要約

  • .kidsの登録契約はDotKids Foundation Limitedに子ども向けの利用原則と違反名の停止・取消し権限を与える。RIPE 93の研究者は、通報ボタンが使えなかった時期と、復旧後もドメインごとに提出を求めるフォームを報告した。
  • 研究概要は名前の文字列から176件の違反疑いを挙げ、ブロックリストで印が付いた名前がゾーンに残る期間の中央値を34日とした。ICANNの月次表は登録と削除を数えるが、通報から判断までの時計を持たない。

看板の裏の受付窓口

.kids は子どものための空間を名前そのものに掲げる。ならば、問題のある名前を見つけた人が、実際に誰へ、どんな形で知らせられるかも看板の一部だ。ICANNが公開する2021年の登録契約の仕様12は、登録者に子どもに適した原則を求める。対象はサイトの内容だけでなくドメイン名にも及び、違反は登録の停止や取消しの理由となる。DotKids Foundation Limitedには判断を実行する権限がある。

DotKidsの不正利用対策方針は通報用のメールアドレスを窓口とし、拒否、取消し、移転、ロック、保留などの手段を挙げる。フィッシングやマルウェアも対象に入る。ただし、通報を受けてから何日で判断するかという公表済みの期限は見当たらない。郵便受けと停止レバーはある。両者をつなぐ処理記録が読めない。

RIPE 93の講演概要では、トウェンテ大学のMatteo Liberatoらが2022年5月から2026年3月までの約1,400件の日次スナップショットを調べた。名前の文字列だけで契約違反が疑われるものを176件見つけたという。外部のブロックリストに載った名前が.kidsゾーンに残った期間の中央値は34日。これは外部の印が付いてからゾーン上で見え続けた長さであり、DotKidsに通報が届いてからの応答時間ではない。通報の受領日と個別判断が公開されていない以上、二つの時計を混ぜると肝心の空白が消えてしまう。

RIPEのセキュリティ作業部会の記録には、もっと身近な障害が登場する。Liberatoは、ウェブサイトの通報ボタンが使えなかったと話した。講演のおよそ2週間前にチームが知らせると、DotKidsはすぐ返答し、フォームへの道が復旧したという。しかしフォームは1件ごとにドメイン名、画面写真、説明を求めた。研究チームには約300件の候補があり、一覧または一括提出の経路を求めた。DotKidsは対応中だと研究者は述べている。これは現場での本人の報告で、登録局の案件台帳や最終処分を示すものではない。

一括で見つけた信号を一件ずつ手で包み直す。事務作業としてはありふれているが、ここでは安全方針の処理能力を決める。画面写真や説明は誤報の排除に役立つ。一方で、根拠付きの一覧を受け取り、受付番号を付け、重複を除き、判断を返す仕組みも必要だ。ボタンを直すことは入口の修理。入口の先で列をさばけるかが運用の試験になる。

削除数に理由欄はない

ICANNの2026年3月の.kids取引原票には、合計6,666ドメインと猶予期間外の削除100件が載る。この表は規模と取引を示す。削除が期限切れ、所有者の意思、登録事業者の手続き、あるいは不正通報への対応なのかは示さない。受付日、証拠の確認日、判断日、DNS上の措置日もない。100件という数字に「子どもを守った成果」というラベルを貼るには、列が足りない。

外部の警告や名前の文字列だけで有罪と決めるべきではない。だからこそ、各案件について信号、受領、確認、判断、措置、最終状態をつなぐ記録が要る。公表するのは月次の件数と所要時間の集計で足りる。子どもや通報者の情報を出す必要はない。正しい却下と放置を見分けられることが大切だ。

盧恒の第73号ノートは、参加から権限への移り方を問う。この件では研究者が手掛かりを提供し、ICANNが契約を保有し、DotKidsが決める。判断に至る継ぎ目が公開資料で見えない。安全という商標は案件番号を発行しない。停止条項も受付表を自動で埋めない。