要約
- COM(2026) 780は成立済みの規則ではなく、EU法令・政策を支えるために引用された規格や標準化成果物を対象とする提案である。
- 利用者の支払いをなくす構想と同時に、国内標準化機関の収入減が見込まれる。2028〜2034年の1億8,300万ユーロは確定した補填枠ではない。
無料公開の対象は「規格すべて」ではない
技術規格は民間の標準化組織が作成していても、EU法令への適合を示す際に実務上欠かせないことがある。European Commissionが10月6日に提出したCOM(2026) 780は、そのような規格へのアクセスと資金の関係を組み替えようとしている。規則1025/2012を置き換える提案だが、まだ欧州議会と理事会の通常立法手続きにある。
草案第5条が想定するのは、EUの法令や政策を支援するために引用された規格と標準化成果物だ。すべての技術規格を対象にするわけではない。欧州標準化組織と指定された代替組織が、EU域内で、閲覧・検索・印刷ができ、電子的にも利用しやすい形式で無料かつ無制限に公開する。第7条のEU Standards Platformは、対象規格の一覧、アクセス方法、実施状況や性能を示す場として提案されている。文書を提供する責任そのものは、規格を作成する組織に残る。
法令で引用された整合規格は、単なる技術資料とは限らない。製造者が法的要件への適合を示すとき、適合推定を与える場合がある。欧州連合司法裁判所は2024年、事件C-588/21 Pで、玩具安全に関する当該整合規格について、法的効果を持つことから開示に優越的な公共の利益があると判断した。この判断は対象となった規格と開示請求に関するものだ。あらゆる技術規格がEU法そのものになるという判示ではない。
費用の見積もりは政策の負担移転を可視化する。影響評価によると、整合規格の有料アクセスをなくせば、企業は年間およそ3,000万ユーロを節約し得る。一方、国内標準化機関の規格販売収入は年間最大3,000万ユーロ減る可能性がある。これはEU域内の規格売上の約15%、総収入の約6%に当たるという。両者は別個の推計であり、企業の節約額がそのまま機関への補助金になるわけではない。
影響評価は、特に影響を受ける国内機関へのEU予算による重点支援が必要になる可能性に触れている。また、2028〜2034年の活動費として1億8,300万ユーロという参考額を置く。これは2027年の標準化支出2,370万ユーロを基準にした推計で、売上減を補うために確保された基金ではない。European Commissionは、2027年以降の財源と規模は次期多年次財政枠組みの交渉と年次予算に左右されるとしている。
提案の基本設計は、CEN、CENELEC、ETSIを中心に据えつつ、期限を守れない場合など一定の条件下で代替標準化組織に依頼できる余地を設ける。こうした経路は遅延を避ける選択肢となる一方、並行作業による重複費用は企業に年450万ユーロかかると評価されている。アクセス拡大と、作成を担う制度基盤の維持は別々に扱えない。
草案は中小企業、消費者、環境・社会分野の関係者の参加も広げる。ただし、参加義務が必ずしも投票権を伴うわけではないと明記する。規格を読めること、作成過程に意見を出せること、内容を決める権限は異なる。最終的な法的枠組みを決めるのは欧州議会と理事会であり、技術文書の作成は標準化組織が担い続ける。
問われるのは、閲覧料をゼロにするかどうかだけではない。最終規則が、規格の作成・改訂・維持を支える財源と透明な実績報告を伴うかだ。現時点では、アクセス義務も、その制度への財政的影響も提案段階にある。
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