要約

  • ARINは2026年9月30日時点で9,673組織がRPKIに登録し、前年比27%増と発表した。一方、Hosted RPKI利用組織のおよそ7社に1社はROAを作成していない。
  • 登録はサービスの入口だ。署名付きROAは起源ASN、プレフィックス、最大長を指定する。資源のカバー率やルート検証は、その先で測る数字になる。

登録ボタンの先に、もう一つの作業がある

ダッシュボードに「登録済み」と表示されても、どのASNがどのプレフィックスを広告してよいか、インターネットに一件も伝わっていないことがある。ARINの成長率の横に置かれた数字は、その隙間を見せている。

ARIN 58で発表された9,673組織という数字は、9月30日の時点値だ。前年比27%増。その直後に、Hosted RPKIの利用組織の約7社に1社はROAを一件も作っていない、と説明された。登録カウンターは伸びているが、かなりの数のアカウントが「どの経路を誰に許すか」を公開する段階に届いていない。

ARINの2025年年次報告は、12月31日時点で8,140組織の登録を記録し、98%がHosted RPKIを利用していた。2025年の新規登録は1,839件で、2021~25年の年別集計で最大だった。2026年4月のARIN 57では8,403組織、登録組織の約15%にROAがないと報告された。そして9月末には9,673組織となった。

この伸びは、サービスに参加する組織の数を示す。広告中の資源のうち、実際の起源と一致するROAがどれだけあるかまでは示さない。4月の説明は「登録組織」、10月は「Hosted RPKI組織」と、分母の言い方も異なる。10月の発表には「およそ7社に1社」の正確な分子と分母がない。概数から正確な組織数を算出することはできず、二つの時点を結んで比率が下がったとも言えない。

ROAは登録証ではなく、ルートへの指示書

RPKIの出発点はリソース証明書だ。HostedモデルではARINが認証局を運用し、利用組織がARIN Onlineからルーティング情報を登録する。ROAが指定するのは、起源ASN、IPプレフィックス、最大プレフィックス長の三つ。指定範囲をそのASNが起源として広告することを認める。

サービス登録は、ダッシュボードに入り証明書を申請するところまでだ。担当者はさらに、自組織が扱うプレフィックスを確認し、起源ASNを一つまたは複数選び、最大長を決め、値を確認してROAを送信する。ARINのリポジトリは5分ごとに公開される。ARINのFAQは、新しいROAがルーティング判断に反映されるまで通常30~60分かかるとしている。

Hostedなら認証局とリポジトリの運用はARINに任せられる。どのASNがどの経路を起源として広告するかは、ネットワーク運用者が決める。ROAのないHostedアカウントには、公開される起源の宣言がまだない。

その後、依拠者(relying party)がリポジトリを取得して内容を検証し、各ネットワークはその結果を経路判断に使う。外部で動くのは署名付きのデータであり、管理画面の登録者数ではない。

分母を出せば、支援の場所が見える

「7社に1社」は見出しになる。しかし、実務上は次の問いに答えてくれない。その組織は何個のアドレスを持つのか。広告中のプレフィックスはいくつか。資源は直接保有か、それとも上流プロバイダーの管理下にあるのか。

ARINの資格要件はこの違いを重要にする。Hosted RPKIを使えるのは直接のリソース保有者だ。再割り当て・再委任された資源を下流組織の証明書に追加することはできず、上流プロバイダーが代理でROAを提出する必要がある。組織数だけでは、ROAのないアカウントが広告中のブロックを持つのか、未使用の資源を持つのか、プロバイダーの認可を待つのか分からない。

ARINはすでに、登録数より運用結果に近い数字も公表している。2026年4月の報告では、同地域のRPKI対象IPv4ブロックの50%がROAでカバーされ、ARIN登録のうちインターネットで広告されているIPv4ブロックの54%がRPKI Validだった。前者は対象資源のカバー率、後者は観測された広告の検証結果だ。登録数だけでは両方を語れない。

有用な採用ダッシュボードなら、登録の後を段階別に追う。証明書を発行したか、最初のROAを作ったか、対象プレフィックスをカバーしたか、広告されたプレフィックスが期待どおり検証されたか。それぞれに分母があれば、作業が止まる場所も見える。

「採用済み」は歓迎画面の後で決まる

ARINのFAQはRPKIを任意のサービスと説明する。同時に、商談をまとめる前にROAの作成を求めるプロバイダーが増えているとも記す。採用の判断は組織に残るが、取引先との関係がタイミングを決めることはある。

最初のROAで保守作業は終わらない。プレフィックスは変わり、ネットワークは起源を追加し、資源は移転される。ARINによれば、移転後は対象資源と関連ROAが以前の証明書から削除される。Hosted証明書は自動更新され、ROAも90日ごとに自動更新される。更新機能は既存の認可を維持する。新しいプレフィックスの追加や、変わった起源ASNの修正までは代わりに考えてくれない。

採用を最もよく表すのは、アカウントの総数ではない。対象となる広告済み資源のうち、運用者が意図する起源ASNとプレフィックス長に一致するROAがどれだけあるかだ。公表時には分母、観測日、下流割り当ての扱いも必要になる。そうでなければ「採用率」は、会場に入った人数だけを数え、会場で仕事が進んだかを見ない。

ARINは最初の登録を簡単にし、約1万組織を呼び込んだ。次の問いは自らの数字に表れている。何組織が最初のROAまで進み、その認可は広告中のアドレス空間をどれだけカバーするのか。答えが出れば、登録件数の節目は運用の実績に変わる。次のRPKI報告にも、もっと意味のある祝杯の理由ができる。

一次資料:ARIN 58 2日目の記録 · ARIN 57 2日目の記録 · ARIN 2025年次報告書 · Hosted RPKIガイド · ROAガイド · RPKI FAQ · ARINのRPKI説明。