要点
- 公開買付けの結果として公表されたPosteの持分は85.823%。10月1日の発表では、その後の市場買付けを含めて86.952%となった。
- 応募者の対価はTIM株一株につき現金1.97ユーロとPosteの新株0.218株。TIMを持ち続けた人と、新たにPoste株を受け取った人では、今後の業績を見る視点が分かれる。
買収のニュースを追っていたら、いつの間にか別の会社の株主になっている。Poste ItalianeによるTelecom Italia(TIM)の公開買付けでは、それが対価の仕組みだった。
改善後の条件は、TIM株一株につき現金1.97ユーロとPosteの新株0.218株。仮に1,000株を応募すれば、1,970ユーロと218株を受け取る計算になる。手元に現金が増え、投資先の一部はPosteへ移る。売却後にも、株主として付き合う事業が残るのである。
経営権と完全買収の間
2026年9月29日の最終結果によると、公開買付けを経たPosteの持分は85.823%。再開された応募期間分の決済日は10月2日とされた。残存株式の強制取得権や共同手続きの条件には届かず、応募しなかった人はTIMの少数株主として残った。
Posteはさらに市場で買い増した。10月1日の発表では、既保有株式と応募株式に市場買付けを加えた持分は86.952%となる。85.823%は公開買付けの結果、86.952%は追加取得を織り込んだその時点の公表値、と日付を添えて読む数字だ。
TIMの取締役会は9月30日、Posteによる指揮・調整の下に入ったことを確認し、両社の関係や情報のやり取りを定める規則を承認した。経営の中心は移り、少数株主の権利や規制上の制約は引き続きその枠組みを形作る。
Posteが買った事業は、すでに姿を変えていた
Poste株を受け取った人もTIM株を持ち続けた人も、まず知っておきたいのが固定網の分離である。2024年7月のNetCo取引完了発表では、固定網インフラと卸売事業がFiberCopに移され、KKR傘下のOptics BidCoがFiberCopを取得した。売却の範囲はこの事業であり、TIMが持つ通信網全体とは区別される。
ここには、似て見えて役割の違う二つの金額がある。条件付きの追加対価まで含めた取引価値は最大220億ユーロ。調整と分離費用を反映した純金融負債の削減額は138億ユーロだった。前者は売却対象の値付け、後者は借金がどれだけ減ったかを示す。
顧客へのサービスは、分離後もネットワークとの接点を必要とする。TIMとNetCoが結んだサービス契約は15年間で、さらに15年間の更新が可能だ。価格は市場価格、最低購入義務はなし。この条件の下で利用量と費用がどう動くかが、固定網を外に出した後の採算を読む手掛かりになる。
返ってきた10億ユーロと、毎月稼ぐお金
その事業の足元は、2026年上期決算に表れている。売上高は68億3,000万ユーロ。6月末の調整後純金融負債は、リース調整後の「after lease」指標で72億8,500万ユーロだった。
株主向けフリーキャッシュフローはリース支払い後で6億5,000万ユーロのプラス。目を引くのは、そこに過去の免許料の返還が含まれる点だ。返還による純金融上のプラス効果は約10億ユーロに上る。返ってきたお金は使える。しかし、翌年も同じ額が戻ってくる前提で、毎月の通信事業を評価するわけにはいかない。
そこで、支配株主の名前から現金の使い道へと問いが移る。通信事業は継続的にいくら稼ぎ、その資金を配当、投資、債務返済へどう振り向けるのか。TIMに残った株主には、その答えが持分の価値に関わってくる。
比べる前に、一株の単位をそろえる
株式そのものにも変化があった。貯蓄株の普通株への転換は1月に承認され、実施されたのは5月だ。転換結果の通知によれば、93.5%が任意転換を選択した。貯蓄株一株に対して普通株一株と税引き前0.12ユーロ、強制転換では同0.04ユーロという条件だった。
その後、6月に十株を一株とする株式併合が実施された。「一株」と書いてあっても、春と秋では単位が十倍違う。転換時の支払額と買付けの金額を比べるには、まずこの縮尺をそろえる必要がある。
買い手のPosteでも株数が増えた。10月2日の増資発表によると、再開期間分の支払いだけで8,937万5,988株を新たに発行し、普通株数は16億1,208万9,986株となった。新株は、現金と並ぶ買収の支払い手段である。Posteの株主が評価するのは、取得した事業が生む利益と、その利益を分け合う株数の両方だ。
判断材料として公表された経営陣の行動や意見も、時点と目的を添えて読むと整理しやすい。TIMは9月7日、CEOのPietro Labriolaと主要幹部が保有株式を応募したと発表した。開示された事実は応募であり、個人の相場観や今後の報酬制度は別途確認する事項となる。
取締役会はそれに先立つ7月18日、財務助言者の意見を踏まえ、当時の対価を財務的に公正と判断していた。対象は現金1.67ユーロと0.218株という当時の条件で、現金部分は9月に増額された。助言者の意見は留保条件付きで取締役会に提出された評価であり、各株主への応募推奨や将来の株価保証とは役割が異なる。
TIMに残る人は、通信事業の稼ぐ力と資金配分を追う。Poste株を受け取った人は、買収した事業がPoste全体にもたらす利益と費用を追う。買収の決済日は同じでも、その先に読む決算書は二つに分かれる。
2026年10月22日更新・訂正:買付け後の追加取得、貯蓄株の転換時期、NetCoの取引価値と減債額、ネットワーク契約および公表済み決算の記述を一次資料に基づいて改めました。当初の公開日は維持しています。
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