要約
- 10月1日以降、OVHcloudはパブリックIPv4を計算料金と分け、第3世代インスタンスのローカルディスクも別料金にした。計算の時間単価は変わらないが、構成によって総額は上がる。
- 公開料金はIPv4アドレス1個につき1時間0.0027ユーロ(税別)、730時間換算で月約1.97ユーロ。これはクラウドサービスの小売料金であり、IPv4ブロックの移転価格でもプロバイダーの利益率を示す数字でもない。
- 不要なアドレスやディスクを割り当てないことが、請求上も意味を持つ。一方、Savings Planの割引対象は計算に限られる。計算価格を固定しても、請求全体が固定されるとは限らない。
クラウドサーバーのパブリックアドレスは、長らくインスタンス価格の中に埋もれていた。OVHcloudは10月1日から、パブリックIPv4を独立した請求項目にした。ローカルストレージも第3世代のB3、C3、R3で別料金になる。計算の時間単価は据え置きだ。購入内容そのものより、これまで一括表示されていた構成要素の見え方が変わった。
OVHcloudの公開料金はIPv4が1時間0.0027ユーロ(VAT別)、730時間で月約1.97ユーロ。Local Low Latencyストレージは1GB・1時間当たり0.0001458ユーロで、月換算では1GB当たり約0.11ユーロとなる。これは現在のサービス料金だ。OVHcloudのアドレス調達コスト、IPv4ブロックの取引価格、顧客ワークロードが生み出す経済価値は示していない。
両者が答える問いは違う。プロバイダーの料金は、顧客が一定期間にパブリックIPサービスへ支払う額だ。移転可能なアドレスブロックの市場では、権利、登録記録、経路運用、相手方の確認、保有期間などが関わる。月約2ユーロの請求項目はアドレスの現物価値ではなく、ましてやその支配権を買う価格ではない。
請求額を左右するのはマシンの構成
影響はインスタンスの型と資源構成によって変わる。OVHcloudの例では、ローカルディスク100GBのB3-16が月75ユーロから87ユーロへ16.9%上がり、C3-8は67ユーロから79ユーロへ18.9%上がる。730時間、税別、契約割引なしという同社の試算であり、すべての顧客の請求を予測するものではない。IPv4を持たないマシンや少ないディスクを使う構成なら、資源の組み合わせは異なる。
ローカルディスクの分離はIPv4より適用範囲が狭い。パブリックIPv4は旧世代のB2、C2、R2やゲートウェイを含め、全世代で別料金になる。旧世代のローカルディスクは引き続き込みだ。分離対象はB3、C3、R3である。世代を比較する際は、パブリックアドレスの必要性と、実際に必要なローカルディスク容量の二点を分けて考える必要がある。
価格の見える化は、使っていない資源を見直すきっかけになる。OVHcloudは、10台のプライベートB3-16を1つのパブリックゲートウェイ経由で接続する構成を例示する。料金は月860.70ユーロで、10台すべてに個別のIPv4を付ける場合は869.70ユーロと試算している。1アドレス月約2ユーロは、台数が増えれば積み上がる。ただし、この比較はゲートウェイ方式がどのシステムにも適する証明ではない。ゲートウェイは共有依存点をつくり、経路、可用性、運用、遅延、障害分離に影響し得る。外部公開サービス、許可IPリスト、固定アドレスを前提とするソフトウェアでは、別の設計が必要かもしれない。
計算割引の外側に残る費用
重要な契約境界は、計算とその補完資源の間にある。OVHcloudによればSavings Planの割引は計算が対象だ。既存プランでは、契約期間中のインスタンス価格と割引は保証される一方、新たに分離されたIPv4とローカルディスクは保証対象外で、10月1日からその時点の料金で請求される。新しい12カ月・36カ月プランは計算をそれぞれ15%、30%割り引くが、アドレスとディスクには適用されない。
これは契約の矛盾ではなく、保証する対象が狭いということだ。買い手が固定するのは割引後の計算料金であり、計算を使える状態にする構成全体の費用ではない。アドレス数、ディスク容量、付帯料金が変われば、インスタンス単価が変わらなくても請求額は動く。vCPU、メモリー、計算割引だけで比較する調達担当者は、横に並んだ追加資源を見落としやすい。
開始後に見るべきなのは、計算料金だけではない。ワークロード当たりのパブリックIPv4数、プライベートネットワークで運用できるマシンの割合、ローカルディスク容量、ゲートウェイ費、プラン別の総請求額が重要になる。公開情報は顧客の対応、移行率、アドレス利用率、実現した節約を明らかにしていない。プロバイダーの例は選択肢であり、顧客が実際に選んだ結果ではない。
長期契約を結ぶ前に、アドレス数、ストレージ、予約計算、送信トラフィックを別々に見積もるべきだ。そのうえでプライベートネットワーク、ゲートウェイ、Flexの容量調整、IPv6対応アプリ経路が要件を満たすか検証する。IPv4を外しても常に無影響とは限らず、IPv6がすべての依存関係を自動で置き換えるわけでもない。追加の料金項目は設計見直しのきっかけにはなるが、技術的な検討を代行しない。
OVHcloudはクラウド資源の一つを見えるようにした。顧客が不要なアドレスを返すのか、ネットワークを変えるのか、費用を吸収するのか、ワークロードを移すのかはまだ分からない。明細化は判断材料を増やす可能性がある。しかしIPv4の公正価値、すべてのパブリックアドレスの代替可能性、クラウド総費用の予測可能性を証明するものではない。
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