要約

  • RIPE NCC年次報告2025(ripe-855、2026年4月17日公表)は、2025年に2,320件のabuse-c検証調査(LIRアカウント801、LIRリソース764、エンドユーザー755)を実施したと報告している。2024年の2,366件(841/774/751)からわずかに減少した。
  • 同報告は「2,300件を超えるabuse-c検証調査を実施した」とも述べ、チャート上の2,320件と微細な食い違いが報告書内に残る。検証済みabuse-cメールアドレスは2025年に86,959件(2024年は83,509件)で、手動対応を要したのは899件(2024年は851件)だった。自動/手動の内訳は断片からは算術的に確定できないため、本稿では断言しない。
  • 2025年の制裁リスト(ハイジャック調査220件、警察への通報19件、デューデリジェンス警告13件、係争中移転1件、虚偽情報提供によるSSA契約解除3件)には、abuse-c不備に起因する項目が一つも含まれていない。
  • 2026年活動計画・予算(ripe-850、2025年12月11日承認)は警告の自動化を進めるが、未解決警告を強制措置につなぐトリガーは追加していない。

検証レジームの仕組みと現状

abuse-cメールボックス属性の検証はripe-705によって少なくとも年1回義務付けられ、自動チェックは構文・ドメイン・メールサーバー設定を確認するが、メールは送らない。2019年のRIPE Labs公表資料によれば、未解決の連絡先には1週間間隔でリマインダーが送られ、約3週間後にスタッフが引き継ぐ。LIR組織オブジェクトの場合はクロージャー手続へエスカレートし、さらに3か月の猶予がある。一方、LIRリソースとエンドユーザーオブジェクトに対しては終了措置がなく、データベースコメントで不備が標記されるだけである。

ripe-858(「会員のクロージャー、インターネットリソースおよびレガシーリソースの抹消」、2026年5月7日版)は、SSA契約解除・リソース抹消・RPKI証明書失効へのエスカレーション階段を維持している。2026年5月7日の改正は郵便によるリマインダー手順の削除のみで、最終手段の内容は変わっていない。

数値の推移

検証済みアドレスの増加(2024年の83,509件から2025年の86,959件へ)はレジームが成熟していることを示す。abuse-cロールオブジェクトの新規作成・更新は2024年の102,939件から2025年の77,086件へ減少し、既存の検証済み集団が安定していることと整合する。同報告は2,400件を目标とするAssisted Registry Checkを2,825件完了したとも述べている(2024年は2,445件)。ただし、すべての数値はRIPE NCCの自己報告であり、外部検証は公表されていない。

報告書は「すべてのabuse-cアドレスをRIPE-705に準拠して検証した」という完全性主張を行っているが、事例単位の証拠は公表されていない。2017年の政策提案2017-02(2018年6月1日受諾、2019年10月10日にripe-705として実装)には、RIPE NCC自身が5年間で1,000件超の外部報告を調査・解決しながら、クロージャー/抹消手続を一度も発動しなかった旨の記録がある。検証開始以降、abuse-c不備に起因するクロージャー・抹消・RPKI失効の公的な事例は、調査した記録の範囲では見つかっていない。これは記録全体に対する限定的な否定であり、普遍的な証明ではない。

デルタ:先行報道との比較

BTWは2026年9月24日から26日にかけて、(1)検証が到達可能性を測るだけで応答性は測らない点、(2)エスカレーション階段が文書化される一方で行使数が計上されない点、(3)文書化された最終手段が未発動である点を、2017-2019年のデータに基づいて報道した。本稿の差分は、その記録を2026年時点の文書まで進めたことにある。年次報告2025が2025年の調査件数と結果を数量化し、活動計画2026が警告を自動化しながら強制措置を追加せず、クロージャー手続が2026年5月7日に改正されても最終手段に触れなかった——この3点が、先行報道の結論を2026年時点の公式文書で再検証する。

不確実性

ripe-855とripe-850の数値はPDF断片からのプロバイダー報告であり、年列の対応や自動/手動の内訳は未検証である。「2,300件超」と2,320件の食い違いは報告書内の未解決の緊張として残る。1,000件超の外部報告集計は2017年の自己報告であり、事例記録はない。最終手段が休止している理由が、会員が本当に準拠しているのか、非公式なエスカレーション回避なのか、計上されない圧力なのかは、この記録からは区別できない。

参考来源:ripe-855(年次報告)、ripe-850(2026年活動計画)、ripe-858、政策提案2017-02、RIPE Labs:検証データ、RIPE Labs:フォローアップ、RIPE-705、ripe-855(文書アーカイブ版)。ディレクトリ:entity:ripe-abuse