要約
- Fabの標準ライセンスでは、購入時にPersonalの条件を満たしていれば、後に収入基準を超えてもProfessionalへの変更は求められない。
- 判定は直近12か月の定義された収入に基づく。前受金、その他の調達資金、契約が対象とする支配関係も計算に入る。
- PersonalとProfessionalで権利の範囲は同じだ。販売者は二つの価格を同額にも別額にも設定できる。
森の請求書を掘り返さずに済む
ゲームがようやく売れ始めた日のことを考えてみよう。架空の小さなスタジオでは、担当者が売上画面を見て喜んでいる。次に素材市場のFabを開き、PersonalとProfessionalの二つの表示に気づく。半年前に買った木、岩、廃墟まで、いまの会社の規模に合わせて買い直すのだろうか。
Fabの標準ライセンスの説明は、この心配を切り分けている。購入時にPersonalの条件を満たしていた素材は、その後に収入基準を超えたからといって、料金区分を変更する必要はない。ゲームがヒットしても、森がまとめて昇給を要求してくるわけではない。
根拠は契約の第2条(a)にある取引時点の判定と、公式のライセンス概要に記された購入後の扱いだ。対象は標準ライセンスで適正に取得した素材である。Fab上にあるという理由だけで、過去の別ライセンスの取得条件まで同じ箱に入れると話が崩れる。
次の木は、今日の会社が買う
数字を置いてみる。これも架空の例だ。独立したスタジオの契約上の計算額が、購入時には直近12か月で8万ドルだった。Personalで木の素材を買い、その後に同じ計算額が15万ドルまで伸びた。昔の木は、当時の正しい条件で購入されたままだ。
一方、いま買おうとしている城は別の取引になる。その城については、今日の会社の条件で料金区分を判断する。ライブラリー全体の価格が会社の成長に連動して一斉に更新される仕組みではなく、次の購入で新しい判定が始まる。
この違いは、素材代だけの話ではない。木をゲームに入れるまでには、色を調整し、地形に合わせ、衝突判定を直し、負荷を測る仕事がある。購入時点の価格関係が落ち着いていれば、その上に積んだ作業の見通しも立てやすい。後から増えた売上が、古い購入の価格表を勝手に開き直さないからだ。
販売者には逆側の意味がある。安い区分で正当に買った顧客が大成功しても、その成功だけを理由に古い注文から差額を取ることはできない。次の収益は、新しい素材や新しい顧客の注文から生まれる。
売上ゼロでも、資金はゼロではない
Personalという名前は気楽だ。一人で作る人向け、まだ商売になっていない人向け、と読めてしまう。しかし契約が調べるのは、制作机に座っている人数でも、名刺の肩書でもない。
取引の時点で、購入者、その購入者を支配する組織、共通の支配下にある組織について、直近12か月のデジタルコンテンツ産業における商業活動からの総収入が10万ドルを超えないことがPersonalとPersonal—Reference Onlyの条件になる。ちょうど10万ドルなら、この上限を超えていない。
さらに契約は、受け取った前受金とその他の調達資金を計算に含める。まだゲームを一本も売っていなくても、対象期間に15万ドルを調達したという架空のチームは、売上ゼロの一行だけを見てPersonalを選べない。ここで使われる計算は、会計上の売上欄の名称より広い。
企業の支配関係にも同じ落とし穴がある。大きな会社の中で、小さな開発チームだけを切り出して「私たちは小規模です」と言っても、契約の集計範囲は縮まらない。判定する期間も暦年ではなく直近12か月だ。資金調達があった直後に昨年度の数字だけを持ち出せば、肝心の変化が抜ける。
高い区分の木も、枝は同じ
標準ライセンスのPersonalとProfessionalは、同じ範囲の権利を与える。Personalでも商用プロジェクトに使えるし、対応するツールならUnreal Engine以外でも利用できる。Professionalという名前から、より豪華なファイルや広い権利が自動的に付くと考える必要はない。
販売者は二つの区分を用意し、その価格を同額にも別額にもできる。つまり、権利の違いではなく、購入者の経済的な条件に応じて価格を分ける余地がある。小さな買い手の入口を低くし、大きな買い手には別の価格を付ける設計だ。実際にどれだけ差を付けるかは商品ごとに決まり、一律の割増率はない。
ただし、ファイル形式と利用人数は別に確認する。Personal—Reference Onlyは参照用の素材へのアクセスで、元のソースファイルを渡す区分ではない。通常のPersonalとProfessionalでも、利用できる形式は商品の提供内容による。コードプラグインは利用者ごとの席数で扱われる。料金区分の権利が同じでも、プラグイン一つを無制限の人数で使えることにはならない。
間違えた日の差額は残る
契約には、購入時に資格のなかった区分を選んだ場合の扱いもある。求められれば、適格な区分で購入していた場合との差額をEpicに支払う。
後から成長した会社と、最初から条件を超えていた会社は、いまの規模だけ見ると同じに見える。だが古い注文について問うべきことは、購入した日に何が事実だったかだ。購入日、購入主体、当時の集計額を残しておけば、この二つを混同しにくい。
素材を選ぶアーティストに、親会社の資金調達まで暗記させる運用は無理がある。財務を知る人が購入時の区分を示し、制作側が形式や席数を確認する方が、責任の置き場所は明瞭になる。
88%を受け取る側の計算
Fabの販売者向け案内では、商品の売上収入の88%が販売者に支払われる。返金分は次回、あるいは複数回の支払いから差し引かれる。高い価格を付ければ高い利益が残る、という計算にはまだ注文数と返金と制作・サポートの負担が欠けている。
公開資料には、二つの区分の購入構成や、価格差に対する購入者の反応が示されていない。販売者ごとの取引と返金の記録があれば、その収益性を測れる。いま確認できるのは価格を分ける仕組みであり、その仕組みの勝者の一覧ではない。
購入者が得るのはライセンスで、素材の著作権そのものではない。プロジェクトへの組み込みや定められた形での配布は認められる一方、素材単体の転売は禁じられる。再ダウンロードが永久に保証されるわけでもないので、制作に必要なファイルと取得記録を管理する仕事は残る。
それでも、適正に買った過去の素材に成功後の値札が貼り直されない点は明快だ。ヒット作の森を振り返るとき、担当者は古い木を一本ずつ買い直す算段をしなくてよい。次の森の予算だけは、今日の会社で計算しよう。
一次資料
Fab標準ライセンスと契約、ライセンスと価格設定の公式説明、購入・形式・従来ライセンスの説明、販売者の収益と返金の案内。
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