Summary
- ACMAが2026年9月に公表した結果文書は、2.5 GHz帯の高度アンテナシステムについて、帯内総放射電力の上限を5 MHz当たり50.2 dBmとする案を維持した。携帯通信側が求めた53 dBmへの引き上げは、次の免許更新検討に回った。
- 電波天文側は、2690~2700 MHzに流れ込む不要発射の案が従来より約9 dB高い水準を許すと指摘した。ACMAは案を維持し、保護基準を満たす責任は送信所から受信機までの距離に左右されないと明記した。
- 固定送信所が保護対象の受信機から100キロ以内にある場合、通常は調整が必要とされる。送信機向け指針の改正はすでに効力を持つ。個別の周波数免許の条件は、今後、免許人とともに改める方針だ。
100キロという数字は扱いやすい。望遠鏡を中心に円を描き、その内側の基地局だけを調整の対象として並べれば、作業量がすぐ見える。しかしACMAの結果文書を読むと、その円は免責の境界ではない。固定送信所について調整が「通常」必要になる目安であり、電波天文の保護基準を守るのは距離にかかわらず周波数免許を持つ事業者だ。地図の外に出た送信所まで、責任が消えるわけではない。
今回の見直しは、2500~2570 MHzと2620~2690 MHzの対になった帯域を対象とする。携帯通信が使う一方、従来の技術条件は高度アンテナシステムの普及前に作られた。ACMAは5Gや新しい4G機器の運用を進めるため、帯内電力と不要発射に関する条件を改めることにした。上側の帯域のすぐ隣、2690~2700 MHzには電波天文の観測がある。携帯基地局にとっては帯域端の数値でも、望遠鏡には受信環境そのものだ。
53を求めた業界、50.2で止めた規制当局
携帯通信側は、帯内の総放射電力を5 MHz当たり53 dBmまで認めるよう求めた。欧州の技術条件に近づけ、高度アンテナの選択肢を増やす狙いだった。ACMAは提案済みの50.2 dBm/5 MHzを維持した。この値でも高度アンテナを支え、既存制度との連続性を保てると判断した。さらに高い上限は、2027年第1四半期に始める予定の、期限を迎える周波数免許の見直しで検討し得るという。近代化を認める判断と、求められた電力をすべて渡す判断は別だった。
隣接帯域への不要発射では、意見の衝突がもっとはっきり見える。電波天文側は、新しい高度アンテナ向けの案によって2690~2700 MHzに入る不要発射が現行の限度より約9 dB高くなり得ると指摘した。従来の干渉環境で設定された調整距離を、そのまま使う理由も問うた。携帯通信側は、既存の調整と保護制度により大きく依拠できると主張した。ACMAは提案した限度を維持した。約9 dBは結果文書に記された電波天文側の比較値であり、実際に観測を失ったという測定結果ではない。
規制当局の答えは、送信の自由度を広げる一方で受信機の保護義務を残すことだった。送信機の指針は、電波天文についてITU-R勧告RA.769-2の保護基準を参照する。100キロ以内では調整が一般に必要だと述べたうえで、ACMAは距離を問わず基準を満たす責任を免許人に負わせる。ネットワーク設計者は円で優先的な調整案件を拾える。それでも円の外の基地局が受信機を守っていると示すには、免許条件、計算、現地の記録が要る。
複数の基地局を足す計算は次の争点
電波天文側は、複数の高度アンテナから届く干渉をどう合算するかも問題にした。ACMAは今回、こうしたアンテナに固有の合算干渉モデルを導入しなかった。現行の電波天文との共存制度は合算モデルを要求しておらず、調整距離も変えないという。より明示的な電波天文のしきい値や方法は、次の免許見直しで改めて意見を聞く考えだ。守るべき結果は決めたが、密なネットワークでそれをどう証明するかという対立は残った。
ここで当事者の持つ証拠は非対称になる。事業者には送信所の登録、電力の計算、個別の免許と調整記録がある。観測所には実際の受信環境がある。ACMAは不要発射の限度を緩めても電波天文に同じ水準の保護が与えられると判断した。その判断を検証するには、新しいアンテナの稼働後にどのような調整が行われ、受信機で何が観測されたかを見る必要がある。9月の文書にはルールと説明がある。現地の運用記録は、これから生まれる。
細部の修正にも金額に似た重さがある。ACMAは2620~2690 MHzに入る不要発射の式から余分な0.05を取り除くことを認めた。隣接する周波数帯の一部EIRP限度はアンテナごとに適用する。表中のmax(Channel BW, 5)はmax(Channel BW, 6)へ直し、下側の受信機に関する規格参照は3GPP TS 38.104に改める。数字一つで許容値の計算が変わる。個々の免許の最終文言を読む理由はそこにある。
連邦法令登録簿では、送信機向け勧告指針の改正が9月に登録され、効力を持つ。ACMAの公開ページは、関係する免許条件を各免許人とともに更新していくと説明する。指針の改正と一つひとつの免許条件の変更には別の記録がある。2027年の見直しでは、53 dBmへの引き上げと電波天文の評価方法が再び争点になる。
最初に問うべきなのは、ある基地局が円の内側か外側かではない。その基地局に適用される免許の版、不要発射の計算、調整の記録、受信機側の実測だ。ACMAが高度アンテナに余地を与えた以上、それを使う事業者は望遠鏡の保護まで説明しなければならない。円を描く手は速い。証拠をそろえる仕事は別に残る。
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