要約

  • Health Bill第52条は、Secretary of Stateが規則で単一患者記録の仕組みを設け、患者と医療・社会ケアの関係者に情報を提供する権限を認める。
  • 規則では、誰にデータ提出を求めるか、誰がどの情報を閲覧できるか、代理人への提供、執行機関と罰金の仕組みまで決められる。
  • House of Lords Delegated Powers and Regulatory Reform Committeeは、アクセスと守秘の原則を法律本体に置くよう求めた。後続規則は議会が一括で承認・否決する形となり、個別条項の修正はできない。

まず、何が「単一」なのか

患者情報を一か所へ移し替える巨大な全国データベースを作る計画ではない。Department of Health and Social Careの影響評価によれば、狙いは既存の臨床システムを結び、そこにある情報を患者や医療従事者が使えるようにすることだ。医療従事者は使い慣れた診療システムから、患者はNHS Appから見る想定になっている。

この接続が必要とされる理由も明快だ。診療の場をまたぐと記録が欠けたり食い違ったりし、情報の転送が手作業に残る。共通の入口はそのつなぎ目を短くできる。ところが入口の数を一つにしても、鍵を誰に預けるかは決まらない。

議会は一括採決できても、行単位で直せない

委員会の批判は、技術の仕様ではなく立法の手続きに向いている。誰がいつ何を見られるか、どんな条件を課すか、秘密とプライバシーをどう守るかは、法律で決めるべき基本方針だという。肯定的手続にかけられる規則も、議会は全文を承認するか退けるかしかできない。審議中に不適切な条項だけ差し替える権限はない。

規則の中に、役に立つ統合と広すぎる閲覧権限が同居したらどうするか。議会ができるのは規則全体を止めることだけかもしれない。政府はアクセス制度の細かさと技術の変化を理由に、詳細を規則へ委ねる。接続方式の更新には筋が通る。患者の基本権まで後回しにする根拠にはならない。

委員会はさらに踏み込み、新設される第250E条は現状では目的に適さず、大幅修正がなければ法案から削除すべきだと結論づけた。

第52条が大臣に渡す具体的な権限

法案はNHS Act 2006に新たな第250E条を加える。Secretary of Stateは規則で記録システムを立ち上げ、公共機関に運用機能を与え、患者情報の処理や開示を要求または許可できる。患者本人だけでなく、代理人や医療・社会ケアの提供者へのアクセスも扱う。一定の違反に罰金を科す権限は、Secretary of State、Care Quality Commission、Special Health Authorityのいずれかに与えられ得る。

どの代理人が認められるか、職務に応じてどの情報を見せるか、診療に必要な項目をどう切り出すか、不適切な閲覧を誰が調査するか。これらはデータベースの運用マニュアルではない。システムの権限を形づくる決定だ。

政府は、同条が研究・サービス計画・調達のための新しい利用根拠を生むわけではないと説明する。その種の二次利用には別の既存法上の根拠が引き続き必要で、英国のデータ保護法も適用される。ここは法案の実際の境界として正確に扱うべきだ。

一方、法律の保護条項は、大臣に不適切利用を防ぐための適切な保護策の「必要性を考慮」させる。保護策を確実に整えよ、という明確な義務ではない。大臣は規則制定前に、自身が適切と判断する相手に相談する。アクセスの基本条件と透明性は、まだ議会が決めていない。

アプリの予定表は権利の規則集ではない

政府は一部の専門分野で2027年半ばから医療従事者向け機能を始め、2028年にはイングランドの全患者にNHS App経由で主要データを見せたいとしている。いずれも計画上の目標で、現在動いている機能ではない。患者が誤りを見つけて訂正を申請できるという説明もある。申請の処理期間、拒否の理由、連携元と統合記録の不一致を誰が決めるかは、規則と現場の手順にかかっている。

最低線は法律に置く

法律は、役割と目的に応じて閲覧範囲を限定すること、患者に記録を見せること、期限と理由を伴う訂正申請の道筋、患者が読めるアクセス履歴、調査・制裁・不服申立ての責任者、直接診療と他の利用の切り分けを定めるべきだ。規則は技術仕様や同期の間隔を更新できる。そのたびに患者の基本権を再交渉する必要はない。

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