要約

  • RFC 920は.comを商業関連ドメインのカテゴリとして説明し、Network Information Centerに登録と管理の役割を与えた。
  • Symbolics.comは1985年3月15日、.comの登録簿に最初に記録された名前だった。同時期にはNORDU.netのほうが先に存在していたため、「最初の.com」は「最初のドメイン」より正確な表現だ。
  • この登録はウェブの始まりではない。ウェブは1989年に提案され、.comの普及もゆっくりだった。最初の登録から2年半後も、総数は100件だったと後年の報告は記す。

親しみのある末尾より先にカテゴリがあった

1984年10月、Jon PostelとJoyce Reynoldsは、ARPA InternetおよびDARPA研究コミュニティでドメインを設けるための公式方針としてRFC 920を発表した。最初のトップレベルドメインには.gov、.edu、.com、.mil、.orgが含まれた。.comの定義は事務的で、「商業関連で、第二レベルの要件を満たすドメイン」だった。オンライン店舗を置く約束でも、一般公開のウェブサイトを持つ保証でもない。

カテゴリを設けるには実務上の責任が伴った。ドメインには責任者、堅牢な名前検索サービス、独立したドメインを正当化できる数のホストが必要で、トップレベルの管理者への登録も求められた。RFC 920は、列挙したトップレベルドメインの登録・管理者としてNetwork Information Centerを挙げる。名前の階層が役立つかどうかは、各部分のデータを維持し、その範囲に責任を持つ人たちにかかっていた。

この計画はまだ移行の途中だった。1983年11月のRFC 881は、従来のホスト表からドメイン形式の名前へ移る段取りを説明している。そこでは、記述対象の段階で新しいドメインはまだ導入されておらず、従来表とドメイン表をしばらく併用する計画だった。DNSは運用に移されつつあったのであり、完成済みのオンライン市場として一夜に現れたわけではない。

最初の.comは、最初のドメインではない

VeriSignの2010年2月版ドメイン業界レポートは、1985年3月15日のsymbolics.comを、現存する最古の.com一覧の先頭に記している。業界のDNS年表は、同年1月のNORDU.netを先に挙げ、3月のSymbolics.comを.comで最初に記録された名前として区別する。ICANNの30周年記事も、これを最初の第二レベル.comドメインと呼んでいる。

この区別は、「最初のドメイン」という言い方が複数の歴史をまとめてしまうから重要だ。引用した年表では、NORDU.netのほうが3月の登録より早い。Symbolics.comは.comカテゴリにおける最初の名前であり、事実の範囲はそこまでだ。どちらの日付も最初のウェブサイトを示さない。CERNによるとウェブの提案は1989年で、最初のサイトは後のプロジェクトだった。1985年にDNS名が登録されていても、ウェブページがあったとは限らない。

Symbolicsは専門市場向けのコンピューターを製造していた。1983年の技術概要は、記号処理システムと関連製品のシリーズを紹介している。ドメインは企業を識別する名前として機能した。現在確認できる登録史料からは、登録当日にsymbolics.comが何を表示したか、何人が訪問したか、オンライン販売があったかまでは分からない。

長く続いた静かな時期

最初の登録がすぐに.comを大衆市場に変えたわけではない。VeriSignは2010年、最初の登録から2年半後の総数は100件だったと報告した。1992年でも1万5千件未満で、100万件を超えたのは1997年だったという。ここに挙げた数字は登録簿運営者の後年の報告に基づき、同時代の完全な台帳を示したものではない。それでも、直ちに大量普及したという物語とは合わない。

この空白期間は、当初の管理設計と、後に生まれた文化的な意味とを分けて考える助けになる。1984年の.comは、管理された階層の中で商業関連組織を示すラベルだった。後にそれは企業やオンライン上の目的地、ときには資産を表す目印にもなった。最初の登録が重要なのは、その事実だけでは後の変化を説明できないからだ。

登録簿の記録から分かるのは、特定カテゴリでどの名前が先に登録されたかだ。その一件だけで、そのカテゴリがすでにインターネットの一般向け玄関になっていたとは言えない。Symbolics.comはDNS管理の初期地点を示す。ウェブ、一般への広いアクセス、オンライン小売は、それぞれ別の時間軸で広がった。

参考資料