要約

  • Cory Doctorowは2019年のEFF寄稿で、利用者が本当に離脱できるよう、既存サービスの許可なしに接続する競合を認めるべき場合があると論じた。Bennett Cyphersと共著した2021年のEFF報告は、プライバシー上の対策と三つの政策手段を整理した。
  • カナダの法案C-294を扱った2023年の公聴会で、Alissa Centivanyはこの概念をDoctorowとEFFに帰属させた。Doctorowは証人ではない。委員会は後に限定的な修正を勧告し、法案は特定のソフトウェアや機器の技術的保護手段に限った例外として裁可された。プラットフォーム全般に相互接続を義務付けるものではない。

データを持ち出すだけでは離れられない

Cory Doctorowにとって、利用者が自分のデータをダウンロードできるかどうかだけでは、競争の実態は測れない。プロフィールや連絡先をエクスポートできても、サービスを便利にしていた日々のつながりは失われるかもしれない。Doctorowは2019年6月、Electronic Frontier Foundation (EFF)への寄稿で、既存の大手サービスが協力しなくても、新しいサービスが接続できる「adversarial interoperability」を提唱した。

彼はオフィス文書の形式を例に挙げる。Doctorowの説明では、AppleのiWorkはMicrosoftがApple向けに設計したわけではないにもかかわらず、多くのMicrosoft Officeファイルを開き、保存できた。この事例から彼は、互換性があれば競合は既存サービスに残る人々と接点を保ち、乗り換えに伴う社会的な負担を軽くできると論じる。事例や市場への効果に関する記述はDoctorowの主張であり、あらゆる互換機能の成果を独立に測定したものではない。2019年のEFF寄稿に論拠が示されている。

データポータビリティと相互運用は、似ているようで解決する課題が異なる。ポータビリティは、多くの場合、一度データを取り出して競合に移す仕組みだ。相互運用なら、移行中もつながりを保てる可能性がある。連絡先や仕事の流れをすべて一から作り直す必要があれば、ファイルを持ち出せても、既存サービスのネットワーク優位はあまり変わらない。

「adversarial」は企業間の関係を表す言葉であり、利用者の同意を不要にする言葉ではない。新規サービスが既存企業の許可なく接続する場合でも、利用者は何を渡し、どのツールに代行させ、問題が起きたとき誰が対応するかを選べなければならない。この概念はインターフェースを握る企業の支配に異議を唱えるが、安全な接続の設計や、リスクを受け入れる権限までは決めない。

プライバシー政策は二人の共著

2021年、DoctorowとBennett CyphersはEFFの報告書『Privacy Without Monopoly: Data Protection and Interoperability』で、より具体的な政策の枠組みを提示した。報告書は三つの手段を区別する。競争的互換性(ComCom)は、許可を得ない第三者接続の一部を保護する。バックエンド相互運用は、大規模企業にサービス間接続のインターフェースを維持させる。委任可能性は、利用者が第三者ソフトウェアに自分の代わりにサービスを操作させる仕組みだ。著者らは、これらと一回限りのデータポータビリティも区別している。EFFの報告書では、各手段は関連する一方、同じものではないとされる。

新しい接続が生む危険も、報告書は明記している。APIを通じたデータ共有や収集、分散型環境でのフィッシングや偽アカウント、集中型システムの安全性を守るプラットフォームの裁量が弱まることなどだ。第三者ツールが、利用者に見えている情報を適切に扱わない場合もある。CyphersとDoctorowは、十分な説明に基づく同意、データ最小化、プライバシー法と実効性のある執行を提案し、基準は企業の一方的な判断ではなく、民主的な説明責任を伴う法で定めるべきだと論じた。便益がリスクを上回りうるという結論は二人の政策的主張であり、どの実装も成功すると示す実地検証ではない。

この区別は、別の法律論に議論が移るときに重要になる。著作権法上のデジタルロックに例外ができても、APIが整備されるわけではなく、安全性の設計も、利用者の同意も、サービス間通信の権利も自動では生まれない。インターフェースがあることだけで、そこを流れるすべての利用者データについて第三者が代理権を持つとも言えない。

証人が概念を引用した

2023年3月8日、カナダのHouse of Commons Standing Committee on Industry and Technology (INDU)は、カナダのCopyright Actに定められた技術的保護手段を扱う法案C-294について証人から意見を聞いた。公式記録にはAlissa Centivany、Anthony D. Rosboroughらが載るが、Doctorowは証人ではない。Western Universityの助教であるCentivanyは、製品、サービス、インターフェースや部品をまたぐ相互運用を説明したうえで、「adversarial」の形をCory DoctorowとEFFが作ったと述べた。新しい製品やサービスが、元の企業の意向に反して既存のものと接続するという説明だ。委員会の議事録がこの帰属を記録している。

Centivanyが語ったのは、すでに委員会で審議されていた法案についての本人の意見であり、Doctorowの発言を代弁したわけではない。彼女はC-294では不十分だとして、強い順に、回避禁止の撤廃、限定的な許可ではなく相互運用の義務化、相互運用に向けた行為への広範な免責を提案した。ほかの証人からは法案の範囲やリスクへの異論も出た。Intellectual Property Institute of Canada (IPIC)のColleen Stanleyは、文言の不確実性を指摘し、技術的保護手段の回避が私的情報をさらしたり、機器の安全な動作に影響したりする可能性を警告した。CentivanyとRosboroughは、正当な安全上の懸念は著作権規制ではなく、それを扱う法律で保護すべきだと応じた。Public Interest Advocacy CentreのJohn Lawfordは、アフターマーケット製品の相互運用を認める目的を支持しつつ、法案の対象が限定的である点も述べた。

公聴会は意見の対立を記録するが、それだけでどちらの主張が実証的に正しいかを決めるものではない。証人の専門性や参加は論点を明らかにできる一方、すべての利用者を代表する権限や、影響を受ける人々に代わってリスクを受け入れる権限を生み出すわけではない。概念を引用しても、発案者の権限が引用者に移ることはない。

C-294が実際に変えた点

その後の制度記録は、概念の紹介より具体的だ。委員会は2023年3月27日、修正を加えたC-294を報告することで合意し、3日後に第13報告書を提出した。House of Commons of Canadaは同年6月14日に法案を可決し、法案は2024年11月7日に裁可された。これらは委員会の正式な勧告、House of Commons of Canadaの採決、成立した条文を示す。日付の前後関係だけでは、Doctorowの文章が修正を生んだとも、委員会がCentivanyのより広い提案を採用したとも言えない。委員会の審議ページに手続きが記録され、第13報告書に委員会の修正文言が示されている。

成立した法律は、一定の条件下で、合法的に取得したコンピュータープログラムを保護する技術的保護手段を回避し、相互運用に必要な情報を得ること、またはプログラムやそれを組み込んだ機器を別のプログラム、機器、部品と相互運用させることを認める。共有された情報の利用目的を制限し、著作権侵害に当たる行為は例外の対象外とする。さらに一つの条項では、連邦法や州法に反する行為も除外される。裁可後の法文が適用範囲を定めている。

これは、特定のソフトウェアや機器のロックをめぐる法的な余地を広げるものだ。ソーシャルネットワークにサービス間メッセージの維持やバックエンドAPIの公開を義務付けず、第三者エージェントに利用者の代理操作を認める法律でもない。2021年報告の政策構想全体を実施するものでもない。記録から分かるのは、用語と論点に接点があったことまでであり、Doctorowからこの法律へ直接影響が及んだ経路ではない。

この政策過程におけるDoctorowの役割は限定して描く必要がある。彼はまず主張の著者であり、その後は別の証人が概念を説明する際に名を挙げた人物だ。委員会は報告書を通じて独自に決定し、下院は具体的な規則を成立させた。役割を分けて書くことは、彼の考えを弱めるためではない。公開記録が何を裏付け、どこから先が代表や採用の言い過ぎになるのかを示すためだ。

出典