要約

  • ASO Address Councilは2026年9月1日、RIR Governance Document Version 3の勧告草案をNRO Executive Councilへ提出した。現時点では採択済みの規則ではない。
  • 第3.7条は、Recognition Assessmentを提出したRIRの少なくとも3分の2が支持しなければ、ICANNは候補RIRを認定できないとする。
  • 認定によってサービス地域または収入が重大な影響を受けるRIRの反対勧告を、ICANNは分母から除外できる。
  • 除外の前に、書面による通知、重大性を含む理由、合理的な回答機会、回答の公正な考慮が必要である。除外後も評価は情報として考慮できる。
  • 公表時には、提出集合、計上集合、考慮集合を分けなければ、最終比率の意味を検証できない。
  • 認定分母の受領票は機密を暴かず、判断を置き換えず、計算が成立した経路だけを残す。

「反対を無視する」条文ではない

第3.7条を一言で「利害関係のあるRIRの反対を除く規則」と説明すると、重要な部分が二つ落ちる。第一に、除外は自動ではない。第二に、除外された評価は消去されない。

出発点は3分の2の要件である。候補RIRのRecognition Proposalについて、Recognition Assessmentを提出したRIRの少なくとも3分の2が支持する必要がある。ここで分母は、世界のネットワーク数でもRIR会員数でもない。実際に評価を提出したRIRの数だ。

ところが候補の認定は、既存RIRのサービス地域を分けたり、収入を減らしたりする可能性がある。その影響が重大で、影響を受けるRIRが反対勧告を出したとき、ICANNはその評価を3分の2の計算から外せる。既存機関の自己防衛が新規参入を自動的に止めないための安全弁と読める。

同時に、分母を変更する権限でもある。反対評価は提出済みの制度記録であり、後から存在しなかったことにはできない。そのため草案は、ICANNに書面通知と理由の提示を求め、重大な影響という判断を示させる。対象RIRには合理的な回答機会があり、ICANNは回答を公正に考慮しなければならない。最終的に計算から外しても、評価を情報として読むことはできる。

これは「無視」ではなく、同じ文書に二つの効力を与える構造だ。正式な閾値への効力は失う一方、実体判断への証拠価値は残り得る。

一つの数字の背後に三つの名簿がある

仮に5つのRIRが評価を出し、4つが賛成、1つが反対だったとする。すべてを数えれば賛成は5分の4だ。反対評価が第3.7条に基づいて除外されれば、計算上は4分の4になる。どちらも3分の2を超える。しかし公的な意味は同じではない。

後者を「RIRの全会一致」とだけ発表すれば、計上対象内の全会一致と、提出者全体の全会一致が混同される。さらに「番号資源コミュニティーの同意」と言い換えれば、制度上の評価を、すべての運用者や利用者の委任にまで膨らませてしまう。

必要なのは三つの名簿である。

  • 提出名簿:どのRIRが評価を出したか。
  • 計上名簿:どの評価が3分の2要件に入ったか。
  • 考慮名簿:どの評価をICANNが実体判断で参照したか。

除外がなければ三つは重なり得る。除外があれば分岐する。その分岐こそ、公表すべき統治上の事実だ。

公衆に機密収入や個人情報を見せる必要はない。必要なのは、元の分子と分母、除外後の分子と分母、そして除外評価が情報として残るかどうかである。比率だけを示す広報は、答えを示して変数を隠す。

開示と除外の間には判断がある

第3.3条は、評価するRIRに実際・潜在・外観上の利害の申告を求める。サービス地域や収入への影響、内部投票に参加した会員の構成、Numbering Communityの政策策定への参加、家族・金銭上の関係などが例示されている。

だが、申告は直ちに失格を意味しない。重大な影響を申告したからといって評価全体が信用できないわけではなく、反対したからといって私益目的だと断定することもできない。第3.7条の仕事はもっと限定される。サービス地域または収入への影響が、反対勧告を閾値から外すほど重大かをICANNが判断することだ。

したがって公開記録には、開示から除外までの橋が要る。利害の種類、適用した重大性基準、証拠の種類、除外検討を始めた主体、通知日、回答期限、回答の有無、回答を受けた結論を並べるべきだ。単に「conflict」と表示すると、開示、重み付け、回避、分母変更が一つに潰れる。

第3.4条は提案と評価の公開を原則とし、機密情報の編集を認める。またICANNが理由を示して再評価を求め、その応答を公開できる。第3.5条では、重大な提案変更は原則として手続をやり直す。つまり受領票には版も不可欠だ。ある版について得た評価と分母を、重大に変わった別版へ持ち越してはならない。

認定分母の受領票

最小限の受領票は、候補提案の識別子と正確な版、評価提出RIR、各勧告と開示状態、元の分子・分母から始まる。除外が検討された場合だけ、発議者、書面通知日、重大性の規則と証拠類型、回答期間、回答状態、処理結果を加える。

結論欄には、最終計上集合、分子・分母、除外評価の情報上の位置付け、ICANNの決定理由、訂正、後継版、手続再開の有無を置く。保護すべき数字や氏名は編集できるが、どの種類の資料をどの規則で判断したかまでは消すべきではない。

これは新しい承認機関ではない。外部の人気投票も、RIRの順位表も作らない。ICANNの重大性判断を置き換えず、その判断が最終分数にどう接続したかを後から読めるようにする。

Lu Hengが多者参加モデルについて指摘する核心は、参加者と本人から権限を授かった代理人を混同しないことにある。この草案が数えるのは、特定の制度手続に沿ったRIRの評価である。ASN、会員、顧客、利用者一人ひとりの意思ではない。分母の公開は代表性の限界を解消しないが、限定された測定値を普遍的な委任に見せる誤りを防げる。

9月1日に公表されたのは勧告草案である

NROは9月1日、勧告草案と変更理由を公表し、今後の意見提出機会は別途案内するとした。NRO Executive Councilが次の工程を調整する。変更理由は、従来より低い3分の2の基準と、重大な利害を持つRIRの反対評価を除外しつつ情報価値を残す仕組みを説明している。

確認した資料には、Version 3が採択されたとの記録も、この条文を使った候補認定、評価除外、重大性判断の実例もない。今問うべきは過去の不正ではなく、最初の適用前にどの記録形式を用意するかだ。

ICANN87 Prep Weekでは10月6日にRegional Internet Registry Governance Updateが予定されている。草案の状態や第3.7条の説明を確認する機会にはなる。ただし会合、スライド、参加者数は採択行為ではない。行為主体、対象版、権限根拠を明記した次の記録が必要になる。

出典

  1. NRO — RIR治理文書の勧告草案、理由報告、今後の手順
  2. NRO — RIR Governance Document Version 3
  3. NRO — Version 3の新旧対照版
  4. NRO — Version 3の変更点と理由
  5. NRO — ASO ACが勧告草案をNRO ECへ提出
  6. NRO — Internet Coordination Policy 2
  7. ICANN ASO — ASO Memorandum of Understanding
  8. ICANN — ICANN87 Prep Weekの日程
  9. Lu Heng — The Multi-Stakeholder Mirage