要約

  • Walking Papersは紙の端のコードを使い、書き込み済みの地図をスキャン後に地理的位置へ戻して編集に使えるようにした。
  • Field Papersは複数ページの地図帳や作業履歴を備えた一方、画像処理と転記、サービスの維持には担当者が必要だった。

ウェブ地図の「印刷」は、画面の外で話を終わらせるボタンにも見える。Walking Papersでは、そこから別の作業が始まった。紙を持って歩き、気づいたことを書き、帰ってきた紙をもう一度ウェブにつなぐ。

2009年6月5日のOpenStreetMap公式紹介は、その往復を説明している。地図を印刷して書き込み、スキャンすると、紙の端にあるコードを使って画像の地理的位置を特定できる。編集者はその画像を下敷きに、OpenStreetMapの道具で情報を描き込む。紙に帰り道が付いたわけだ。

歩く仕事と入力する仕事

現地での記録にはGPS機器がなくてもよかった。地図に直接書けるので、観察とパソコンでの編集を別の時間に行える。戻ってきた画像を人が読み、必要な情報を転記することで、鉛筆の線が共有地図の編集につながる。

当時の紹介には、プリンターやスキャナーを持たない人への郵送による印刷・読み取り支援まで記されていた。ウェブへの参加に封筒が登場する。機器を持つ人が手を貸せるよう、作業を分ける余地がそこにあった。

2012年5月30日、StamenはCaerus AssociatesとField Papersを発表した。複数ページの地図帳を作り、外で書き込み、各ページを撮影して取り込める。地図の表示形式も選べ、白黒ならインクを節約できた。地図帳ごとにページと編集・活動履歴が用意され、同僚と作業を共有できるようになった。

紙が出かける前に、サーバーが詰まる

2013年7月の開発報告では、USAIDが現場利用で地図帳の生成に時間がかかる問題に直面し、性能改善を求めたことが語られている。現地での道具は鉛筆でも、出発前にはオンラインの処理が待っていた。

開発者は処理の順番を管理する仕組みを導入し、失敗したまま残っていたタスクを片付けた。仕事を終えていない処理が、場所だけは明け渡さずにいたのである。完了時に音を鳴らす待機画面の案もあったが、改善が進んでその画面は不要になったと報告している。地図をトースターのように鳴らす出番は来なかった。

同じ版では、読み取った画像からiDやPotlatchの編集画面へ移るリンクが追加された。仲間が同じ地図帳を複製すると、活動履歴に残る。OpenStreetMapの内容を更新した後は、場所、ページ構成、背景地図を保ちながら新しいデータで地図帳を更新できた。配る作業と、次の調査用に新しくする作業が扱いやすくなった。

帰り道を保つ人たち

2023年3月のOpenStreetMap USとStamenによる共同発表は、Michal Migurskiが2009年にWalking Papersを作った経緯を振り返る。2010年のハイチ地震後の現場経験が、複数ページの地図帳を求める動きにつながったという。発表は同時に、Field PapersをOpenStreetMap USの支援対象に迎え、移行と継続的な保守を計画すると伝えた。

この後年の引き継ぎも、紙の往復には欠かせない。印刷物はポケットに入れておけるが、生成し、画像を受け取り、編集へ戻すサービスには世話をする人がいる。外に持ち出しやすい道具を作ることと、戻ってくる場所を保つこと。その両方が、鉛筆を共同作業の道具にした。