要約

  • WRC-27議題1.12は、電話ではなく、断続的なIoT通信を想定した低データレートの非静止衛星システムについて、新たな周波数割当を検討する。
  • 1880–1920 MHzには英国のDECT、鉄道向けFRMCS、ESNゲートウェイが関わり、2010–2025 MHzは番組制作やイベントのワイヤレス映像にも使われる。

衛星向けの周波数案は、軌道上の通信だけを見ると新しい容量の話に見える。地上側の利用計画を重ねると、英国の1.9 GHz帯では既存の電話設備、鉄道の次期通信網、緊急サービスの展開が同じ範囲に並ぶ。WRC-27が問うのは、新しいサービスを始める許可だけではない。先に投資したネットワークが想定どおり動き続けられる条件を、国際ルールの検討にどう入れるかである。

ITUの第252号決議は、低データレートの非静止衛星移動通信システムについて、複数帯域での割当と規制措置を研究するよう求める。Ofcomは対象システムについて、通常の音声電話ではなく、周期的または断続的なデータ送信を行う衛星IoTなどに使われると説明している。候補には1880–1920 MHzと2010–2025 MHzが含まれる。ただし、これらは検討対象であり、英国の使用者に周波数を空けるよう求める決定ではない。

国際調整と国内免許も区別する必要がある。WRCは国際条約である無線通信規則を改め、国境をまたぐサービスや端末の世界的な規模を支える。一方、Ofcomは各国が自国領域内の周波数利用を決めると説明する。WRC-27は2027年10月18日から11月12日まで上海で開かれる。英国ではOfcomが2026年9月に暫定的な見解への意見募集を始め、締切は11月24日だ。現段階で決まっているのは、検討と意見募集であって、新たな英国免許ではない。

40 MHzをひとつの用途として扱えない

Ofcomによれば、1880–1920 MHzの下側は英国でDECTに使われている。2025年10月の周波数計画では、1900–1910 MHzを将来の鉄道移動通信システムFRMCSに、1910–1915 MHzをグレートブリテンの緊急サービス網ESNのゲートウェイに割り当てた。1915–1920 MHzは同計画上、未割当だった。40 MHzを一つの空き地として扱えば、利用者も免許条件も異なる各区間を見落とす。

ESNの前倒し利用をめぐる判断は、時間条件の重さを示す。Ofcomは2026年1月、ゲートウェイが2029年4月4日より前に1910–1915 MHzを使うことを認めた。ただし、それまでは他の利用に干渉してはならず、他の利用からの保護も求められない。期限後にこの条件はなくなる。緊急通信の移行を2029年まで待つと運用上の問題が起き得るという意見を受けた判断だった。

この条件を衛星へそのまま適用することはできない。車両に搭載されるESNゲートウェイは、局地的、臨時、断続的に動く。衛星ではビームの幾何、地上局や端末との調整、送信方向が異なる。Ofcomの文書は、鉄道沿線の携帯網にフィルターを設置する必要性を指摘する意見も記録し、ESNの利用形態と免許条件を前提に、そのケースの追加的な隣接帯域干渉は小さく短期的だと評価している。これは将来の衛星システムにも同じ結果を保証するものではない。

さらに、議題1.12は2010–2025 MHzも対象とする。Ofcomによると、英国では番組制作や特別イベントの無線映像リンク、コードレスカメラに使われている。長距離リンクや建物・樹木が間にある環境でも映像を送れる点が重要で、専門ユーザーは有害干渉のリスクが非常に低いことを必要とする。電話や衛星通信の容量だけを見ていると、この現場用途は政策判断から抜け落ちる。

比較例として、1645.5–1646.5 MHzには海上の遭難・安全通信に関する規則があり、Ofcomは暫定的に「変更なし」としている。他の帯域については新たな衛星割当が既存用途を適切に保護する必要があるとし、意見を求める。ここから特定用途の優先順位を推定することはできないが、保護要件を用途ごとに明文化する必要は読み取れる。

実務上の確認事項は、使用周波数、送信方向と電力、保護対象となる受信機、サイト間の調整、干渉が起きた場合の測定と責任分担である。「共有」という言葉だけでは、これらの条件は定まらない。衛星の増設計画と鉄道・緊急網の展開計画を同じ技術的な記録に置くことが、投資前に互換性を確かめる出発点となる。

出典