要約

  • JPNICのIzumi Okutaniは2004年、APNICがNIRに適用するIPv6のアドレス当たり料金で、連続する割当を拡大すると以前の割当分まで新しいプレフィックスに含めて計算されると指摘した。
  • 提案書の試算では、/32から/31、/30、/29へ段階的に広げると計算単位は計78,809。一度に/29を求めれば37,641だった。旧割当と新割当の差だけに課金すれば、両経路の合計は37,641で一致する。
  • APNIC 18のNIR SIGはこの限定的な修正を支持し、2004年11月にECが承認、翌年3月に料金表の改訂案が公表された。同じ会合で議論された、NIR料金全体に上限を設ける別案には合意がなかった。

先に払った分が消えない帳簿

IPv6の/32を受けたネットワークが成長し、/31への拡大を申請する。増えた分には費用がかかるだろう。問題は、/31が元の/32を内包していることだ。Izumi Okutaniが2004年の提案書で引用したAPNIC料金表は、以前の割当が含まれる場合でも新しいプレフィックス全体の大きさで料金を算出すると定めていた。昨日の/32が、今日の/31の中で新顔として戻ってくる。

この料金は、APNICから国別インターネットレジストリ(NIR)への割当に関するものだ。Okutaniが勤めるJPNICは、日本の会員との間に立つ。提案書は、NIRが重複分を負担するか、同じ計算方法を会員へ適用するかという選択を示す。JPNICは後者を採っていたが、合理的な説明ができないとOkutaniは書いた。料金表を作った場所と、会員に請求書を説明する窓口は異なる。その距離が、式の欠陥を見えにくくする。

旧式にはHD-ratio 0.80に応じた/48相当数という計算尺度があった。Okutaniの着眼点は尺度そのものではなく、拡大時の扱いだった。新しい全体から既存の分を差し引けば、今回増えたアドレスに対応する数が出る。請求書に必要なのは、ネットワークの将来を占う技術ではなく引き算だった。

同じ/29、違う道順

提案書の例をたどる。最初に/32を受け、続いて/31、/30、最後に/29まで広げると、各段階の計算単位は7,132、12,417、21,619、37,641となる。旧式の合計は78,809。最初から/29を受けた場合の単位は37,641。最終的なアドレス空間は同じなのに、段階を踏んだ側には41,168単位の差がついた。

これは提案書内で二つの申請経路を比較する計算例だ。制度が出す信号ははっきりしている。まず小さく始めて実需要に合わせて増やすより、将来を見込んで大きな割当を先に求めるほうが、この例では得になる。アドレス利用を丁寧に見ようとする組織にとって、困った方向の値札だ。

Okutaniの新方式では、/31への拡大時は12,417から既に計上した7,132を引く。次は21,619から12,417、最後は37,641から21,619を引く。各差分と最初の7,132を足せば37,641。一度に/29を求めたときと同じ数字になる。料金単価や割当の最終規模を動かさず、そこへ至る経路が生む余計な請求だけを取り除いた。

提案書には単価を置いた別の例もある。既存の/32を含む/30への拡大なら、21,619と7,132の差に、当時の例で使った1単位0.03米ドルを掛けて434.61米ドル。これは2004年の「Very Large」区分を使った式の説明だ。大切なのは434.61という値札より、計算対象を今回増えた部分へ戻した点にある。

一つの修正は通り、料金全体は残った

2004年9月2日、フィジーで開かれたAPNIC 18のNIR SIGでOkutaniが説明した。議事録は、小さく始めるISPが財政的に不利になることを記録する。APNIC事務局は過去の拡大申請を基に、修正による運営費への影響は大きくないと分析した。参加者から支持が出て、反対はなく、議長が合意を宣言した。ただし、その先には会後の意見募集とECの承認が待っていた。

最終意見募集は、NIR向けの同一IPv6アドレス範囲に複数回料金を課さないという合意を記し、締切を11月12日とした。提案履歴には11月19日のEC承認と2005年3月14日の実施が載る。APNICの実施公告は、料金表案の3.4.3節が修正されたことを知らせ、文面の最終確認を求めた。議場の賛同が、実際に使う表の一行へ届くまでの経路が見える。

同じNIR SIGでは、JPNICのToshiyuki Hosakaによる、NIR料金にもっと広い上限を設ける案も論じられた。こちらはAPNICの収入や会員間の負担配分を動かす。議事録には支持と疑問が入り交じり、上限案そのものには合意が成立せず、検討のための作業部会が提案された。Okutaniのprop-022は、料金水準の全面改定ではなく、同じ空間を二度数える異常に狙いを定めた。その焦点の細さが、採用できる文言の明確さにつながった。

提案者としてのOkutaniは、数字を見つけただけではない。NIRの立場から、上流の式が下流の説明責任へ変わる場所を示した。現行条文を引用し、二つの経路を比べ、差分で計算する一文を置いた。抽象的な「公平」を唱えるより、同じ/29への二つの道に同じ合計を与える。その検査方法まで備えた修正だった。