要約

  • APNICのレポートが数えるのは登録済みの割り当てインスタンスで、利用中のアドレスや稼働中の経路ではない。
  • IPv4の純増660件の背後では、phが1,546件増え、auが956件減った。ファイルには変更履歴がない。

設備計画の資料に「IPv4が660増えた」と一行で載せれば、需要が伸びた数字に見える。APNICの31日付スナップショットが示すのは、登録された割り当てインスタンスの純増だ。利用中のアドレス数や稼働中の経路を示す計器ではない。

日付をそろえると比較が見える。10月1日付のファイルは9月30日まで、10月31日付は10月30日までの記録を収める。IPv4のインスタンスは1,323,247件から1,323,907件へ660増えた。同じ期間のIPv6は111,247件から111,630件へ383増えた。二つの数字は、APNICの台帳を日付ごとに切り取った結果である。

APNICのREADMEによれば、レポートには公開Whoisデータベースと顧客向け非公開データベースの割り当てが入る。各行は経済コード、資源の種類、サイズで分類される。IPv4のvalueは範囲内のホスト数で、CIDRブロックとは限らない。instancesはそのサイズの割り当て件数だ。660はこのinstancesの純増であり、アドレス660個、稼働ネットワーク660件、顧客660社という意味ではない。

全体の数字だけを見れば、内訳の逆向きの動きが消える。phのIPv4割り当てインスタンスは1,546件増え、auは956件減った。合計は+660件だ。新規登録、訂正、分類変更のどれが動かしたのか、ファイルはグループ単位の変更履歴を示さない。ここから国境を越えた移転や事業者の設備増強を読み取る根拠もない。

APNICは、このレポートを世界の経路上で実際に広告されている割り当ての確定記録とは位置づけていない。RIR統計の交換仕様も、取引履歴を持たない日次スナップショットとして説明する。APNICは資源が現在どの国で使われているかを正確に割り当てられないとも明記する。経済コードは登録上の分類であり、利用場所を追跡する位置情報ではない。

運用者が知りたいのは、設備や経路が実際に使われているかだ。APNICの台帳が答えるのは、特定日に登録されていた割り当てインスタンスの数と内訳である。変化の原因を説明するにはグループ単位の変更履歴が、実際の経路を示すには登録資源に照合した日付付き経路観測が必要だ。

「APNICのIPv4が660増えた」は見出しとして軽い。単位を添えた「割り当てインスタンスが660件増えた」なら、台帳が言える範囲に収まる。設備計画の数字に使うなら、登録件数と経路観測を別々に並べるべきだ。丸い合計を一つの成長線にすると、予算が追いかける対象まで取り違える。

公式資料