Summary

  • LACNICの11月2日付累積移転ファイルには1,922行ある。IPv4の移転範囲の境界が null なのは、2026年1月7日付の UNIVERSIDAD AUTONOMA DE SAN LUIS POTOSI から DIGY NETWORKS への1行だけだ。
  • この行は1月9日付ファイルで初めて現れ、297暦日後も元の範囲と移転先の範囲を示す四つの住所欄が空のままだ。LACNICの政策文書は公開移転記録に移転アドレスを載せるとしている。

売り手と買い手、日付まで記した売買台帳が、売った土地だけを記さなかったらどうなるか。LACNICの11月2日付累積JSONには、ネットワーク資源で同じことが起きている。2026年1月7日の行は、移転元を UNIVERSIDAD AUTONOMA DE SAN LUIS POTOSI、受け手を DIGY NETWORKS と記す。双方の国コードは MX、登録機関はLACNIC、種類は RESOURCE_TRANSFER。見出しだけなら取引記録として整っている。

肝心の ip4nets.original_set を開くと、開始アドレスも終了アドレスも null。 ip4nets.transfer_set でも同じ二つの値が null だ。ASNとIPv6の配列は空で、この行から別の資源番号を取り出すこともできない。DIGY NETWORKSの名が他の行にあったとしても、この行の欠けた範囲を推定して埋めてよい理由にはならない。共通の案件番号も示されていない。

欠損の長さは公式ファイルだけで追える。1月7日版と1月8日版にこの行はない。1月9日版では四つの境界が空の状態で登場する。11月1日版でも空欄は残った。初出から11月2日まで297暦日。その間、累積行数は1,589から1,922へ増えた。最新ファイルで移転IPv4範囲に空の境界を持つ行は、この1行だけである。

1月9日版には、別にもう1行、範囲が空の記録があった。2025年12月30日付で、現在のファイルには当時と同じ日付・当事者の組み合わせでは見当たらない。なぜ消えたかを示す公開の案件番号はない。この別件に説明を付け足すことも、残った大学からDIGY NETWORKSへの行と同一視することもできない。確認できるのは、累積表の過去の内容は動き得るのに、今回の空欄は残り続けたということだ。

LACNICのPolicy Manual第2.21版第2.3.2.18.4節は、公開移転記録に日付、移転元、受け手、移転アドレスを載せると定める。第2.3.2.18.1節の最小 /24、第2.3.2.18.6節の同一アドレスの1年間再移転禁止も、範囲が特定されて初めて外から確かめられる。この行を起点に現在の登録先をRDAPで調べようとしても、入力すべきプレフィックスがない。

LACNICが範囲を明記した訂正ファイルか、その範囲を示す公開案件資料を出せば評価は変わる。今問われているのは当事者の行動ではなく、登録機関が発行する記録の検証可能性だ。