要約

  • AnalogXは2004年6月9日、ITRの性能指標と、利用者のパソコンから実行するping、tracerouteをまとめたITR Clientを発表した。
  • 残るバージョン1.02の説明書には測定条件を変える設定が並び、更新履歴にはpingグラフの不具合修正も記されている。

パソコンの画面右下は、もともと小さな用事の集まる場所だった。時刻を知らせ、何かを通知し、クリックを待つ。2004年、AnalogXはそこにインターネットの様子を見る仕事まで持ち込んだ。ITR ClientのアイコンはInternet Traffic Reportの性能指標を表示し、対象全体か、選んだ地域かを切り替えられた。時計の隣に置くには、なかなか大きな担当区域である。

2004年6月9日の発表を読むと、出発点は身近だ。ITRと同じようなテストを自分のパソコンでも行いたい、という要望があった。多くの利用者にとって、コマンドラインの道具は使いやすい答えではなかった。そこでpingとtracerouteを図で操作できるソフトにまとめ、通知領域の数値表示を添えた。

「遅い」と感じた場所から調べ始められる。これが便利だった。外部の報告を眺めることと、手元のパソコンから測定することが、一つの道具の中でつながる。観測する場所が変われば、調べられる問いも変わる。

グラフの下が仕事場

現在残っているバージョン1.02の説明書は、pingのグラフを紹介したあと、その下の最小値、最大値、平均値に目を向けさせる。見栄えのよい曲線の下に、地道な働き手が控えていた。

この数値は、結果を誰かに渡すときに役立つ。気になる形のグラフだけでは、次に見る人は何を試したのか聞き直すことになる。調べた宛先や時刻、設定も残っていれば、観測を具体的な状況に置ける。画面を見やすくすることと、測定の条件を追えることは、両方必要だ。

説明書には、宛先までに通過するコンピューターを表示するtracerouteも登場する。経由するネットワーク数の上限、pingの回数、コンピューター名や都市を調べるかどうかを設定できる。利用者はボタンを押すだけの役から、調べ方を選ぶ役へ少し踏み込む。

2004年の発表で確認できるのは、ping、traceroute、通知領域の指標を組み合わせたことだ。細かな設定の一覧は、残っている1.02の説明書に属する。ソフトには更新があり、説明書にも積み重なった時間がある。

測る道具も故障する

製品ページの更新履歴には、1.01でpingグラフの失敗時の問題を修正したとある。続く1.02には再ビルドとVista関連の修正が記されている。個々の版の公開日は、そこには付いていない。

地味な一行だが、診断ソフトの役割をよく表している。測定がうまくいかなかったとき、その状態を読み取れるように表示する必要がある。表示の意味が曖昧なら、利用者はネットワークより先に計器を疑うことになる。病院へ行ったら、まず体温計の診察が始まるようなものだ。

地域全体の指標と、自分のパソコンから特定の宛先へ向かう観測にも、それぞれの担当範囲がある。前者の変化は調べるきっかけになり、後者は調べ始める場所を与える。同じ画面に並べても、観測の出発点は消えない。

ITR Clientの面白さは、この大きさの違う二つの仕事を小さなデスクトップソフトに収めたことにある。ウェブサイトを開き直さず様子を見られる気軽さが入口になる。その先で利用者は、自分の側から問いを投げられる。

当時のITRの数値、手元の測定、問い合わせ対応を同じ時刻で照合できる記録は、原資料には残されていない。何分の節約になったかを計算する材料は足りない。確認できるのは、調べるための入口を普通のデスクトップへ移す設計だ。

接続事業者に「遅い」と伝えるだけなら、聞き取りは最初から始まる。宛先と条件の付いた結果を渡せれば、次の質問を絞り込める可能性がある。時計の隣のアイコンが引き受けた本業は、利用者が問題をもう少し詳しく話せるようにすることだった。