Summary

  • 欧州会計検査院が抽出した採択評価報告30件のうち、売上高、雇用、事業拡大の見込みを評価したのは3件だった。残る評価の「影響」点数には算定根拠の欠落があった。
  • 欧州委員会は最終報告と成果活用計画を受け取ったが、研究成果の体系的な評価や終了後の計画追跡を行っていなかった。義務付けられた七つの業績指標のうち六つには基準値もなかった。
  • 訪問調査対象の単独受益中小企業13社では10社が技術を概念から検証済みの革新へ進めた。技術の前進を認めた上で、販売につながるまでを別に測る必要がある。

終了の判定は、事業化の判定ではない

欧州会計検査院の特別報告24/2026が追ったのは、Horizon 2020の「産業リーダーシップ」分野だ。採択された研究には終点がある。受益者は最終報告に成果の普及と活用の計画を書き、資金提供側は事業の終了を確認する。ところが、企業がその後に製品を作り、顧客を獲得し、成長できたかという問いは、同じ手続きの中で継続的に確認されていなかった。

検査院によると、欧州委員会は事業終了時の研究成果を体系的に評価せず、提出された活用計画も追跡しなかった。実施中または終了後に、商業化と事業拡大の可能性を調べようとした証拠も見つからなかった。次の資金をどの成果に向けるか決めるには、成果の価値を見分ける記録が要る。書類を閉じる能力だけでは、その選択はできない。

この監査結果は全てのEU研究費に対する判定ではない。対象は明示された優先分野である。ただし、設計上の問題は過去形だけで終わらない。検査院は、提案段階の2028~2034年Horizon Europeも、事業終了時の確認に重心を置き、終了後の体系的追跡を予定していないと記した。提案が変わり、企業ごとの市場成果を追う制度が正式に示されれば、評価も変わる。

採択時の「影響」はどのように点数になったか

監査対象の採択評価報告30件では、予定される売上高、雇用、拡大可能性を評価したものは3件だけだった。別の15件は売上高と従業員数を点数に使いながら、計算方法を説明していない。残る12件には総合的な影響点があるが、各指標の理由や合算方法が示されなかった。30件という監査標本を全事業の割合に置き換えることはできない。それでも、採択の理由を後から検証する道筋が細いことは読み取れる。

共同研究はHorizon 2020資金の約8割を占めた。検査院は、中小企業が共同事業の調整役を務める例は少なく、研究の方向、知的財産、商業的利用を左右する力が限られていたと述べる。参加者名簿に載ることと、技術の出口を決めることは違う。助成が終わる時、その差が製品化を誰の仕事として引き受けるかに表れる。

現場に成果がなかったわけではない。訪問した単独受益の中小企業13社のうち10社は、概念を検証済みの革新へ進めた。一方、2社は成長がなく追加資金も得られず、7社は商業化の段階に到達しても市場での採用に至らなかった。三つの成功した商業化事例にはコーチングもあった。小さな訪問標本の数字を一般化するべきではないが、技術移転と市場の反応を混ぜれば、その両方から学べなくなる。

指標が見ないものは、予測が埋めてしまう

産業リーダーシップに義務付けられた七つの業績指標のうち、六つには基準値がなかった。委員会が集めたデータは主として実施期間中のもので、終了後の企業の経済成績や市場投入を継続的に捉えていない。事後評価に使われたマクロ経済モデルについて、検査院は、終了後の成果情報がないのに支援した革新の完全な商業的成功を仮定した点も問題にした。2040年までの予測曲線より先に、追跡すべき企業の記録がある。

制度には数えやすいものが多い。採択、参加、報告書、特許。その横に、顧客が対価を払った成果が何件あったのか、途中で止まった企業はどこかという欄がない。だから全案件が失敗したという話にはならない。支出の証拠と成功の証拠が同じ厚さで保存されていない、という話になる。報告書原本は終了後の成果を評価し、商業的可能性の高い事業を担った企業に後続支援を向けるよう勧告した。目標年は2027年で、実施済みという意味ではない。

次の公表資料で見たいのは、一定の事業群を終了後も追う記録だ。成果物の種類、利用権限を持つ企業、追加資金、売上と雇用、撤退した理由を、採択時の評価と結び直す。完了印は事務の仕事である。競争力を語るなら、印を押した後の事実を集める仕事が残る。

資料: 欧州会計検査院の公表ページ;特別報告24/2026原本。