要約
- RFC 1887 はマルチホームを無償の冗長化とは扱わず、サイト内の再番号付けと世界側の経路例外のどちらに実費を置くかという問題として記述した。
- RFC 2073 は Registry ID、Provider ID、Subscriber ID を設けたが、RFC 2374 はレジストリ部分を削除し、RFC 3587 は後継の TLA/NLA も歴史的な構造とした。
- これは階層的集約の放棄ではない。運用上の目的と、ある時点の制度配置を同じものとして固定しないための分離だった。
便益を受けるのは遠くのルーターだった
1995 年 12 月の RFC 1887 は、IPv6 の広大な番号空間よりも到達性情報の量を問題にした。多数のサイトを一つの上位プレフィックスで表せれば、無関係な遠隔ネットワークは顧客ごとの経路を持たずに済む。文書はこれを routing data abstraction と呼んだ。
RFC 1518 と RFC 1519 が IPv4 で示した CIDR の発想と同じく、アドレスを実際のトポロジーに合わせるほど集約は効く。だが、割り当て組織の境界と物理的な接続は必ずしも一致しない。RFC 1887 はこの箇所を「効率と分散管理」として扱い、技術だけで対立が消えるとは書かなかった。
一つの短い広告にまとめる利益は、顧客だけのものではない。それを受信する多くの事業者がメモリー、更新帯域、計算を節約する。したがって、独立したアドレスを望むサイトと、世界側で例外を保持する事業者の間には契約のない費用移転が起こり得る。
四つのマルチホーム案は費用の置き場所だった
第一案では、組織が接続先から独立した単一プレフィックスを持つ。内部番号は安定し、一つの経路でサイト全体を表せる。その代わり、その経路は特定プロバイダーの集約に入らず、世界のルーターが個別に覚えることになる。
第二案では、接続ごとにプロバイダー由来のプレフィックスを使う。各プロバイダーはきれいに集約でき、着信も目的地に近い入口へ向かいやすい。しかし回線障害時の代替到達性は自動ではなく、外部接続の変更が内部アドレス変更を要求する。予備経路を増やせば、集約上の利点が減る。
第三案は一つを既定経路にして近道の広告範囲を限定した。第四案は、同じ組み合わせの事業者に接続する顧客群へ共通プレフィックスを与える構想だった。いずれも状態を消すのではなく、どのルーター、組織、契約に置くかを変えた。
RFC 1887 は結論で、各案がマルチホーム組織と transit routing domain に異なる「現実の、すなわち金銭的な」費用を課すと明記した。非ローカルなプレフィックスを受け入れ、どこまで伝えるかという方針は、その費用配分の実装だった。
制度の鎖がビット列になった
1997 年 1 月の RFC 2073 は、3 ビットの Format Prefix、5 ビットの Registry ID、可変長の Provider ID と Subscriber ID、64 ビットの加入者内部分を定義した。
IANA を主要レジストリとし、Multi-Regional、RIPE NCC、INTERNIC、APNIC に Registry ID を置いた。レジストリはプロバイダーと加入者向け空間を設計し、プロバイダーは加入者 ID を構成し、加入者はローカル部分を扱う。制度的な順序が、一枚のアドレス図に現れた。
ただし、ルーターが Registry ID の意味を読んで転送するわけではない。判断は任意ビット境界の最長一致で行われた。別形式も排除されず、加入者がレジストリから直接、接続事業者に依存しない空間を得る可能性も残された。
この留保は重要である。Provider と名付けられたフィールドは、現在の契約、BGP 起点、所有権、到達結果を同時には証明しない。特定の割り当て設計上の位置を示すだけだ。
レジストリの五ビットは先に消えた
1998 年 7 月の RFC 2374 は RFC 2073 を廃止し、集約に不要だとしてレジストリのビットを取り除いた。代わりに TLA、NLA、SLA、64 ビットの Interface ID を置き、公共トポロジーとサイト内トポロジーを区別した。
プロバイダーだけでなく交換点を集約主体とする案も加わった。交換点経由なら、サイトは長距離事業者を替えても再番号付けを避け、各社から別々のプレフィックスを得ずにマルチホームできる可能性があった。しかし、事業者選択と可搬性の具体的仕組みは範囲外だった。欄があることと、移行が完了することは違う。
2003 年 8 月の RFC 3587 は RFC 2374 と TLA/NLA 構造を Historic にした。固定構造は RIR の協調的な割り当て方針に置き換わり、展開初期の技術として最善とは限らず、方針は今後も変わり得ると説明した。
残ったのは global routing prefix、subnet ID、interface ID という一般形である。グローバル部分は引き続き RIR と ISP が階層化し得る。サイト内は管理者が構成する。集約という機能は残り、特定の制度名だけが恒久的なアドレス意味論から外れた。
再番号付けの手順と実行可能性は別である
RFC 4192 は、旧新二つのプレフィックスをインターフェース上で一時併用し、DNS や設定を移す make-before-break を示した。フラッグデーなしに進められるのは大きな改善である。
それでも、ACL、監視設定、証明書、アプリケーション、運用文書に埋め込まれたアドレスは自動では消えない。RFC 4984 は、サイトによっては再番号付けが事実上不可能なほど依存が重いと記録した。
PI 空間はプロバイダー固定を避ける一方、集約不能な経路を世界へ増やす。PA 空間は一社では集約できるが、他社経由の広告がより具体的な経路を要求する。IAB の報告は、IP アドレスがトポロジーに従う locator と、安定が求められる identifier を兼ねること自体をスケーリング問題として扱った。
RFC 3177 の一般的な /48 推奨も恒久ではなかった。RFC 6177 は 2011 年、一律推奨を撤回し、少数の固定境界が実装に刻まれて再び classful になる危険を指摘した。十分な空間という原則を保ち、具体的サイズは運用判断へ戻した。
記録を分けることが可逆性を守る
割り当て記録は、ある方針と日時に行われた委任を示す。BGP 観測は特定地点から見えた起点を示す。契約は商業上の義務を、パケットとアプリケーションのログは経路と結果を示す。共通キーは同じプレフィックスでも、証明対象は別である。
制度がアドレス図から消えたからといって、制度の責任が消えたわけではない。むしろ、割り当て方針として版を付け、変更理由を残せるようになった。集約の効果は測定し、例外の費用も再番号付けの費用も可視化する。そのうえで、過去を上書きせずに方針を変える。
経路はまとめられる。権限の由来まで一つにまとめてはいけない。
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