要約

  • Lynn St. Amourは、Public Interest Registryが.ORGを運営し、Afiliasがレジストリのバックエンドを担い、ISOCが用途を定めた事業支援を受ける仕組みづくりを率いた。
  • 当時の記録が示すのは、自由に使える利益の流入ではない。2003年初め、ISOCの使途制限のない現金は約3週間分の運営費にすぎず、PIRの事業資金と500万ドルの基金にはそれぞれ別の目的があった。

.ORG以前、余裕のない資金繰り

2000年7月、Internet Societyの理事会は厳しい財務状況を記録している。議事録によると、1999年の損失は125万ドル、買掛金などの未払金は約75万ドル、月末の現金は運営費の約12日分だった。理事会は当時の事務局長Lynn St. Amourに財務部門の責任を委ね、それによって彼女が最高執行責任者に相当する日々の運営責任を担うと説明した。彼女の報告では、職員は資金調達とコスト管理に多くの時間を割いており、財務問題をすぐに解決する特効薬はないとされていた。

この状況が、後の.ORG獲得を理解する出発点になる。非営利団体がレジストリ契約を得られるかというだけの話ではない。標準化、教育、公共政策の活動を続けるInternet Societyが、レジストリ運営と事業の役割を混同せずに、より持続的な資金源を作れるかが問われていた。

St. Amourは執行責任を担ったが、判断は彼女一人で下されたわけではない。2002年5月、ISOC理事会はAfiliasと共同で提案を準備する権限を役員に与えた。同年10月14日、ICANNは11件の提案からISOC案を選定した。ISOCは別法人の非営利団体Public Interest Registry(PIR)を設立し、.ORGを運営させた。Afiliasはレジストリのバックエンドサービスを提供することになった。運営、事業活動、技術サービスをそれぞれ別の主体が担う構成だ。

事業向け資金と一般資金を分ける

この構造が重要なのは、資金が一つの予算にまとめられていなかったからだ。ISOC理事会の第32回会議記録では、レジストリ運営はPIR、事業開発とアウトリーチはISOC、バックエンドサービスはAfiliasの役割とされている。同じ記録は、アウトリーチと監督費用を賄うため、直接費用を差し引いた後の純拠出を予算に見込んでいたことに加え、PIRが標準化に20万ドル、教育に10万ドルを当初拠出すると記す。一方で、事業支援の手続きや監督コストの回収方法は、まだ最終決定されていなかった。

翌月には、事業資金と一般運転資金の違いが明確になった。2003年4月、ISOCの執行委員会は現金残高を13万6,000ドルと報告し、そのうち4万ドルはPostel賞向けに使途が制限されていた。自由に使える資金は約3週間分の運営費に相当した。PIR理事会は標準化と教育の事業に30万ドルを投じると決めていたが、送金手続きはまだ確認中だった。

同年7月の理事会では、PIRの資金でISOCの予算を補填できるかが問われた。St. Amourは、PIRとICANNの契約により資金は特定事業に限られ、ISOCの一般経費には使えないと説明した。それでも理事会は、貸借対照表を改善する方法を探すようCEOに求めた。つまり、.ORGによって事業を支える力は増した一方、通常の運転資金不足は別の問題として残っていた。

ISOCの2003年財務諸表は、これとは別に500万ドルの助成金を説明している。ISOCはPIRのために資金を保管する受託者となった。財務諸表によれば、この資金は2008年まで毎年分割して払い出され、PIRの将来の運営費に充てる基金を設けるものだった。PIRが.ORGの運営者でなくなった場合、残額は後継レジストリ運営者へ移される。ISOCが職員給与や一般経費に自由に使える準備金ではない。

2003年後半の理事会記録は、.ORGの事業資金30万ドルが4月に流れ始め、同年後半の事業向けにさらに80万ドルが見込まれていたとする。予想以上の拠出により事業数も期待も増え、ISOCは運営モデルをより堅牢にする必要があるとも記録された。資金は活動を支えるようになったが、その分、計画、会計、実行への責任も生まれた。

転機という評価と、因果関係の限界

St. AmourはISOCの2013年年次レビューで、.ORG獲得とPIR設立が転機となり、使命を進めるための財務基盤が強まったと振り返った。その基盤と、支部・会員・地域事務所・技術力・公共政策活動の拡大を結びつけている。退任発表では、在任中にISOCの年間収入が100万ドル強から3,500万ドルに増えたと報告し、.ORG提案を率いた功績を彼女に帰している。

これは組織自身による重要な評価だが、収入源ごとの内訳ではない。ここで参照した公開資料からは、3,500万ドルのうち.ORG由来の額、各収入源の年ごとの変化、あるいは契約がなければ後の組織拡大がどの程度違ったかは分からない。記録から言えるのは、より限定された結論だ。.ORGはISOCの特定事業を支える重要な資金経路になり、PIRの仕組みはPIR自身の運営継続のための基金を設けた。どちらもレジストリ経済全体がISOCの自由に使える収入になったことを意味しない。

St. Amourの役割は、このガバナンスの連鎖に沿って見ると明確になる。彼女はEMEAの執行責任者からCOO、そして会長兼CEOへと進み、財務を報告し、提案を率い、ISOC・PIR・Afilias間の関係を調整した。提案を承認したのは理事会で、理事会は監督責任を保った。PIRには独自の理事会があり、事業資金を議決した。記録が示すのは制度上の境界に沿った執行リーダーシップであって、すべての資金を一人が決めた姿ではない。

出典