要約

  • 販売終了後も使われているプランを含め、料金条件とサービスごとの請求を照合できるようにする案だ。
  • 顧客の記録を期間でつなぐ識別子は分析に役立つ一方、氏名を求めないだけでは連結リスクへの答えにならない。

月額料金の比較表には載らない数字が、請求書にはある。割引、追加サービス、利用量に応じた料金。広告の価格と請求額の違いを調べようとすれば、どのプランが、どのサービスの請求につながったかをたどる必要がある。

ACCCが2026年9月に示した小売通信の記録ルール案は、その対応関係を作ろうとするものだ。サービスごとの記録とプランの記録を分け、プラン識別子のplan IDでつなぐ。プラン側には速度や料金、契約条件、提供範囲を、サービス側には実際の請求、割引、追加項目、利用状況などを置く設計である。請求額は入金額とは違う。この記録だけで、顧客が支払ったと確認できるわけではない。

販売終了後も、プランの出番は続く

対象案は小売のブロードバンド、固定電話、モバイルの各サービスと、利用中の顧客がいるブロードバンド・モバイルのプラン。新規販売を終えた旧プランも、利用者が残っていれば含まれる。そうでなければ、請求の記録だけがあって、その条件を照合する相手が見つからなくなる。

ブロードバンドのサービス記録には、ブランド、接続日、アクセス事業者と技術も入る。以前の提供事業者は判明している場合に記載する。所在地を表すSA1は統計上の地域区分であり、個々の住所ではない。こうした情報を結べれば、地域やアクセス技術による請求の違いを調べやすくなる。

ただし、集めた記録がそのまま市場全体を表すとは限らない。相談文書は、技術をまたいで合計5万の稼働サービスを持つことを、新たな報告対象事業者に加える基準の一つとしている。一方、規則案は対象事業者を指定し、小さな市場の一部事業者も含める。5万未満なら全社免除、という線引きではない。

分析にも越えられない線がある。地域と請求額の関連が見えても、地域がその差を生んだとは断定できない。利用量やアクセス技術の記録は、実測の通信品質でもない。対応付けによって調査の入口は増えるが、原因の説明まで手に入るわけではない。

もう一つの番号は、前回の記録を探すため

顧客の記録を期間ごとに比較するため、案には継続して同じ値を使う加工済み顧客識別子もある。plan IDがサービスと商品条件をつなぐのに対し、こちらは一つの事業者から届く報告を時系列でつなぐ役割だ。全事業者に共通する番号で、顧客の移動を自動追跡する仕組みが示されているわけではない。

この識別子には、事業者が元々使っている顧客番号そのものを使えず、元の番号を割り出せたり、個人を特定できたりしてもいけない。開示先は報告事業者とACCCに限られる。秘密鍵によるハッシュ処理は候補として示されているが、実装と安全性が独立に検証済みの方式として提示されたものではない。

ACCCは、提案する記録が個人識別情報を要求しなくなったため、完全なプライバシー影響評価を実施しなかったと説明する。商業上機微な情報に対する保護も引き続き適用するという。その説明と、連結リスクがないという証明は別である。同じ顧客の前後の変化を見られるからこそ、誰が識別子に触れ、どこまで情報を結べるかが重要になる。

意見募集は10月7日に終了した。2026年10月19日に確認した公式ページではプロジェクトは進行中で、採択済みの規則としては示されていない。9月案の報告は年2回、対象月は3月と9月。毎回6か月分の連続した利用状況を集める意味ではない。最初の対象月を2027年9月、提出期限を同年11月11日とするのも、現段階では提案である。

出典