要約
- 国内通信とEU域内通信の消費者料金を2029年にそろえる構想には、先行する二つの節目がある。2026年10月までのBEREC利用指標の更新と、2027年6月までの欧州委員会による第5a条の審査だ。
- 公開済みの最新ベンチマークが測るのは、通信利用の一部にすぎない。卸コスト、料金プラン、各国の小売価格、事業者収入、投資余力を、この数字だけで判断することはできない。
分析
まず、対象となる通話を区別する
利用者が自国にいる間に、別のEU加盟国の番号へ電話をかけるのがEU域内通信だ。利用者が国外にいるときの携帯電話利用はローミングに当たる。今回の見直しは前者を扱い、旅行中の通信料金を決め直すものではない。
2019年以降、EU域内の消費者通話には1分あたり0.19ユーロ、SMSには1通あたり0.06ユーロ(いずれも付加価値税別)の上限が適用されてきた。規則(EU)2024/1309は枠組みを延長し、国内通信とEU域内通信の料金を段階的にそろえる道筋を定めた。2025年1月1日から、事業者は公正利用と不正対策の条件を満たせば、両者を任意で同額にできる。必要な技術的保障措置が採択されれば、2029年1月1日から消費者に異なる小売価格を適用できなくなる。
したがって、2029年が白紙からの決定日というわけではない。欧州委員会はBERECに諮問したうえで、2027年6月30日までに第5a条を審査する。必要と判断すれば、法改正を提案することもできる。さらに、事業者向けの技術的保障措置を2028年6月30日までに採択する必要がある。今問われているのは、すでに定められた方向を市場データで検証できるかどうかだ。
先に動くのは測定の期限
欧州委員会実施規則(EU)2025/2592は、別の期限を置いている。BERECはEU域内通信の全利用を報告できるようベンチマークを更新し、2026年10月までに新しい報告書を用意する。事業者は、最新の報告書を2027年1月1日までに限って引き続き適用できる。
ベンチマークは利用実態を示し、公正利用の検討材料になる。しかし、それ自体が小売料金を定めたり、2028年の保障措置を採択したり、欧州委員会の審査を代替したりするものではない。法律が求める検討範囲は、通話件数の集計より広い。
BERECの2026年作業計画は、第3回総会で第7回ベンチマークを公表する予定だった。一方、10月1日の会合で承認された公開文書一覧には、その報告書が載っていない。10月10日時点で、BERECの報告書登録が示すのは、2024年4月から2025年3月を対象とする第6回報告書だ。一覧にない理由や公表時期までは分からない。ただ、今回の審査で一般に参照できるデータは、更新期限よりかなり前に終わる期間を扱っている。
既存の数字は結論ではない
第6回報告書は200社を超える事業者からデータを集めた。市場シェアが0.5%以上の固定・携帯事業者に加え、主要な仮想移動体通信事業者も含む。直近二つの期間を比べると、規制料金でEU域内通信を利用したEEAのアクティブ携帯加入者の平均割合は14.58%から13.28%に下がった。代替料金を利用した割合も0.34%から0.31%に低下した。
この数字は、携帯通話の13.28%が国境を越えたという意味でも、残りの利用者がアプリに移ったという意味でもない。特定の料金区分を使った加入者の割合だ。報告書の規制対象通話1分あたりの平均収入は、固定が0.04ユーロ、携帯が0.06ユーロ、SMSが1通あたり0.04ユーロだった。これらは報告書の定義による単位収入であり、料金プラン全体の価格、ルートの卸コスト、割当量を差し引いた世帯の請求額とは異なる。
欧州委員会が審査すべきなのは、こうした数字だけではない。法律は、卸コスト、各国市場における競争と小売価格、消費者の選好やバンドル、事業者収入、可能であれば投資余力の推移を挙げている。電話番号に依存しない通信サービスなど代替手段の利用、提供状況、競争力、料金プランの変化も対象だ。
利用系列は、測定対象の範囲で何が増減したかを示せる。データ通信、国内通話、一定量の国際通話をまとめたプランの価値までは示さない。単位収入からは、通信経路の卸コストも、価格変更後の収入減も、ネットワーク投資の変化も分からない。答えを出すには、異なる証拠を同じ期間で照らし合わせる必要がある。
意見を出すことと決めることは別だ
10月2日に始まり、11月6日に締め切るBERECの意見募集は、関係者にデータ、事例、市場経験の提出を求めている。BERECは回答を踏まえ、欧州委員会向けの意見をまとめる。公開統計だけでは見えにくい事業者のコストや、消費者が料金プランをどう利用するかを補う機会になる。
ただし、詳しい提出資料がそのまま料金ルールになるわけではなく、BERECの意見も実施法令ではない。法律上、第5a条の審査と保障措置を担うのは、BERECに諮問する欧州委員会だ。その後、事業者が料金、請求システム、公正利用の条件、不正対策に反映する。影響を受けるのは消費者であり、実際の選択と請求額を審査から外すことはできない。
参加と法的な決定権を分けることは、審査を実務に即したものにする。専門家は指標の作り方を説明し、事業者はコストを示し、消費者団体はプランの使われ方を報告できる。いずれも、法令が定めた決定権の代わりにはならない。しかし、参加が無意味になるわけでもない。証拠がなければ、決定する側はルールが対象市場に適合するか確かめられない。
11月の募集で問うべきなのは、単に価格をそろえることが公平かどうかではない。利用、卸コスト、消費者の選択、事業者収入、各国市場への影響を結び付けられる証拠があるか、また一つの平均値を万能の答えにしないかだ。2026年の指標と2027年の審査が信頼されるかは、法律が求める項目を実際に測れるかにかかっている。
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