要約

  • APNICの2025年報はルートサーバー八台の配備を目標とし、実績を四台とした。M-Rootのニュージーランド測定は51.7ミリ秒から13.6ミリ秒へ変化したが、スリランカの測定は「利用不可」とされる。
  • APNICは候補地の発掘と事務支援を担い、M-Rootの運用・配備にはWIDE ProjectとJPRSが携わる。2026年にはAPNICの事務支援をJPRSへ移す方針だ。測定記録も引き継ぎの対象となる。

APNICの2025年報を開くと、同じ表の中に二つの顔がある。ニュージーランドのM-Rootは、RIPE Atlasを使った応答時間が導入前51.7ミリ秒、導入後13.6ミリ秒。スリランカの欄には数値がなく、測定を利用できないと明記されている。APNICは両国での配備に事務支援を行ったと書く。仕事の記録と効果を確かめる記録は、同じ欄ではない。

その表の上段はさらに厳しい。2025年の目標はルートサーバー八台の配備、実績は四台。新規候補地は六か所を目標とし、実際にはアジア太平洋で四か所、域外で三か所を見つけた。候補地の合計七か所を、設置済みの四台と足し合わせることはできない。紹介した拠点とサービスを動かす装置を、APNIC自身が別の指標として報告している。

M-Rootの応答はDNSの根を支える。APNICが説明した2020年の協力枠組みでは、WIDE Projectがルートサーバーを運用し、JPRSも共同運用と配備を担う。APNICは設置先の探索と展開の後押しをする。候補先に声をかけ、機器を置き、ネットワークへ告知し、外から応答を測る。それぞれ違う主体が署名できる仕事だ。年報はニュージーランドの最後の段階に数字を置き、スリランカでは置けていない。

51.7から13.6ミリ秒という変化は、読者が条件を問い返せる具体値だ。年報の表には測定に使ったプローブ群、観測期間、応答の分布が載っていない。まず必要なのはニュージーランドの測定条件、次にスリランカの同等の前後観測である。後者に日付と方法が加われば、二つの現場で何を確かめたかを比較できる。

時間が重要なのは、担当の机が替わるからだ。APNICの2025年9月の発表によれば、2026年は候補地の発見と紹介に重点を移し、従来の事務支援はAPNIC Foundationの協力を得てJPRSへ引き継ぐ。根サーバーそのものの運用者はWIDE ProjectとJPRSである。サイト候補を紹介する記録と、配備後の測定資料をつなぐ人が変わる。

2026年1月のAPNIC活動報告は、ニュージーランドやスリランカを含む各地でM-Rootと測定基盤の展開に触れる。現場の作業を示す資料だが、2025年報のスリランカ欄に測定値を足すものではない。四台がどの拠点へ、いつ入り、どの観測に結び付いたのか。次の年報には、その対応表が欲しい。

八台と四台は工程の数字。ニュージーランドの二つのミリ秒値は観測の数字。スリランカの空欄は次に誰が測るかという仕事の印だ。引き継ぎ書にサイト名だけが残れば、後任は設置先を知っていても成果を確かめる手順を探し直すことになる。

出典: APNIC 2025年報、開発業務の移行発表、M-Root協力枠組み、2026年1月の活動報告。