要約

  • PISCESは今週始まった構想ではない。EUの調査支援が先行し、今回の発表は事業を担う会社と経営体制を具体化した。
  • 予定ルートと敷設目標は公表されたが、容量の割当、卸売条件、出資比率、稼働準備の詳細は明らかでない。

今回の発表を「新しい海底ケーブル計画」とだけ受け止めると、前段の経緯を見落とす。欧州委員会は2023年、ポルトガル、アイルランド、スペインを結ぶPISCESケーブルシステムの調査を支援している。10月14日の新しさは、Equitix、アイルランドの海底ケーブル開発会社MDM、Orangeが発表した合弁会社と、Carine RomanettiのCEO就任だ。実施主体は見えやすくなったが、意思決定や容量販売の規則はまだ公開されていない。

Orangeによると、計画は約3,125キロメートル、16対の光ファイバーで構成され、ゴールウェイ、フランスのサン=ティレール=ド=リエ、スペインのソペラナ、ポルトガルのカルカヴェロスを結ぶ。ソペラナにはOrangeが新しい陸揚げ局を建設する予定だ。Elettra TlcとOrange Marineが実施した海洋調査は8月に完了したものの、設計と許認可は進行中で、敷設は2028年を見込む。これは建設に向けた進捗であり、開通やトラフィックの切替を示すものではない。

発表には異なる三つの主張が並ぶ。直結ルートは物理的な選択肢をつくる。16対という仕様は大きな潜在容量を示す。そして「オープンアクセス」は商業上の方針を掲げる。だが、それだけでは独立系通信事業者が実際に容量を購入できるのか、陸上バックホールが整うのか、障害時に利用者が経路を切り替えられるのかはわからない。

資金面の説明も限定的だ。関係者はEUのConnecting Europe Facilityによる大規模な支援を挙げる。投資はEquitix Infra Irelandを通じて行われ、アイルランド戦略投資基金(ISIF)がアンカー投資家として参加し、Equitix、Orange、MDMも関わるという。ただし出資比率、事業総額、確約済みの民間資金、超過費用の負担者は開示されていない。投資の器が示されたことと、最終的な資金リスクが明確になったことは別である。

事業会社の設立だけではアクセス条件は決まらない

卸売顧客が確認すべきなのは、実際の容量商品と、その販売ルールだ。商品内容、価格の決め方、需要超過時の割当、契約期間、増設の権利、障害通知、復旧時の優先順位、関係会社への扱いが公表されて初めて、開放アクセスを検証できる。現時点の発表にはこれらがない。開示不足は差別の証拠ではないが、約束を評価する材料はまだ足りない。

レジリエンスも地図上の線だけでは測れない。アイルランドから大陸への直結は、英国を通る経路への依存を減らし得る。しかし障害時に役立つかは、陸揚げ局の電源、陸上回線、相互接続、修理契約、交換部品、空き容量にも左右される。PISCESは未稼働であり、今のところレジリエンスは期待される効果であって、測定済みの実績ではない。

海洋調査が終わり、設計と許認可が続く今は、ルートや環境条件、各陸揚げ局の責任分担、修理方法を確かめる機会でもある。これらの判断は工期だけでなく、費用や可用性を左右する。今後の説明では、確定した事項と承認・設計を待つ事項を分けて示す必要がある。

Heng Luのノート36は、主張を評価する前に運用の実態を記述するという編集上の視点を与えるだけで、PISCESや関係企業の証拠ではない。

評価を変える証拠

判断は確認可能な節目ごとに更新したい。最終許認可と確定ルート、建設契約と資金裏付けのある工程表、容量商品と公平な割当規則、陸揚げ局と陸上接続の完成、最後にサービスまたはトラフィックの実績を伴う稼働宣言である。ケーブルの物理的な完成だけでは商業アクセスの透明性はわからず、販売案が公表されても稼働準備が整ったとは限らない。