要約
- 日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)の理事会は2026年2月17日、JPドメイン名紛争処理方針(JP-DRP)のための手続規則を改正した。改正版は2月24日に公開され、4月1日に施行された。文書番号JPNIC-01327として前版JPNIC-01252に置き換わる (JPNICの改正告知, JPRSの告知, 規則本文, 施行の告知)。
- 改正の実務的骨子は四つである:苦情・答弁・証拠の電子メール添付提出の明記、登録者情報取り扱いの明確化、代表権限証明書の3か月発行要件の緩和、「登録者」を「相手方(respondent)」とも呼べる語彙の整備 (JPNICの改正告知, JIPACの解説)。
- JPNIC承認の紛争処理サービス機関(DRSP)である日本知的財産仲裁センター(JIPAC)も補則を改正し、4月1日以降の申立てに向けた新様式(苦情、答弁、委任状、和解要旨)を用意した (JIPACの解説)。
- 一方、申立て資格(第3条(a))、救済はドメイン名の取消しか移転のみ、申し立て時点で有効な規則が手続を律すること(第21条)は改正されていない (規則本文, 施行の告知, JPNIC英語解説)。
改正の骨子:四つの変更
改正された手続規則は、文書番号JPNIC-01327として公開されている。文書の改訂履歴は2000年7月19日の公開にさかのぼり、2000年10月10日、2002年2月19日、2005年1月21日、2007年3月9日、2012年2月10日、2012年5月16日、2017年5月17日、2020年6月15日の改正を経て、2026年2月17日の改正に至る (規則本文)。
JPNICの告知が示す改正の目的は、2020年改正で導入された電子手続の運用経験を踏まえ、電子メールによる手続処理を規則上明示して、利便性と速度を高めることにある (JPNICの改正告知)。
第一に、電子送信に関する条項が整理され、苦情・答弁・証拠をオンラインストレージに保存する提出に加えて、電子メールの添付ファイルとしてDRSPが指定する宛先に送信して提出することが規則上明記された(第1条(l)、第1条(m)、第2条(b)、第2条(d)、第3条(b)、第5条(b))(JPNICの改正告知, JIPACの解説)。
第二に、登録者情報の取り扱いが明確化された(第3条(v))。苦情の申立て時に登録者を特定できない場合、DRSPが苦情側に登録者の連絡先情報を提供する (JPNICの改正告知)。
第三に、法人の代表権限証明書について、申立ての3か月前以内に発行された公的証明書でなければならないという要件が、厳格には課されなくなった(第3条(xvi)、第5条(x))(JPNICの改正告知)。
第四に、用語が整備され、「登録者」をUDRPと同じく「相手方(respondent)」とも呼べるようになった(第1条(b))(JPNICの改正告知)。WHOIS上では実在の登録者が見えない匿名登録の実務を念頭に置いた語彙の整合である。
DRSP側の対応も並行した。JIPACは自らの補則を改正し、改正後の苦情、答弁、委任状、和解要旨の各様式を、4月1日以降の申立てから使用するよう求めている (JIPACの解説)。
変わらなかったもの:資格、救済、10日間
申立て資格は変わらない。規則第3条(a)は、登録ドメイン名に利害関係を有する個人または団体であれば、JPNICが承認したDRSPに苦情を提出して手続を開始できると定める。DRSPは定員その他の理由で苦情の受理を停止できるが、その場合には受理を拒否し、当事者は他のDRSPに提出できる (規則本文)。
求められる主張もそのままである。苦情側は、方針第4条(a)の三要素——標章の同一性または混同を生じさせる類似性、登録者に正当な権利または正当な利益がないこと、不公正な目的での登録または使用——をすべて主張しなければならない (JPNIC英語解説)。手続は原則として日本語で行われる (JPNIC英語解説)。
救済の範囲も限定的なままである。JP-DRPで得られるのはドメイン名の取消しか移転のみで、損害賠償は請求できない (JPNIC英語解説)。決定に不服のある登録者は、10日以内に東京地方裁判所または登録者の登録住所地を管轄する裁判所に訴えを提起することで、決定の実施を停止できる (JPNIC英語解説)。
改正と施行の間の時間も、規則自身が設けている。第21条は、JPNICが手続規則をいつでも改正できること、JPNICとJPRSが改正版を施行の少なくとも30暦日前にウェブサイトで公開すべきこと、そして苦情の提出時点で有効な規則がその手続を律することを定める (規則本文)。2月24日の公開と4月1日の施行の間に30日以上の期間が置かれるのは、この条項に沿った進め方である (JPNICの改正告知, 施行の告知)。
レジストリと規則設定機関の役割分担
.jpのレジストリ運営者である株式会社日本レジストリサービス(JPRS)は、2026年2月24日付の新着情報で手続規則の改正を告知し、実施日が2026年4月1日(水)であることを確認したうえで、改正の中身はJPNICの告知を参照するよう案内した (JPRSの告知)。手続規則を定めるのはJPNICであり、レジストリはそれを運用し、告知する。この分担は、今回の改正でも変わっていない。
2026年3月31日には、改正版の「JP-DRP解説」と「JP-DRP裁定例検討報告書2026年版」(2018年から2024年の裁定を対象とする)が公開された。解説は、氏名に係る事案、手続の言語、追加書面の提出、手続濫用といった近年の裁定動向を反映した改訂とされている (JPNICの解説・裁定例報告の告知)。手続規則の改正と、解説・裁定例の更新が同じ時期に重なったことは、2026年上半期に.jpの救済面が一括して整備されたことを示している。
JPRSの体制や位置づけの基本情報は、BTWのディレクトリ項目にもまとめてある。
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