Summary
- Dmytro Shypovalovは、SR経路のカウンターを別のサンプラーで読み、計算した流量を経路計算器へ渡す試作をNANOG 98で示した。
- スライドの12本はデモの稼働表示であり、本人はより完成した仕組みの本番稼働を2027年の希望としている。
経路の状態をルーターから取り去れば、ネットワークは軽くなる。その代わり、帯域を自動で変える装置には「いま何Gbps流れているか」を誰かが教えなければならない。Dmytro ShypovalovがマイアミのNANOG 98で示したのは、Segment Routingの利点が残したこの空席の埋め方だった。
ルーターはSRの経路カウンターを出す。サンプラーがgNMIで値を受け取り、設定した間隔で流量に直す。その値をBGP-LSのSRポリシー情報としてPCEに知らせ、PCEが帯域予約とセグメント列を計算し直す。従来のMPLS-TEには自動帯域調整の仕組みがあり、RFC 8733も一つの方法を記す。SRの無状態化は計算の必要そのものをなくしたわけではない。
試作画面の数字は具体的だ。一つのポリシーでは50.4秒間の6回のサンプルから39.924Gbpsを算出。別の画面には12本のサンプリングポリシーが稼働中と表示され、例示された三つの予約値は約30Gbpsだった。これらは機構の実演値で、顧客網の長期運用成績ではない。
Shypovalovは、実演で捨てた情報も明かしている。算出済みの流量だけをPCEに送れば、元のカウンターの履歴や傾向は残らない。PCEは初期案ではサンプルの取り方を決めず、インターフェースやSIDのカウンターも一緒に見られない。短いバーストを長期の増加と読み違えれば、正しい計算式でも間違った経路変更を出せる。
次の設計では生のテレメトリーを保存し、PCE側でサンプルと他の計数値を突き合わせる構想だ。複数のPCEが区別できるポリシーを出し、全て失えば最短経路へ戻る、という運用案も示した。ただしスライドに本番障害の追跡記録はなく、最後のページは2027年中の本番稼働を希望として書いている。
この発表の強みは「動いた」という表示より、どこから先がまだ設計なのかを自ら示した点にある。ルーターの状態を減らした後、測定間隔と経路変更の権限は外部の制御系に移った。そこで起きる判断を記録し、止め、戻せるか。12本の緑の行より、運用者にはその答えが要る。
出典:NANOG 98の講演ページ · 発表者の原資料 · RFC 8733 · RFC 9857。
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