要約

  • 10月28日付RTGWG草案の第35版は、航空機の移動先を私的なBGP重ね合わせネットワークで追う。周辺の境界ルーターは活動中の移動先を少数の中核へ通知し、中核の全経路表を受け取らない。継続的なBGP接続は帯域の限られた航空無線ではなく、安全な地上回線に置く。
  • 中核ルーターは航空ネットワークと下位INETの双方でeBGPを使い得る。草案は別々のローカルASと経路ポリシー、または分離したBGPインスタンスによって、二つの領域間での経路伝播を防ぐよう求める。ネットワークを二色で描くだけでは、転送規則はできない。

移動の知らせを空全体に配らない

航空機は飛行中に接続する地上局を変える。そのたびに通信相手が機体への道を見失えば、経路設計の意味がない。ATN/IPS作業部会草案は移動先の知らせを航空向けの重ね合わせネットワークへ収める。地上のBGPルーター同士が安全な回線で制御情報を交換し、無線回線へ継続的なBGP接続を載せない。航空無線は容量が限られ、途切れることもある。必要な通信を届ける回線に、経路表の維持まで任せる必要はない。

地上の境界ルーターには周辺と中核の役がある。周辺側は、自分の領域で現在使われている移動プレフィックスやアドレスを少数の中核側へ通知する。中核からBGP更新を受け取らず、そこへ向かうデフォルト経路を持つ。中核側だけが同じ区画の活動中の移動先について全経路表を交換する。一つの周辺領域内での移動はその領域で処理できる。別の周辺領域へ移れば、通知するルーターが変わる。情報を必要な場所に配る設計で、無線に近いすべての機器へ全体表を渡さない。

草案は新しいBGPメッセージ形式を求めず、BGP-4を限定した構成で使う。周辺と中核の接続には保護された直接回線または安全なトンネルを使い、中核同士の回線にも保護を施す。RFC 5880のBFDは故障を早く見つける選択肢だ。経路の切り替えを急ぐなら、切り替え後の経路がどの領域に属するかをなおさら正確に決めなければならない。

一台のルーターが二つのBGPを話す

この設計で最も注意が要るのは中核の境界ルーターだ。航空用ATN/IPSでeBGPを使いながら、その下で接続を提供するINETでもeBGPを使う場合がある。航空側の経路は下位INETの経路を使って解決される。つまり同じ装置が二つの経路世界を見ている。草案は両者を混ぜないため、別々のローカルASと経路ポリシー、または独立したBGPインスタンスを必要とする。

ここでいうINETは必ずしも世界の公開インターネットではない。事業者の下位ネットワークでもよい。境界の失敗は同じだ。移動先の経路が下位側へ輸出されれば、航空側に閉じ込めるはずだった変動が別の管理領域に入る。下位側の経路を広く取り込めば、航空側が何を根拠に転送を決めるかも変わる。「重ね合わせ」と名付けた時点では、ルーターはまだ何も拒否していない。隣接設定、AS、インポート・エクスポート規則とその試験結果が境界になる。

さらに多数の移動端末を扱う場合、草案はBGPに境界ルーターのアドレスだけを載せる別案を示す。端末がどの周辺ルーターに属するかはDNSを使うディレクトリで引き当てる。端末が別の領域へ移ったら、新しい周辺ルーターが古い記録を置き換える。RFC 1035がDNSの基礎を定め、草案は逆引きゾーンでの対応付けを説明する。BGP表の負担は軽くなるが、記録の更新が遅れれば、正しいルーターへの経路も古い担当先へ案内してしまう。

標準の木構造経路より短い近道も検討されている。草案の安全性の節は、守られた制御経路と、近道を通るデータを区別し、後者には端点間の上位層保護を求める。周辺ルーターには低速の航空回線へ送る量を抑える役目もある。地上の経路表で正しく見える選択が、最後の無線区間にとって適切とは限らない。

Datatrackerの公式状態では、第35版は作業部会の活動中の草案で、情報提供文書を目指している。エミュレーションや更新数の試算は設計を検討する材料であり、世界の航空運用から得た実測記録ではない。実際の導入先で二つのBGPを分離できたかを判断するには、その設定と経路輸出の記録が要る。現在の草案だけでも、二つの領域に属するルーターへ明示的な輸出規則が必要な理由は十分に見える。

公式原文