投票権や恒久議席の帰属まで変わるとは限らない。1995年の調整は構成問題の一部を扱ったが、憲法上の決着ではなかった。

2024年にILO事務局が示した選択肢も、時点を明記すれば論点を整理できる。補欠メンバーにより多くの権利を認める暫定策、非選挙議席10席を残したまま理事会を拡大する新たな憲章改正、そして1986年案の批准促進に絞る現状維持が提示された。三者構成員の協議は結論に至らず、当時、事務局は1986年案の批准が一般的支持を得た唯一の選択肢だと説明した。これは提案と当時の議論であって、採択済みの政策ではない。

数字が示すこと、示さないこと

日付のある集計は制度上の問題を可視化するが、政治的な説明までは与えない。2026年7月の時点で全体の批准数は一般基準を超えていた一方、特別要件に該当する10か国では2か国しか批准していなかった。ILOは6月のハイレベルイベントを含め、批准促進を続けた。これは組織が未完の仕事とみなしていることを示すが、各政府が批准した、あるいはしていない理由を明かすものではない。公表日以降の集計が変化したか、別案が再び議題に載るかも別途確認が要る。

実務上問うべきなのは、改正案が古いか、約束する公平性が魅力的かではない。加盟国がいまも1986年案の憲法上の終点を望んでいるか、現行制度で選挙による権限と非選挙議席の差が意味を持ち続けているか、代替案が同じ代表性の格差を埋めるのか、それとも現行制度を運営しやすくするだけなのかだ。

改革の正当性は批准総数だけでは測れない。特別要件が未達であることから反対の意図を推測することもできない。条文から見えるのは、複数の形の同意を求める移行設計である。一般多数の数字だけを報じる改革論では、新しい構成がいつ始まるかを決める条件が抜け落ちる。

出典

Heng LuのNote 32と71は分析の視点に限って用いる。両ノートはRIRとIPアドレス資源のガバナンスを扱っており、ILOや加盟国の動機を示す証拠ではない。