要約
- JPRSとICANNの.jprs登録管理契約は2014年9月18日付で、「Base, Non-Sponsored」型として記録されている。基本契約は発効日から10年の期間と、一定の例外を除く10年ごとの更新を定める (ICANN、契約本文)。
- 契約は仕様9(登録管理機関行動規範)の適用を原則義務づけつつ、.jprsについては免除通知が記録されている。JPRS自身の登録ポリシーは、.jprsの登録者をJPRSとその関連会社に限定し、目的をインターネット関連の研究開発と説明する (契約本文、登録ポリシー)。
- 契約上の金銭条件は、四半期ごとの固定費6,250米ドルと、5万件を超えた場合にのみ適用される1件あたり0.25米ドルの取引手数料である (契約本文)。
- 2026年、JPRSはICANNのRSP技術評価の全テストスイートに通過したと発表し、1月30日に公表された評価済みRSPのうち日本拠点として唯一の存在だとしている (JPRS発表)。5月11日にはブランドTLD申請に必要なTMCHへの商標登録を扱うTMCHエージェントになったと発表した (JPRS発表)。
二つのトラックを分けるもの
.jpの登録管理は、IANAによる委任と、日本におけるインターネットコミュニティの意思決定の枠組みの中で運用されてきた。そこでの権限は委任に由来し、監督はJPNICの枠組みと政府の関与を通じて及ぶ。これに対し.jprsの登録管理は、ICANNとJPRSとの二者間の契約によって成立する。権限の源泉は委任ではなく契約であり、異議の申立ては契約上の救済メカニズムに回収される (ICANN、契約本文)。
この違いは抽象的な分類ではない。同じ法人の同じエンジニアリング組織が、一方では公的な監督の対象となる資源を運用し、他方ではICANNを相手方とする商事契約の下で資源を運用する。事故や苦情が発生したとき、誰に説明し、誰が是正を命じられるかという経路がトラックごとに分かれる。
.jprs契約の中身
ICANNの契約詳細ページは、.jprsの運営者を「Japan Registry Services Co., Ltd.」、契約日を2014年9月18日、契約類型を「Base, Non-Sponsored」と記録する。同ページには、予約名の解放に関する承認、グローバル修正、免除通知、更新通知、TLD起動情報といった区分が並ぶ。ただし今回取得した抜粋では、更新通知やグローバル修正の日付と内容までは確認できない (ICANN)。
契約本文から読み取れる骨格は次のとおりである。第1.1条は対象TLDを.jprsと定め、発効日をもって登録管理機関を指定する。第4.1条は発効日から10年の期間を定め、第4.2条は特定の違反・終了事由を除き、10年ごとの更新を想定する。第2.6条は仕様5に基づく予約名を、第2.9条はICANN認定レジストラと統一登録管理・登録業者間契約を、第2.14条は登録管理機関行動規範(仕様9)の遵守を求める。第7.6条は、ICANNが採択し適用対象の全登録管理契約に及ぼす「特別修正」の仕組みを定める (契約本文)。
金銭条件も本文に明記されている。四半期ごとの固定費6,250米ドル、および取引件数が5万件を超えた場合に限り適用される1件あたり0.25米ドルの取引手数料である (契約本文)。JPRSの法人プロフィールによれば、資本金は3億4,414万円、従業員は2025年4月1日時点で130名、ISO 27001とWebTrustの認証を保有し、.jpの登録管理に加えて他のドメイン名(gTLD等)の代理業務を行っている (法人プロフィール)。
免除が作る非対称
契約は行動規範の遵守を原則とするが、.jprsについては免除が記録されている。JPRS自身の登録ポリシーはこの点を明示し、仕様9免除の性質として、.jprsに登録されるすべてのドメイン名はJPRSとその関連会社のみに帰属すると説明する。同ポリシーの最終更新は2025年12月12日である (登録ポリシー)。
この免除は、権利保護メカニズムの実務的な意味を変える。ポリシーは商標クレーム、UDRP、URSといった仕組みを列挙しているが、そもそも登録者がJPRSと関連会社に限られるなら、外部の商標権者がこれらの手続を用いて自らの権利を主張できる場面は構造的に狭い (登録ポリシー)。外部当事者にとっての現実的な是正経路は、登録者向けの紛争処理ではなく、ICANN側の契約上の執行に寄ることになる。
同ポリシーはまた、ICANNが2016年12月13日に承認した文字・文字の2文字ASCIIラベルの解放を受けて、当該ラベルが利用可能になったことにも触れている (登録ポリシー)。国際化ドメイン名については、IANAが公開する.jprsのIDNテーブル(言語タグja-JP、バージョン1.0)が2014年11月28日を発効日として記録され、登録管理機関としてJPRSが記載されている (IANA)。
登録データと技術的サービス
JPRSは、自身が扱うドメイン名の登録データ照会のためのRDAPサービスを文書化している。照会URLのパス形式は /rdap/domain/
2026年という転換点
2026年、JPRSは自社の位置づけを登録管理機関から登録管理サービスの提供者へと広げた。同社の発表によれば、2012年以来となる新gTLDプログラムの申請受付が2026年4月に始まるのに先立ち、同社はICANNの技術評価におけるRSPとして全テストスイートに通過した。評価済みRSPは2026年1月30日に公表され、JPRSは日本拠点として唯一の掲載だとしている。ICANNのRSP評価プログラムは登録サービス、DNS、DNSSEC、RDAPを対象とする (JPRS発表)。
続いて同年5月11日、JPRSはブランドTLD申請に必要なTrademark Clearinghouseへの商標登録を扱うTMCHエージェントになったと発表した。同発表は、新gTLDプログラムの申請受付が2026年4月30日に始まり、2012年以来14年ぶりであること、ブランドTLD申請では保有商標のTMCH登録が必須条件であることを述べている (JPRS発表)。
これらの発表はいずれもJPRS自身によるものであり、ICANNが公表した評価済みRSP一覧そのものを今回直接確認したわけではない。契約トラックにおける同社の新たな役割は、自己申告の範囲で捉えるべきである。
修正と更新の力学
.jprs契約は2014年の原本テキストであり、その後の全体的な修正を自らには反映していない (契約本文)。2024年のグローバル修正はICANN理事会が2024年1月21日に承認し、ICANNは2024年2月5日に、2024年4月5日付で発効すると通知した。これはBase gTLD登録管理契約の枠組みに適用される (ICANN)。.jprs契約がBase, Non-Sponsored型として記録されている以上、この枠組みの範囲内にあると考えられるが、今回の抜粋から.jprs契約への個別の組み込みを確認したわけではない (ICANN、ICANN)。
更新についても一般則しか確認できていない。2012年ラウンドの新gTLDは初期10年の期間を持つ基本登録管理契約に服し、第4.2条の例外がない限り10年ごとの更新が想定される。ICANNは初期期間の終了のおおむね90日から120日前に更新書簡を発行し、運営者は更新を促す行動を取る必要がない。更新を望まない場合には、基本契約第4.4条に基づき180日前の通知による終了が必要とされる (ICANN)。.jprs契約の詳細ページに更新通知の区分が存在することは確認できるが、その日付と内容は抜粋からは見えない (ICANN)。ICANNの登録管理契約の総覧ページも、この枠組みの索引として機能している (ICANN)。
何が確認でき、何が確認できないか
確認できるのは、.jprs契約が2014年9月18日付で存在し、10年の期間、更新の仕組み、明示的な金銭条件、仕様9免除、特別修正および全体的修正の経路を持つことである (ICANN、契約本文)。.jprsの登録がJPRSと関連会社に限定されていることも、登録ポリシー上明記されている (登録ポリシー)。
確認できないのは、更新通知の具体的な日付と内容、グローバル修正の.jprs契約への個別の組み込み、そして評価済みRSP一覧そのものである (ICANN、契約本文、JPRS発表)。これらは推測で埋めるべき空白ではなく、公的記録の側で確認されるべき項目である。この対象のディレクトリ項目はこちらにまとめている。
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