要点
- Digital Networks Act案は、事業予定国の一つへの届出と、提出から1週間以内の確認を提案している。確認には、対象国で適用される条件や権利・義務も含める。
- 周波数や番号の使用権、各国の義務と執行権限は残る。法案は審議中であり、1週間でネットワークを開業できる制度ができたわけではない。
届出を受け付けました、と返すだけなら短い通知で済む。だが、EUの通信事業向け「単一パスポート」で規制当局に求められる返答は、それより重い。事業者が進出を予定する国々について、一般認可の条件と、それに伴う権利・義務まで示す。提出から1週間以内に、である。
欧州委員会のDigital Networks Act案を読むと、書類を減らすために誰の仕事が増えるのかが見えてくる。事業者の入口を一つにしても、その先にある各国の制度を誰かが整理する必要はなくならない。
確認書だけでは電波は使えない
第10条では、事業者は実際に事業を行う予定の国のうち一つを選び、その規制当局へ届け出る。当局は新設予定のOffice for Digital Networks(ODN)へ通知し、ODNが他の提供予定国へ不当な遅滞なく知らせる。新たな国に進出する場合は、既存の提供国にも情報が伝わる仕組みだ。
受付当局の確認書は、当初の進出なら対象国全体、拡大なら追加される国の条件を説明する。理事会に送付された公式法案は、確認後の活動開始を認める一方、必要な使用権に関する規定は別に残す。確認書が届いたことと、周波数や番号を使う権利を得たことは別であり、設備が整った証拠にもならない。
ここで現在の制度との違いを取り違えると、改革を過大評価してしまう。現行の欧州電子通信法典の第12条第3項は、一般認可に基づく権利の行使に先立ち、独立した行政決定を要求することをすでに禁じている。届出が必要な場合も、必要な使用権の規定を別として、届出後に活動できる。今回の中心は、初めて事前許可をなくすことではなく、国境をまたぐ届出と情報の扱いを組み替えることにある。
国別の条件を、古くしない仕組み
法案第9条には、事業者に該当する範囲で、強靱性、緊急時の通信、サイバーセキュリティー、適法なデータへのアクセス、ネットワークの完全性や相互接続などの条件が残る。周波数と番号には追加の条件がある。番号に依存しない個人間通信サービスはこの制度の対象外で、あらゆるデジタルサービスを覆うパスポートではない。
その説明を支えるのが、各国に置く単一連絡窓口だ。国内の法令や手続きに関する情報を更新し、ODNとやり取りする。BERECは条件の一貫した適用と届出様式について指針を策定する予定で、期限はいずれも規則の発効から6カ月とされる。法案が公表された時点から数える期限ではない。
手数料もなくならない。第12条は回収できる行政費用の範囲を制限し、客観的で透明かつ比例的な負担を求める。一定の小規模な活動などには免除があり、徴収当局は毎年の費用と収入を公表し、差額を調整する。一度届け出れば負担がすべて一つにまとまる、という約束ではない。
罰則の窓口まで一つになるわけではない
届出先の当局は認可条件への違反を処分できる。重大な違反では、必要に応じて協議した上で、パスポートの対象国で活動する権利を取り消すことも想定されている。
一方、サービス提供国の当局も、自国の安全保障や公共の利益に重大な悪影響を及ぼすおそれがある違反について、自らの管轄内で制裁を科す余地を持つ。加盟国が適用法を執行する権限も維持される。届出先を選んだからといって、他国の当局との関係が消えるわけではない。
この分担は、すでに交渉の争点だ。6月2日の理事会進捗報告には、手続きの複雑化、法的不確実性、有利な管轄の選択、監督と執行の分担への懸念が記録されている。6月9日の閣僚会合でも、全体の目的は広く支持されたが、パスポートにはさらに検討が必要とされた。運用後に問題が発覚したという話ではなく、運用前に解くべき問題が残っている。
ODNには届出の公開データベースも設ける予定だ。受付当局は少なくとも2カ月ごとに情報を更新する。ただし、そこに載るのは届出であって、サービスの開始や全条件への適合を証明する記録ではない。発効から6カ月後という提案上の移行期日より前の届出は、やり直し不要となる。既存サービスには新制度を選択でき、新たな展開にはパスポートの手続きが適用される。
10月19日に確認した欧州議会の審議記録は、委員会の決定待ちとなっている。欧州委員会の説明が掲げる簡素化や規模拡大の利益は、まだ実測された成果ではない。
Lu HengのNote 64は、インターネットの調整について、共有する技術的な規則を小さく保ち、地域の判断と自主的な採用を重視する。何を共通化するかを考える比較材料にはなるが、EU法でも、委員会の意図を示す資料でもない。法的義務が任意になるわけではないのだ。パスポートの使い勝手を決めるのは、届出の少なさに加え、届いた返答を読んで次に必要な作業が分かるかどうかだろう。
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