要約

  • 番号資源を取り消す権限は登録サービス契約(RSA)に由来し、標準版はモーリシャス法を準拠法とし、終了時には直ちに資源を取り消してサービスを停止する条項を含む。
  • 定款は「資源会員」の要件と理事会の構成・選出方法を定め、統治上の不服申立ての枠組みを与える。
  • モーリシャス裁判所の判断は、2022年も2024年も、権限・当事者適格・管理に関するものであり、RSA終了と資源回収の本案判断ではなかった。
  • 2025年9月に理事会が再構成され、管財人は解任申請を申し立てたが、その判断は公表されておらず、割当承認は依然として管財人の下にあるとAFRINICは説明している。
  • 影響を受ける資源保有者の現実的な経路は、RSAに基づく理事会への最終異議申立てと、モーリシャス裁判所での手続である。ICANNやNROは取消紛争を裁く場ではない。

1. 権限の三層構造

AFRINICがアフリカ地域のレジストリであるという地位は、2005年のIANA報告に記録された設立と地域レジストリとしての認識、および他の地域レジストリとの権限移譲の取り決めに由来する(IANA 2005 report)。しかし、この認識の連鎖が与えるのは「地域のレジストリ」という指定であり、個々の会員の資源を取り消す決定権ではない。その権限は契約に、手続の枠組みは定款と会社法に、そして最終的な強制は裁判所に、それぞれ置かれている。

2. 契約が与える取消の権限

AFRINICの登録サービス契約(RSA)は、資源会員に対する登録サービスを規律する契約であり、標準的な2018年版はモーリシャス共和国法を準拠法とすると明記されている(登録サービス契約、RSA 2018年版PDF)。同契約は、支払不能・破産・管財・事業停止といった事由に続く措置として、AFRINICが相手方に割り当てた番号資源を取り消し、契約を終了させることができると定める。契約が終了しまたは満了した場合、AFRINICは「直ちに番号資源を取り消し、その他のサービス提供を停止し、いかなる責任も負わない」とされる(登録サービス契約、RSA 2018年版PDF)。さらに、割当を行うレジストリが職務を適切に遂行しなかったと考える組織・会員には、AFRINIC理事会への異議申立ての権利が認められ、理事会の決定は最終とされている(登録サービス契約、RSA 2018年版PDF)。

この三点、すなわち取消の権限、モーリシャス法の準拠、理事会への最終申立てが、資源紛争の制度的な地形を決めている。取消の根拠が契約に置かれている以上、資源保有者にとっての第一の相手方は機関そのものであり、規制当局でも国際団体でもない。

3. 定款:誰が会員で、誰が理事会を選ぶか

定款は「資源会員」を、地域インターネットレジストリまたはエンドサイトとして、インターネット番号資源を使用する権利の必要性を累積的に正当化し、RSAに署名し、所定の設定料と会員費を支払った法人と定義する(AFRINIC Bylaws)。会員は年次総会での多数決により、定款13.5条に従って理事を選出する権利を持ち、理事会は9名、すなわち小地域ごとに選ばれる6名、地域非依存の2名、そして最高経営責任者(CEO)1名で構成される(AFRINIC Bylaws)。

ここから分かるのは、資源紛争の当事者であると同時に、機関の統治に参加する主体でもあるという二重の立場である。会員資格と選挙権は同じ文書で結びついており、資源の割当を受ける地位を失うことは、統治への参加の基盤にも影響する。

4. 紛争の起点と、裁判所が判断してきたこと

紛争は、AFRINICがCloud Innovation LtdのRSA違反を主張して資源会員資格の終了を求めたことに始まる。AFRINICは2021年7月8日の理事会決議で会員資格を終了させ、番号資源の回収まで90日の猶予期間を置いた(Cloud Innovation Ltd v AFRINIC 事件資料)。

裁判所が何を決めてきたかは、この紛争の核心そのものではない部分に集中している。2022年7月19日のモーリシャス最高裁の中間判決は、濫用・嫌がらせ訴訟を理由とするAFRINICの予備的異議を退け、Cloud Innovationの申立てを進行させた。同判決は、それ以前の民事控訴裁判所の判断(2022 SCJ 51)が控訴の残る理由の本案を扱わないと「明示的に述べた」ことを確認している。つまり2022年7月の時点で、終了と回収の本案について最終的な判断は存在しなかった(Cloud Innovation Ltd v AFRINIC 事件資料)。

2024年10月15日、民事控訴裁判所は、Eshun氏が控訴を提起しAFRINICを拘束する権限を欠き、Moollan氏とMardemootoo氏に当事者適格がないという被控訴人の予備的異議を認め、有効な控訴は存在しないと結論した。裁判所は2023年9月12日の商事部命令を回復し、公的管財人(Official Receiver)の任命と、AFRINICの憲章に基づく理事会選挙の実施指示を含む内容を維持しつつ、選挙手続の完了期限を2か月に置き換えた(AFRINIC Ltd v Cloud Innovation Ltd 2024 SCJ 473)。この判断は、RSAや資源取消の実体ではなく、法人としての権限と当事者適格に関するものだった(AFRINIC Ltd v Cloud Innovation Ltd 2024 SCJ 473)。

5. 管財人と、二重統制の現在

2025年2月12日付のモーリシャス最高裁破産部の命令により、Gowtamsingh Dabee氏がAFRINICの管財人に任命された。ICANNの公表文書によれば、同命令は理事会を再構成するための選挙の設計と実施を2025年4月25日までに迅速に行うことを命じ、裁判所はモーリシャス法の下での管財人の権限を認めた。ICANNは自らの役割を監視と助言の提供と位置づけ、裁判所が指定した当局として管財人を認識した(ICANN update on AFRINIC receiver appointment)。2025年の年次報告書は、2022年6月から2025年9月まで理事会もCEOも存在せず、AFRINICが歴代の裁判所任命管財人の下で運営チームによって管理されていたこと、理事会が2025年9月15日に職務を開始したこと、管財人の同意の下に設けられた3名の部門長による暫定管理委員会が実質的なCEOの任命まで在任したことを述べている(AFRINIC 2025年次報告書)。

2025年9月12日、AFRINICは2025年理事会選挙の結果を公表し、第1選挙区から第8選挙区まで8名の理事が選出された。その中には北部アフリカ選挙区(第1区)のAbdelaziz Hilali氏と、地域外選挙区(第8区)のAjao Adewole David氏が含まれる。この選挙は、新理事会を構成するという管財人の職務の下で実施された(理事会選挙結果2025)。

2025年10月8日、管財人は自身の「管財終了申請」をモーリシャス最高裁破産部に提出し、正式な解任の手続を開始した。理事会と管財人の共同声明は、裁判所の判断が待たれていること、理事会が「今や存在する」こと、そして正式な解任まではDabee氏が理事の任命後の手続を支援するために協力を続けることに同意したと記録している(理事会と管財人の共同声明)。2025年11月5日、AFRINICは、破産部に対しAFRINIC Ltdの管財の終了と管財人の解任・免責を求める申請がなされ、事件番号SC/COM/MOT/000757/2025として2025年11月26日に審理が予定され、介入を希望する会員は2025年10月29日付の裁判所命令により11月12日までに許可を求める必要があると公告した。これは申請と審理期日の記録であり、終了が完了したことの記録ではない(管財終了の公告)。

2026年の会員向け更新でAFRINICは、2025年9月の選挙後に理事会がモーリシャス会社法に沿って職務を再開したこと、管財人の解任申請は審理を経て判決が待たれていること、2025年9月に選出された理事の無効を求める法的手続が提出されたこと、Cloud Innovation Ltdが管財人の解任に異議を唱え別の管財人の任命を求めたこと、そして解任まで管財人がIPアドレスの割当とアサインメントの承認を続けていることを説明した(AFRINIC会員向け更新)。2026年5月15日付のAFRINICの communiqué は、2026年5月14日に最高裁が、AFRINICが虚偽かつ誤解を招くとしたLarus Ltdを通じた番号資源のリースに関する発表に関してCloud Innovation Ltdに対する暫定命令を発し、同じ日にICANNが手続に当事者として参加することを認める命令を出したと述べている。この communiqué は管財人解任申請の状態には触れていない(AFRINIC communiqué 2026-05-15)。

6. 誰が何を得られるか:救済の経路

以上の記録から、経路は四つに整理できる。第一に契約上の経路で、RSAに基づき理事会へ異議を申し立てる。理事会の決定は最終とされる(登録サービス契約、RSA 2018年版PDF)。第二に法人・倒産法制上の経路で、会社、管財、理事会構成に対する権限はモーリシャス裁判所にある(AFRINIC Ltd v Cloud Innovation Ltd 2024 SCJ 473、管財終了の公告、AFRINIC会員向け更新)。第三に統治上の経路で、年次総会における会員投票による。ただし定款上の会員要件と、選挙結果に対する係争中の申立てに服する(AFRINIC Bylaws、理事会選挙結果2025、AFRINIC会員向け更新)。第四に認識の経路で、IANAおよびNROの認識はAFRINICを地域のレジストリとして維持するものであり、個々の会員の取消紛争を裁く場ではない(IANA 2005 report)。

この整理が意味するのは、資源保有者にとっての実効的な救済が、契約上の最終異議申立てとモーリシャス裁判所の手続の組合せに集約されるという点である。地域レジストリ間の調整や国際的な監督は、指定と認識の層にとどまる。

7. 証拠の限界

本稿の範囲では、RSAの終了と番号資源の回収の本案を判断した公開判決は確認できていない。管財人の解任を認容または棄却した最終的な公開命令も確認できていない。2025年9月に選出された理事の権限は係争中の申立ての対象であり、確定した事実ではなく進行中の訴訟の状態にある。本稿が参照したRSAは2018年1月版の標準文言であり、個別に署名された契約は異なりうる。定款のページがすべての改正を統合しているとも限らない。Cloud Innovationから実際に回収・再割当された資源の範囲と現在の状態は、一次的なレジストリ記録からは確認していない。

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