要約

  • ACMAは販売員の説明内容だけでなく、販売員に何を報いるかも規制しようとしている。
  • 案はまだ意見募集の段階だ。報奨金の上限、顧客救済、規制当局への報告が、問題のある販売を把握できる連鎖になるかが問われる。

販売トークから報奨金の設計へ

Australian Communications and Media Authority(ACMA)は、顧客に合わない契約を販売した場合でも、その売上に貢献した販売員へ報奨金を払うべきかを問う。草案は販売インセンティブを全面禁止しない。何に報いるのかを制約し、企業が販売制度によって顧客を守れることを示せるようにする案だ。

Telecommunications (Consumer Protections) Industry Standard 2026の草案は、従業員の年間業績報奨金の合計を基本給の20%までとする。販売量が報奨金の対象資格に占める割合は30%を超えられない。残りは顧客サービスへの評価など、販売量以外の要素に基づく。販売目標は残るが、報酬の中心には置けない。

ACMAが見ているのは個々の販売員だけではなく、制度そのものだ。研修や営業マニュアルがあっても、追加契約や端末を売るほど報酬が増える設計なら、会社の経済的な信号と顧客の必要性が食い違う。草案は書面による報奨金方針、支給対象になる前の研修、方針の導入・運用・定期見直しに最終責任を負う上級役員を求める。

集団向けの報奨も対象に含める方針だ。個人だけでなく、チーム、店舗、事業部門などの仕組みに適用する。店舗の報奨金も、現金以外の価値を数量化できる場合、たとえばギフトカードであれば、受け取る各従業員の上限に算入する。個人コミッションを店舗目標に置き換えるだけでは回避できない設計を目指す。

業界コードから規制基準へ

今回の案はTelecommunications Consumer Protections Code 2019の見直しが行き詰まった後に出てきた。Australian Telecommunications Allianceは2025年5月に大幅改訂案を提出したが、ACMAは同年10月、地域社会に必要な保護の水準を満たさないとして登録を拒否した。10月23日には現行コードの欠陥を指摘する通知を出し、ATAは11月に二度目の改訂案を提出した。ACMAはコード見直しを終え、規制当局が定める基準を準備することにした。

ACMAの協議文書は、文言の曖昧さと執行可能性の両方を問題にしている。「may」や「appropriately」といった表現は義務の解釈を曖昧にし、注記やガイダンスはそれ自体では強制できない。義務が明確でなければ、遵守状況の判定も是正措置の要求も難しい。

1997年電気通信法第125条は、コードに欠陥があると判断し、その作成主体に修正の機会を与えた後、ACMAが業界標準を定める道筋を設けている。ACMAは2026年初めにこの権限を使うと決めたという。現在の文書はまだ草案であり、発効済みの規則ではない。意見募集は9月29日に始まり、11月10日午後5時(豪州東部時間)に締め切られる。

報酬、救済、報告をつなぐ

報奨金の制限は、商品適合性、事前説明、顧客救済の規則と組み合わされる。販売前に商品とモバイル通信範囲をより明確に説明し、顧客が申告したニーズ、状況、支払い能力に合わない商品を売らないよう求める。信用審査の強化には、端末を含む契約や小規模事業者向けの商品も含まれる。

規則に反する販売が分かった場合、未払い報酬を保留し、法的に認められる範囲で既払い額の回収に合理的な措置を取り、少なくとも3か月間は今後の報奨金の対象外とする案だ。顧客は返金、契約変更、無償解約などを求められる。実際のモバイル通信範囲が、事業者の説明から生じた合理的な期待に届かない場合の救済も提案されている。

ACMAには、事業者が把握した誤販売を四半期ごとに報告する。Telecommunications Industry Ombudsmanや顧客からの直接の苦情を通じて知られた事例も含む。報告期限は四半期末から30営業日以内。サービス数3万以上の事業者は要件の発効時から、小規模事業者は12か月後から始める案だ。ACMAは報告の公表も検討している。

重要なのは各措置の結び付きだ。顧客救済は問題が表面化した後に個別の売買を正す。報酬規則は販売前の動機を変える。定期報告は特定の販売経路やチームに問題が偏っているかを明らかにし得る。どれか一つで誤販売が減るとは証明できないが、組み合わせれば企業や規制当局が制御の不備を見つける地点が増える。

この問題は仮説にとどまらない。ACCCは2025年のOptus事件で、コミッション型の販売報酬が不適切な販売を促す明確な可能性を持っていたと述べた。Optusに1億豪ドルの制裁金を命じた事件は、確認された行為と司法判断に関するもので、ACMA案の効果を示すものではない。ただ、「責任を持って販売せよ」という一般論だけでは、報酬制度が何を収益化しているのか分からないことを示している。

まだ検証されていない折衷案

ACMAの文書には、インセンティブを全面禁止する案、ガードレール付きで認める案、事業者の裁量を広げる案が記されている。ACMAは今回の案を、顧客保護と電気通信事業に必要だと考える通常の報酬制度との暫定的な折衷案と説明する。20%と30%という数値は提案であり、最適だと実証された基準ではない。

草案は年内の複数支払いを合算し、店舗報奨も含める。一方、販売目標をなくすのではなく、報奨金の資格判定における比重を制限する。顧客サービス指標の定義、違反販売が支払いに影響しなかったことの証明方法、規模の異なる事業者の負担は、なお意見募集の対象だ。

電話とインターネットは、日々の取引、本人確認、緊急連絡を支える。ネットワークが稼働していても、販売関係は失敗し得る。顧客が地域の通信範囲に合わないサービスや、支払い能力を超える契約を買うことがある。すべての販売トラブルが設備障害になるわけではないが、実際に使い続けられる接続かどうかには販売経路も関わる。

ACMAの協議ページでは、最終決定はまだ示されていない。協議が終わり、最終文書が制定されるまでは、報奨金上限も報告義務も救済も提案段階だ。基準の成否は、事業者が「何を報いたか」「何が売られたか」「顧客に何をしたか」を結び付け、規制当局が方針文言ではなく証拠でその連鎖を検証できるかにかかる。

出典