要約

  • RFC 4620は、DNSやグローバル経路がないリンクでも使えるよう、IPv6の診断ツールからノード自身へ名前やアドレスを直接尋ねる仕組みを示した。
  • ノードは回答を拒否できた。返答はローカルな自己申告であり、認証済みの身元や権威ある台帳ではない。

分析

自動設定されたIPv6アドレスが通信できても、それだけで運用者が相手の機器を認識できるわけではない。リンクの立ち上げや障害調査では、その区間にDNSがないことがある。リンクローカルアドレスが公開DNSに登録されるとも限らない。それでも、応答中のノードが自分にどの名前やアドレスを関連付けているかを知ることは、診断に役立つ場合がある。

2006年8月、Michael CrawfordとBrian HabermanはRFC 4620でこの問い方を記述した。文書の位置付けはExperimentalで、用途は診断、デバッグ、ネットワーク管理に限定された。グローバルなインターネット上の名前とアドレスについてはDNSが引き続き権威ある情報源だとも明記した。つまり、これは世界規模の新しい名前台帳ではない。DNSやグローバル経路を使えないリンクで、運用者が情報を確かめるための仕組みだった。

メッセージはICMPv6を使い、照会をタイプ139、応答をタイプ140とした。照会には宛先ノードと質問対象があり、二つのアドレスは異なっていてもよい。定義されたQtypeは、データを求めないNOOP、ノード名、IPv6アドレス、IPv4アドレスを扱う。アドレス照会には範囲を選ぶフラグがあり、全アドレスを求めるかどうかも指定できた。診断ツールは稼働中の端点が何を報告するかを尋ねられるが、その答えが全インターフェースを網羅するとは限らない。

回答拒否も正式な状態だった。応答コードは成功、拒否、未知のQtypeを区別する。成功応答であってもデータが空の場合がある。このため、無応答、拒否、未知の照会、空の成功結果は別々に扱う必要があり、どれも単独ではノードの不存在を証明しない。応答側は宛先が自分のユニキャスト/エニーキャストアドレスか、自分が参加したリンクローカル・マルチキャストグループかを確認する。ローカルポリシーによる破棄も認められた。

64ビットのnonceは要求から応答へコピーされ、メッセージの対応付けと、盲目的な偽造の難易度を高める助けになった。しかし、通信を盗み見できる相手には効かないと文書は警告した。通信の真正性が必要ならIPsecを使い、セキュリティ上の判断には別の認証手段を加えるべきだとした。

開示にも制約がある。既定設定ではグローバルスコープの送信元からの照会を拒否し、応答レートも制限するよう勧告した。IPv6のプライバシーアドレスについては、その開示を制御できるようにし、通常は応答に含めない方針を推奨した。IANAは現在もタイプ139と140を登録しているが、番号の登録はホストが応答する証拠ではない。RFCはKAMEやUSAGIのping6を診断利用の例として挙げた。Nmapにも現在この照会を行う探索スクリプトが文書化されている。いずれもツールの機能を示すだけで、ネットワーク全体での普及率は示さない。

RFC 4620の歴史的な貢献は限定的だ。ノードの自己申告を診断に使えるようにしつつ、回答の任意性と証拠としての弱さを残した。応答から機器の管理者を証明したり、名前を組織に帰属させたり、権威ある資産記録を作ったりすることはできない。

出典